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『早咲きのくろゆり』紹介/これが新しい時代の「ノベルゲームのスタンダード」だ!

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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
与えられる選択肢なんてない! 自分で推理して物語に介入していくんだ!
クラウドファンディングによって実現した、フルボイス&E-moteで動くキャラ達
現代よりも「恋愛は男女ですべし」という風潮が強くなった近未来で描かれる百合


『早咲きのくろゆり』
・開発:1000-REKA、発売:1000-REKA、mirai works
 公式サイト
 Steam版:2023年10月24日配信開始(体験版あり)
・ノベルゲーム+アドベンチャーゲーム
・シナリオの「シーン」ごとにオートセーブ(再開はシーンの最初から)、セーブスロット1つ


 私がエンディング到達にかかった時間は約18時間でした
 DLCを除いた全部のシナリオを読んで約20時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:◎(かわいいかわいい花ちゃんがありとあらゆる地獄を味わう話と言える)
・恥をかく&嘲笑シーン:△(噛んだのをバカにされるくらいの話はある)
・寝取られ:○(バッドエンドにはそういう展開もある)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×(最後まで読めばそうではないと分かってもらえるはず)
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:◎(これが主題のゲームですからね)
・BL要素:◎(これが主題のゲームではないですが、ある)
・ラッキースケベ:×(今後配信予定のDLCで水着イベントはあるらしい)
・セックスシーン:×

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◇ 与えられる選択肢なんてない! 自分で推理して物語に介入していくんだ!
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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 このゲームは2023年の10月に発売されたばかりのノベルゲームです。
 現在はSteamでのみ販売されていて、体験版もあります。私は「購入を決めているゲームの体験版」はわざわざ遊ばないんですが、どうやら体験版は「本編の序盤が遊べる」のではなく「この独自システムを体験するためのオリジナルストーリー」だったみたいです。慌てて体験版をダウンロードしたけど、本編を持っていると本編の方が起動されちゃうみたいで体験版が遊べませんでした……ぐぬぬ。


 このゲームを一言で言うと、イラストレーター:フカヒレさんが原案・原画を手がける「百合ゲー」ですが……私が発売前からこのゲームを楽しみにしていたのは、「ノベルゲーム」として革新的なことをやろうとしていたからです。


 このゲーム、ノベルゲームなのに「選択肢」が存在しません!

 かと言って、同人版『ひぐらしのなく頃に』のように一本道のノベルゲームというワケでもありません。そのまま遊んでいると物語は悲劇的な結末を迎えてしまうため、プレイヤーが介入して「物語を分岐させる」必要があるのです。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 そこで使われるのが、「割り込み選択肢」なる機能です!
 これは、この機能が解放されてからはプレイヤーの好きなタイミングで発動できて、プレイヤーが好きなワードを入れることで「物語を別の方向に分岐させられる」機能です。

 試しに↑の、寝坊して遅刻しそうになっているシーンを「割り込み選択肢」を使わずにストーリーを進めると……

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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 急いで待ち合わせ場所に向かった花ちゃんは、5分遅れで到着します。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 では、「割り込み選択肢」を使って「ゆっくり行く」と入力し、花ちゃんの行動を変えると……


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 大幅に遅刻して到着するようになります。
 プレイヤーの介入によって物語が変わったんですね。


 流石に、やたらめったらどこでも分岐するワケではなくて、基本的に「花ちゃんがどうしようか迷っている時」に「正しいワード」を入力した時しか有効でないのですが……こうやって「物語が分岐する場所」を自分で考えて、更に「分岐させるワード」を考えながら読むのが、ノベルゲームとして新感覚だったんですね。


 「え……コマンド入力式って革新的ですか?」と思った人は鋭い。
 そうなんです、ノベルゲーム……というか、テキストアドベンチャーゲームって黎明期である1970年代~1980年代中盤くらいまでは「コマンド入力式」という、コマンドを自分で入力して正解を探すゲームだったんですね。つまり、アドベンチャーゲームは元々このゲームのような「自分で打ち込むワードを考えるジャンル」だったのです。

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<画像はファミリーコンピュータ版『ミシシッピー殺人事件』より引用>

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<画像はWiiバーチャルコンソール版『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者(前後編)』より引用>

