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『ぼくたちのリメイク』が描いている「2006年」とは、どんな時代だったのか

※ この記事はテレビアニメ版『ぼくたちのリメイク』第5話「自分の思いを打ちあけて」までのネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。

 この文言を書いたの久しぶりだなと思って調べたら、4年ぶりですって……

 『ぼくたちのリメイク』アニメ第5話がすごく良かったのでこの記事を書きますが、私は「アニメを観終わるまで原作は読まない」ようにしています。なので、コメント欄などに「原作のネタバレ」は書いてこないで下さい。ネタバレされたら問答無用でブロックかアクセス禁止にしますからね。

▽ 目次
ナナコが歌ったのが「God knows...」だった意味
才能のある人がまだ埋もれていた時代
「2006年」とはどういう年だったのか


 さてさて、現在テレビアニメ放送中の『ぼくたちのリメイク』―――
 観ていない&読んでいない人にも簡単に説明しますと……

 ブラック企業で働くも報われなかった主人公が、28歳の2016年から18歳の2006年に戻り、1度目の人生では選ばなかった芸術大学の映像学科に進学する話です。
 ちなみにこの大中芸術大学のモデルになっている大阪芸術大学は、『エヴァ』の庵野秀明さんを始めとして有名クリエイターを輩出している大学です。Wikipediaに一覧がありますが、任天堂の手塚さん・坂本さん・小泉さんなんかもこの大学出身なんですね。

 んで、「芸術大学を舞台にした青春モノ」「ラブコメモノ」としてもすごく面白いんですが……2016年から2006年に主人公がタイムリープしていることによって、2006年~2008年あたりの時期が如何に“激動の時代”だったのかを浮き彫りにしているのが面白いのです。

↓1↓

◇ ナナコが歌ったのが「God knows...」だった意味
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<画像はテレビアニメ版『ぼくたちのリメイク』第5話より引用>

 第5話の学園祭のシーンでナナコが歌ったのは、2006年の大ヒットアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の劇中歌「God knows...」でした。元のアニメでも(高校の)学園祭でハルヒ達が助っ人として歌った曲ということで、シチュエーションも似ていますし、時期的にもピッタリです。


 
 「God knows...」という曲はアニメ史の中でも特別なターニングポイントの曲だと私は思っていて……今では当たり前のように思われるかも知れませんが、“音楽”に合わせて“楽器”や“指”がちゃんとその通りに動いていることに「アニメで音楽をやっている!?」とみんな衝撃を受けたんですね。
 もちろん、それまでにも劇中歌を「歌う」アニメはありましたが、楽器の演奏シーンを描くのは難しくて、例えば翌年の2007年の『のだめカンタービレ』でも演奏シーンは止め絵でした。音楽とアニメーションの動きを合わせるなんてことが、当時は不可能だと思われていたんです(特に週1のテレビアニメでそれをやるなんて)。


 この1話だけの力ではありませんが、『涼宮ハルヒの憂鬱』を制作した京都アニメーションの名前は「アニメ好きなら誰もが知る会社」になり、日本で一番注目されるアニメ会社になりました。『涼宮ハルヒの憂鬱』でのライブシーンはこの1話だけでしたが、3年後には軽音部を舞台にした『けいおん!』をアニメ化して―――という話は横道に逸れすぎるのでやめておきましょうか。


 「God knows...」以降、京アニだけでなく「音楽アニメ」を作る会社はたくさん出てきます。
 2010年代になると特に「アイドルアニメ」が増えて、2011年には『THE IDOLM@STER』、2013年には『ラブライブ!』がアニメ化されます。特に「3DCG」の技術が向上したことにより、「ライブシーンはCGで描く」作品も多くなったのが2010年代でしたね。
 そして、その中から生まれたのがガールズバンドを題材にした『BanG Dream!』で、こちらは2017年にアニメ1期が放送されました。その主役:戸山香澄の声優さんが、「ナナコ」を演じている愛美さんなんですね。