 1980年代に入ると、そこからアメリカでは「キャラクター移動方式」のアドベンチャーゲームが生まれ、日本では「コマンド選択式」のアドベンチャーゲームが生まれて主流になっていきます。日本の場合、この「コマンド選択式」アドベンチャーゲームが“ストーリーを語る装置”として重宝され、1980年代後半は多くのメーカーが「コマンド選択式」アドベンチャーゲームを手がけていきました。今でも、『逆転裁判』シリーズなどに引き継がれていて生きているジャンルですね。


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<画像はスーパーファミコン版『弟切草』より引用>

 1990年代になると更にストーリー性が重視されて、「主人公に指示を出す」のではなく「小説の文章=ストーリー展開を選択肢の中から選ぶ」ノベルゲームが主流になっていきます。
 選んだ選択肢によってストーリーが分岐して「○○ルート」のようにフローチャートが枝分かれるこのシステムは、「恋愛ゲーム」と相性が良かったために次第に融合していき、現在「恋愛アドベンチャーゲーム」と呼ばれるジャンルはこの「ノベルゲーム」のフォーマットに則ったものが多いと思われます。

 そのため、現代のゲーム市場で展開されている「百合ゲー」も、ほとんどがノベルゲームじゃないかと思います。


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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

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<画像はNintendo Switch用ソフト『神田アリスも推理スル。』より引用>


 この『早咲きのくろゆり』もノベルゲームの型に準拠していて、分岐の方法が「選択肢を選ぶ」のではなく「自分で入力するようになった」という点が新しいんですね。

 その「コマンド入力式」もアドベンチャーゲームの元祖からある古い形式のように思われるかも知れませんが、「ストーリーが分岐によって変化するノベルゲーム」に「自分で入力するワードとタイミングを探す攻略要素」を合わせたのはやはり新感覚で……物語を自分の介入によって本来進むはずだったストーリーとは別の方向に変化させていくのは、強いて言えば『街』や『428』に近いプレイ感覚でした。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 また、現代のノベルゲームなので、「コマンド入力式」が主流だった1970年代~1980年代中盤にはなかった便利機能がたくさんあって「正解のワード探し」をサポートしてくれます。その一つが「メモライズ」機能です。

 「気になった文章」をメモしておいて、後から見返せる機能で―――
 「割り込み選択肢」に使う固有名詞や、物語を攻略するヒント、後述するメモリーコールに使う言葉など、様々なことに使うので片っ端から記録していきましょう。

 ちなみに、難易度を一番下の「Beginner」にすると(メモリーコールに使う言葉以外は)重要な文章を自動的にメモライズしてくれるようになります。途中で進み方が分からなくて難易度を「Beginner」に下げても、それまでのストーリーで出てきた「重要な文章」は全部遡られてメモライズされます!
 そこまでやったら普通の「選択肢式のノベルゲーム」と変わらんのでは? と最初は思ったのですが、このゲームの文法(どういうとこなら割り込み選択肢が使えるのか、どういうワードなら表記揺れにならないのか)が分からない内は、難易度「Beginner」でも十分難しいです。

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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 この「気になるワードを片っ端から記録して、後から見返せるようにする」メモライズのシステムが、ストーリーの中で登場人物達が行っている「卒業を控えた高校生活で、やり残したことをみんなで単語帳に書いて1つずつ叶えていく」展開と絶妙にシンクロしているの良いですよね。システムとストーリーがマッチしたゲームが私は大好きです。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 難易度「Casual」「Beginner」だと、分岐可能な場所で花ちゃんの心音が鳴って教えてくれる機能があります。「ここで割り込み選択肢が使えますよー」と教えてくれるんですね。

 難易度「Beginner」だとクリアに必要な分岐箇所は全部教えてくれますが、逆に「バッドエンドへのルート分岐」などは教えてくれません。
 難易度「Casual」は発売当初は「全部教えてくれるワケではなかった」のですがアップデートで心音の鳴る箇所が増えたので、結果的に必要な分岐箇所は全部教えてくれるようになったのかな? この難易度だと「バッドエンドへのルート分岐」でも心音が鳴るので、シナリオチャートを完成させたい人には「Beginner」よりもこっちの方がありがたいかも。

 難易度「Expert」だと心音は鳴りません。どこで割り込み選択肢が使えるのか分からないなんて、そんなの無理ゲーやろと思うし、最初の難易度選択の際に「初めから使いこなせた方には称賛が贈られます」と書かれているほどなのですが……割り込み選択肢は「他の人が喋っているところに花ちゃんが割り込む」のではなく、「判断を迷っている花ちゃんの思考にプレイヤーが割り込む」イメージを持てればタイミングが分かるようになるかなと思います。