 『BanG Dream!』から見て「God knows...」は、言ってしまえば「音楽アニメ」の先輩でもあり、「ガールズバンド×アニメ」の先輩でもあるので、『BanG Dream!』のゲーム版『バンドリ!ガールズバンドパーティ』でも愛美さんはカバーしています。

godknows.png
<画像はiOS版『バンドリ!ガールズバンドパーティ』より引用>


 ですが、今回の『ぼくたちのリメイク』で使われた「God knows...」は、『バンドリ!ガールズバンドパーティ』で使われている戸山香澄バージョンではないそうです。愛美さんのツイートによると、“今のナナコが歌っている”ようにストーリーに合わせて歌い直された小暮奈々子バージョンだそうです。



 2006年の『涼宮ハルヒの憂鬱』をリアルタイムで観ていた身としても、その約10年後に『バンドリ』がカバーしたのを見てきた身としても、10年前にさかのぼって愛美さん演じるキャラが「God knows...」を歌うシーンは感動しました。

 もちろん「ナナコ=愛美さん」ではないんだけど、この歌声を持った人が10年後には武道館を満員にするワケですからね。


↓2↓

◇ 才能のある人がまだ埋もれていた時代
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<画像はテレビアニメ版『ぼくたちのリメイク』第5話より引用>

 第5話で、恭也はナナコの歌をYouTube(らしきもの)にアップして、その反応を取り入れていたという話がありました。YouTubeが始まったのは2005年ですが、日本では特に前述の『涼宮ハルヒの憂鬱』のアニメの影響もあって2006年にドカッと認知されていったと思います。
 当時は今みたいに「テレビ放送を見逃したら&放送していない地域ではネット配信で観よう」なんてことが難しく、あったとしても1話いくらの有料配信しかなかったんですね。なので……という擁護もどうかと思うのだけど、違法コピーがYouTubeに投下されて「なんかすげえ話題のアニメがあるらしいぞ」とYouTubeで観る人が多かったらしいです。

 私はちゃんと違法コピーじゃなくて全話リアルタイムで観てますからね!


 要は、作中の「2006年の夏~秋」の時点でYouTubeは世間にも認識されていたという話です。んで、アニメがこれから向かう「2006年12月」にいよいよニコニコ動画が生まれます。

 翌年の2007年8月にはVOCALOID「初音ミク」が発売され、自作の曲をVOCALOIDに歌わせてニコニコ動画にアップする流れ、またそうした人気曲を「歌い手」が歌う流れが出てきます。それまで埋もれていた才能が、「発表の場」を手に入れて次々と発掘される時代が来るんですね。

 今『ぼくたちのリメイク』のアニメが描いている2006年はギリギリその時代の前夜というか、その兆候が表れたくらいの時期です。だから、まだナナコはその才能を誰にも見つけてもらえていなかったんですね。


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<画像はテレビアニメ版『ぼくたちのリメイク』第1話より引用>

 そして、これは絵描きのシノアキにも言える話です。
 Pixivが始まるのは2007年10月、Twitterの日本語版が始まるのは2008年4月。

 え、じゃあそれ以前ってみんなどこに絵を載せていたんですかと言うと……個人サイトを開いてそこに載せていたりしたのだけど、「絵を描く」作業以外にも「ホームページ運営」とか「日記(ブログ)を書く」とかの能力が求められたり、他サイトにリンクを貼ってもらわないと誰にも見つけてもらえなかったりで。

 どう考えてもシノアキには、そういう“器用な立ち回り”は出来ないでしょうから……シノアキが「好きで描いているのに、全然好きになれない」と自分の絵について思ってしまうのも無理はないんです。だから、自分の絵を「好きだ」と言ってくれた恭也に……というのも、同じ絵描きの端くれとしてよく分かります。

 絵を描く人って、「アナタの絵が好きです」と言ってもらえるだけで頑張れるものですからね! でも、PixivもTwitterも始まる前のこの時代では、なかなかそう言ってもらえることは難しかったんだと思うのです。いや、俺はPixivやTwitterのある現在でも言われたことほとんどないですけどね! だから頑張れない! 寝る!