 私は今回「Casual」スタートで、どうにもならなくなったら「Beginner」に下げていたのですが……終盤はこのゲームの文法が分かるようになってきたので、同じシステムのノベルゲームを出してくれるなら次は「Expert」で遊びたいなと思っているほどです。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 現代のノベルゲームなので、「バックログ」や「シナリオチャート」も当然のように完備されています。「今重要なことを読み飛ばしちゃった」って時に読み返したり、「ここのヒントは序盤にあった気がする……」って時に一度序盤に戻って読んで来たりできます。

 結構面白いのは、「バックログ」からでも前のセンテンスに戻ることが可能な点です。
 普通のノベルゲームだったらあんまり必要じゃない機能だと思うのですが、このゲームの場合は「話の流れを見るに、割り込み選択肢を使えるのはさっきだったか!」ってことがしょっちゅうなので、「バックログ」からのワープはかなりの頻度で使います。開発側が遊ぶ人の気持ちに立って、必要な機能をちゃんと考えて付けていることが分かります。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 一般的なノベルゲームだと「次の選択肢まで高速スキップ」のようなことが出来ますが、選択肢の場所が決まっていないこのゲームだと、「割り込み選択肢が使えそうな場所」に栞をはさんでおいて、そこまでワープといったことが可能です。これも地味によく使う機能です。

 新しいシステムのゲームを作るんだ、だけに留まらず。
 新しいシステムで遊ばせるためには、必要な機能がコレとコレとコレだからちゃんと実装しようって分かっているゲームなんですね。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 ということで、新しいシステムの革新的なゲームなので応援したいのですが……
 新しいシステムゆえに、どうしても不満点もあります。

 「割り込み選択肢」が失敗判定になった際、プレイヤーには「間違ったワードを入れている」のか、「ワードはあっているけどこのタイミングではない」のか、「タイミングはあっているけどワードの表記揺れで一致していない」のかが分からないんですね。

 例えば、「タイミングはあっているけどワードが間違っている」場合は「この言葉ではない気がする」みたいに表示されて、「ワードはあっているけどタイミングが間違っている」場合は「今言うことじゃないよね」と表示されるとかだったら分かりやすいのですが、現状はそうではないので……初めてこのゲームを遊ぶ人は、「自分の何が間違っているのか」が分からないまま詰まってしまいがちだと思うんですね。

 また、「表記揺れ」の問題は、日本で「コマンド入力式アドベンチャーゲーム」が早々に「コマンド選択式アドベンチャーゲーム」に取って代わられた要因の一つなのですが……日本語って、同じ意味の言葉がたくさんあるので、プレイヤーには答えが分かっているのに「正解判定にならず」→ これは間違ってたのかーって袋小路にハマりがちなんですね。

 このゲームの場合「部分一致」ではなく「完全一致」じゃないとダメみたいで……
 ネタバレにならないように今テキトーな言葉をでっちあげますが、「お姉ちゃんのお味噌汁」が正解だったら、「お姉ちゃんの味噌汁」と入力したらアウト―――くらいのシビアさなんですよ。意味は一緒じゃん!みたいなのは通りません。

 基本は「作中に出てきた言葉をそのまま打つ」「文章ではなく単語にして、余計なワードを足さない」がコツなんですが、それでも何箇所かそれだけではどうにもならない場所があって……4章の終盤のあのシーンは表記揺れに特に厳しくて、同じ意味の単語を連続で10コくらい打ってやっと通ったほどでした。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 とは言え、一般的なノベルゲームが「選択肢が出るまでAボタンを押すゲーム」になっちゃっていたところ、選択肢が出ていない箇所でも注意深く読んで、怪しいところはメモライズに登録していくゲームに変えたのは大きいと思っています。


 ストーリーを分岐させる「割り込み選択肢」とは別に、夜寝る前の花ちゃんの記憶を呼び覚まして短編の話が読めるようになる「メモリーコール」という機能もあります。本編とは関係ない話ですし、コンプリートしないと実績が解除されないとかでもないのですが、登場人物達の別の日常が読めて楽しい機能です。

 この「メモリーコール用のワード」も作中に出てくるものなので、これを探すためにも「選択肢のない箇所」もしっかり読まなくちゃなりません。「メモライズ機能があるからにはこういう遊びも取り入れよう」ってのが分かっているんですよね。


 このゲームの発売は、ノベルゲームが「読むノベルゲーム」から、「遊べるノベルゲーム」に変わった瞬間だったと思います。
 これが新しい時代のノベルゲームのスタンダードになって欲しいなぁと私は思っています。このフォーマット、「百合ゲー」に留まらず「推理もの」とか「ホラーもの」とかでやっても絶対面白いですもん。

 「難しくてクリアできないよ」って人は、攻略情報をまとめた記事を書いたのでそちらをどうぞ!


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◇ クラウドファンディングによって実現した、フルボイス&E-moteで動くキャラ達
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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 このゲームの定価は2200円です。
 DLCはありますが、現在配信中のDLCはサウンドトラックや本編とは関係ないショートストーリーが読めるくらいなので2200円でしっかり完結していると言えます(一応11月14日に配信予定の最後のDLCは「エンディング後」の話が入っているみたいですが)

 それで、2200円という手頃なお値段の割に……
 スクショでは分からないと思いますが、キャラクターはサブキャラまで含めてフルボイスで喋り(地の文やモノローグにはボイスはありません)、立ち絵もE-moteでヌルヌル動きます。ノベルゲーとしてのボリュームもしっかりあります。

 私は低価格のダウンロードゲームをよく遊んでいるので、そうした作品達と比べて、旧作の移植とかでもないのに2200円でこんな作りこんでて大丈夫なのか!?と驚いてしまいました。


 【フカヒレ原案・原画×百合ADV】「早咲きのくろゆり」製作プロジェクト

 というのも、このゲーム……「CSゲームでは作れない尖った設定とシステムの百合ゲー」を謳ってクラウドファンディングで資金を集めたところ、目標金額65万円だったのが525万円も集まった800%越えを達成していたんですね。


 この資金により、クラウドファンディング前にはなかったボイスがフルボイスで入り、全キャラクターの立ち絵がアニメーションで動くようになり、エンディング後の話も大量に作られていき、その他いろんなところのクオリティが跳ね上がったそうです。
 私はこのゲームの存在を数ヶ月前に知ったばかりだったので、去年の時点で応援してクラウドファンディングで支援していた方々には感謝しかありません。

 ちなみに、このクラウドファンディングで資金を集める広報も兼ねて、Twitterで4コマ漫画が連載されていたそうです。
 時間軸はゲームより前で、受験生だった頃の花ちゃん達の姿が読めます。今でもTwitter(X)で検索すれば読めるので、私と同様に最近このゲームを知ったという人も、本編を読んでいると「あーっ……」と思える構成になっているので当時も読んでいたけどゲームを遊び終わった人も再度、一読あれ。

放課後の花束(新しい順に表示されるので、下から読んでください)


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 声優さんはINSPIONエージェンシーという事務所に所属している、キャリアが浅めの人が多いみたいなんですが……みんなしっかり上手かったし、「○○さんの声だ!」的な先入観もなかったので、キャラクターそのものの声って感じで受け取れて良かったです。

 というか、「声優志望者」や「若手声優」の数がトンデモなく増えたからか、近年は「キャリアが浅い新人声優」さんもむちゃくちゃレベルが高いですよね……


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 スクショだと本当に伝わらないと思うのですが、キャラクターの立ち絵は目パチや口パクだけでなくE-moteによってヌルヌルと動きます。

 「E-moteって何?」という人に簡単に説明すると、Live2D的な「2Dの絵のパーツを使ってアニメーションで動かす技術」なのですが……Live2DとE-moteは全然ちがう仕組みで動かしているらしいですね。私は正直、どっちがどっちだか分かりません!!!