 ちなみに、WEB小説はもうちょい早くて、特にケータイ小説発のヒット作は既にありました。有名どころで言うと、魔法のiらんどの『恋空』は2005年から書かれ、2006年に書籍化、2007年に実写映画化、2008年にはドラマ化されています。

 ただ、ゼロ年代はまだまだ小説投稿サイトが絶対的な場所ではなく、2002年からの『ソードアート・オンライン』は作者のサイトに投稿されたものでしたし、(小説かどうかは微妙だけど)『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』は2008年にはてなダイアリーに投稿されたものが始まりでしたし、2009年に投稿された『まおゆう魔王勇者』は2ちゃんねる発祥ですし、後述する『電車男』(2004年)も2ちゃんねる発のコンテンツです。

 「小説家になろう」に才能が集まる時代というのは、もうちょっと後の話かなと思います。



↓3↓

◇ 「2006年」とはどういう年だったのか

 さっき紹介した公式Twitterにも「#2006年 コラボを引き続きお楽しみに♪」という言葉があるので、『涼宮ハルヒの憂鬱』以外にも様々な2006年の何かとコラボすることが予想されます。次に何が来るのか楽しみにするとともに、作中で拾われている「2006年」ネタを紹介しつつ、「2006年」に起こったことや出てきたものを思い出していきましょう。


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<画像はテレビアニメ版『ぼくたちのリメイク』第5話より引用>

 漫画やアニメでは超超超超定番の「学園祭でメイド喫茶をやる」ネタですが、実際に2005~2006年あたりはメイド喫茶のブームの時期でした。『電車男』の書籍化が2004年で、2005年に実写映画・実写ドラマ化されたことで、一部のヲタク文化だったものがお茶の間レベルにも広がって~~~みたいな時期です。

 ただ、検索してみると2007年の時点で「メイド喫茶のブームは弾けた」みたいな記事が出てきたので、2005~2006年あたりのメイド喫茶ブームは今とは比べられないようなレベルだったのかなと思います。


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<画像はテレビアニメ版『ぼくたちのリメイク』第1話より引用>

 主人公が2016年→ 2006年にタイムリープしたことに気付くシーンで、PS2(らしきもの)しかないことに違和感を抱くところはニヤリ。PS3の発売は2006年11月なので、主人公がタイムリープした2006年3月にはまだ発売されていません。

 この辺りのゲーム機の発売時期はこんなカンジ。

・2004年12月 ニンテンドーDS
・2004年12月 PSP
・2005年12月 Xbox360
・2006年11月 PS3
・2006年12月 Wii

 恭也がPS派じゃなくてXbox派だった場合、タイムリープしていることに気付かなかった可能性もあるんですね(笑)。


 ちなみに「スマホじゃなくてガラケー?」というシーンもありましたが、iPhoneが日本で発売されるようになるのは2008年7月みたいです。「2006年なんて最近じゃない?」と思ってたけど、こう一つ一つ振り返ってみると隔世の感がありますね。


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<画像はテレビアニメ版『ぼくたちのリメイク』第1話より引用>

 恭也が初対面の火川元気郎と喋っているのは野球話。
 去年(2005年)は千葉ロッテがプレーオフから勝ち上がって日本シリーズを制していて、夏の甲子園は駒大苫小牧が二連覇を果たしました。この時期ではまだですが2006年の夏の甲子園では、ハンカチ王子と後に呼ばれる斎藤佑樹と駒大苫小牧の田中将大が投げ合って再試合まで進む激闘の決勝戦があります。ここの2人の会話はその辺を踏まえていますね。