 原案・原画・キャラクターデザインはイラストレーターのフカヒレさんです。一番有名なお仕事は、恐らく戌神ころねさんのキャラクターデザインかなぁ。

 

 私は以前からフカヒレさんの暖かみのある絵が好きだったので、このゲームで「おぉ……フカヒレさんの絵が動いている」と感動しました。元々フカヒレさんありきのプロジェクトなので、イベントスチルも豊富なのが嬉しかったですね。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 個人的に驚いたのは、同じ制服のシーンでも、「制服のみ」、「制服+カーディガン」、「制服+カーディガン+マフラー」といったカンジに状況に合わせて変化するところです。
 Live2DやE-moteなどの「動く立ち絵」が普及して以降は特にそうなのですが、どうしてもコストの問題があるのでアドベンチャーゲームの立ち絵の服ってバリエーションを作れず、「想像で補ってね」というところがあるんですね。なので、ここまで細かくストーリーに合わせて変化するのには感動しました。


 本編だけでも結構なボリュームですが、メモリーコールで解放されるショートストーリーも22本も入っていて、それとは別にエンディング後に解放されるシナリオもあります。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 別売りの有料DLCは、11月9日現在3本が発売されていて、来週の11月14日の4本目まで予告されています。

・サウンドトラック 1200円
・1イベント収録「樹ちゃんのお弁当」 120円
・5イベント収録「もしも~シリーズ」 470円
・3イベント収録「花と樹の後日談」 まだ発売されていないので価格未定

 「樹ちゃんのお弁当」は“メモリーコールで解放されるショートストーリー”くらいの内容とボリュームでした。「もしも~シリーズ」は本編では出来ないようなぶっ飛んだ展開で、コメディ色が強めです。いずれも、本編を遊んだ上で「このコ達の日常をもっと見ていたい!」って思った人向けのDLCかなと思います。

 んで、最後の「花と樹の後日談」は……発売前なので当然まだ遊んでいないのですが。本編にはなかった「水着」の立ち絵が公開されていますし、エンディング後の話をやるみたいなので、本編を遊んで満足した人はマストで買わないとダメなヤツ! 立ち絵が追加されてるってことは、価格もちょっと上がっちゃうかな。買いますけど!

 個人的には、先ほど紹介したTwitterで連載されていた4コマ漫画もゲーム内で読めるようにして欲しいです。ほら、Twitter(X)なんていつ消滅するか分かんないしさ。他の場所で読めるに越したことがないし、ゲームとリンクした前日譚になっているんだからゲーム内で読めた方がありがたいかなぁと。

 自分には何故かもう起動できない体験版もゲーム本編に収録して欲しいけど、「体験版も本編に収録して欲しい」って文言は謎すぎるな……


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◇ 現代よりも「恋愛は男女ですべし」という風潮が強くなった近未来で描かれる百合
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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 ここからはキャラクターや、ストーリー、世界設定について語ります。

 主人公は笹森ちゃん、卒業を間近に控えた高校3年生です。
 運動は苦手、勉強はそこそこ得意、ちょっと優柔不断なところはあるけれど真面目でいいこな、癒し系の美少女です。ちょっと舌足らずなボイスが可愛すぎる。

 親友の樹ちゃんに特別な感情を持っているけど、それが「恋愛感情」だとはまだ気づいていません。百合ゲーは、プレイヤーが主人公の女のコに好感を持てるのかどうかが大事だと思うのだけど、このコは秒で「幸せな結末に導いてあげなくちゃ……!」と思わせられました。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 そんな花ちゃんが想いを寄せる相手は近江谷ちゃん、花ちゃんと同じ大学進学が決まっている高校3年生です。花ちゃんとは対照的に、元陸上部で運動が得意、勉強は苦手だった(ので死ぬ気で受験勉強をガンバった)、元気が取り柄のムードメーカーです。

 女のコ同士だから……というか、花ちゃんに対してだけ過剰なスキンシップをしているのだけど、樹ちゃん→ 花ちゃんは小動物を愛玩しているような「大好き」で、花ちゃん→ 樹ちゃんはガチな「大好き」というギャップが良いよね! ビジュアルは全然ちがうけど、関係性は『プロセカ』の杏こはに通じるものがあります。

 ちなみにこのゲームは「分岐のあるノベルゲーム」ですが、ヒロインごとに「○○エンド」が用意されているワケではなくて、カップリングは固定です。平たく言えば、樹ちゃんのことが大好きな花ちゃんを幸せな結末に導いてあげるのが目的のゲームですね。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 花ちゃん、樹ちゃんといつも3人でいっしょに行動しているのが二色ちゃん、「青」と書いて「あおい」と読みます。
 精神年齢高めのしっかり者で、アホなことばかり言っている樹ちゃんに鋭くツッコミを入れるポジションで、このコがいるから「女子高生の生っぽい会話」になっているんですよね。でも、彼女は彼女で抱えているものがあって……


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 そんな青ちゃんの家の隣に住んでいるのが、一つ下の後輩である一色ちゃんです。花ちゃんも十分に「ロリ」「小柄」枠ですが、藍ちゃんの方がより「ロリ」「小柄」枠なので、ポジションを奪われていますね。まぁ、花ちゃんは「大人しいロリ」枠で、藍ちゃんは「元気なロリ」枠と言えるからイイか!