 ただ、2006年4月に野球の話をするなら、まず間違いなく「WBC凄かったね」となると思うんですけどね! それは流石に言わんでおこう! 第1回WBCは2006年3月3日~20日に開催されて、劇的な展開の連続で日本が優勝したのです。タッチアップ問題とかあったね、そう言えば……(書きながら思い出した)


 2006年は、スポーツでもいろんなことがあった年で……

・2月~ トリノ五輪・パラリンピック
 荒川静香が金メダルを獲得し、「イナバウアー」は新語・流行語大賞に
・3月 第1回WBC
 日本が初代王者に
・6月~ サッカーW杯
 日本は惨敗、中田英寿が引退
・8月 夏の甲子園
 決勝戦で斎藤佑樹と田中将大が投げ合う
・11月 プロ野球は日本ハムが日本シリーズを制覇
 44年ぶりの日本一で、北海道移転後初の日本一、新庄剛志の引退

 まとめるとこんなカンジ。
 でもまぁ、スポーツネタはもうあんまりアニメには出てこなさそうですね。客層的に興味ない人の方が多そうですし。


 ちなみに2016年からタイムリープしてきた恭也が、好きな野球選手を大谷(らしき人)と言っていましたが……大谷翔平の2015年は投手として「最多勝利、最優秀防御率、最高勝率」の個人タイトル三冠を獲り、2016年は二刀流で活躍して「10勝、100安打、20本塁打」を記録してチームを日本一に導きました。
 今もメジャーリーグで大活躍している大谷翔平ですけど、この頃の「怪我さえしなければ無敵」感は他球団のファンとしては驚異だったんですよ……


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<画像はテレビアニメ版『ぼくたちのリメイク』第4話より引用>

 「恭也の進むべき道」として、無視できないのが“ゲーム”について。
 登美丘先輩から同人ゲームサークル(シャッターサークル=壁サー)に誘われるも、「今の自分ではまだ」と断るシーンがあるのだけど……

 この時期は今以上に「同人ゲーム」が盛り上がっていたんじゃないかと思います。
 2000年に『月姫』が出て、TYPE-MOONはその後に法人化して商業作品で2004年に『Fate/stay night』を出して……それが今でも続く大人気シリーズ『Fate』の始まりですし。
 2002年~2006年にかけて『ひぐらしのなく頃に』が頒布されて、ちょうど2006年は最初のアニメ化がされていた時期ですし。

 この時期にアニメ化された『NHKにようこそ!』でも「同人ゲームを作ってコミケに行こう!」みたいな話がありましたし、とにかく「同人ゲームに夢がある」時期だったんじゃないかと思います。
 それこそさっきの「ニコニコ動画」も「Pixiv」もなければ「小説家になろう」もまだそれほど盛り上がっていなかった時代という話に通じるのですが、この時期の「才能を持て余している人々」は同人ゲームやエロゲーに集まっていたんじゃないかなと。


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<画像はテレビアニメ版『ぼくたちのリメイク』第1話より引用>

 んで、そこから思い出されるのがタイムリープ前の第1話のシーンです。
 プラチナ世代の3人を起用したゲームの大型企画が、ソーシャルゲームを作っている部署からは「金食い虫だ」と言われ、最終的に開発凍結してしまった(みたい)展開です。2016年はまだNintendo Switchも出ていませんし、今以上にゲーム=ソーシャルゲームな時期だったと思います。

 2006年には才能が集まれる場所だった「ゲーム」という場所が、2016年にはお金を稼がなくちゃならない「ソーシャルゲーム」に取って代わられていたという見方も出来ます。10年で「ゲーム」の立ち位置はガラッと変わったというか。
 でも、この辺の話を突き詰めていくとスポンサー的にも問題ありそうですけどね! ブシロードめっちゃソシャゲやってるじゃねえか!


 ということで、今季の推しタイトルの一つです。
 最速配信はABEMAで、その他のサイトだと最新話の配信はちょっと遅れるけどAmazonプライムビデオでも全話見放題対象なんでどうぞ!


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