 表情がコロコロ変わって、見ていて飽きないキャラです。
 「百合ゲー」の感想でこういうこと書くのもアレですが、櫻井くんとの絡みが好き。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 蛎崎くんはクラスメイトの男子。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 櫻井くんも、クラスメイトの男子―――――



 ということで、そうです。
 このゲームは、「男子も登場する百合ゲー」なんですね。

 百合には「女のコしか出てこない百合」と「男のコも出てくる百合」があるのですが、ことゲームに関しては「男のコも出てくる百合ゲー」ってあんまり見ないと思うんですね。そもそも絶対数がそんなに多くないからってのもあるんでしょうが。

 元々このゲームは「男の子も女の子もいる世界の百合モノ」という企画から始まっていて、「男のコも出てくる百合ゲー」に本気で取り組んだ作品になっているのです。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 このゲームの時代設定は、恐らく2050年辺り―――
 2025年に「15歳未満にだけ感染する高い致死率のウイルス」が大流行してしまい、こどもの人口が1512万人→ 532万人へと激減、そこから産み控えが続いて2035年には198万人にまで下がり、経済活動もボロボロ、犯罪率も上昇という時代があったそうです。

 国はそこから立ち上がるために「はぐくみ政策」という、「産めや増やせや」方針を立ち上げます。高校生の内から男女の恋愛を推奨し、結婚・出産・子育てをする夫婦には税金の優遇が図られ、2049年にはこどもの人口が409万人まで回復したそうです。


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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 その反面、独身者には「独身である」というだけで独身税が課せられる厳しい時代です。


 要は、私達が生きている現代以上に「恋愛は男女でして、結婚して、こどもを産んで育てなければならない」なる社会通念が強い時代に「女のコを好きになってしまった女のコ」を描いているんです。

 そのため、「百合ゲー」でありながら男子のキャラも登場するんですね。



 百合好きの人の中には、男子が混じることに抵抗がある人も少なくないと思いますし、私もプレイ前はすっごい不安でしたが……最後まで遊んでみたところ、あの男子2人がいなければこのゲームは名作にはならなかったろうと思うくらいに納得感がありました。
 特に櫻井くんは、あの見た目でシュールなキャラで、このゲームのキャラクター人気投票をやったら男子のくせに上位に入ってしまうんじゃないかというくらいに魅力的なキャラクターでした。


 「恋愛は男女でするべし」な時代設定だからこそ、「女のコ同士の友情」と「女のコ同士の恋愛」の境界線を描くことが出来たし、「百合とは何か」以上に「恋愛とは何か」をしっかり描いてくれて―――今まで見てきた漫画・アニメ・ゲーム・映画・小説の中でも、私にとって、「恋愛」を主題とした作品で一番好きかもくらいに面白かったです。

 私は現代で生きていても、恋愛を「して当然」だとは思えなくて、「して当然」な価値観の恋愛もののストーリーには共感できずに生きてきたので……「してはいけない」恋愛をしてしまった花ちゃんが、「どうしてしてしまうのか」と向き合ったストーリーは初めて共感できた恋愛ものだったかも知れません。



◆ で、結局どういう人にオススメ?
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<画像はSteam用ソフト『早咲きのくろゆり』より引用>

 「百合ゲー」としても「ノベルゲーム」としても革新的な1作でした。
 「百合ゲー」好きには、マストで買って欲しい“百合ゲーの到達点”くらいの作品だったと思います。

 「ノベルゲーム」としては、システムが革新的すぎてまだまだブラッシュアップする余地はあるだろうとは思いますが、この作品でしか味わえない感覚の楽しさがあったと思います。このシステムを踏襲して2作目、3作目と出してほしいですが、どうしたって1作目の「どうしていいか分からないから手探りで遊ぶ」ワクワク感は味わえないでしょうから……新しいシステムのゲームを遊びたい人は、是非遊んでおきましょう!


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