『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』1~5巻が面白い!/小学生だから許される「背伸び女子→鈍感男子」の猛烈アピールコメディ

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』1巻9話より引用>
【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
・小学生によるせいいっぱいの恋愛頭脳戦!(ただし、一方通行)
・出てくるキャラがみんないいこ(いいひと)の「やさしい世界」
・大人が思い描くノスタルジックな「小学生ライフ」を堪能しよう!
【紙の本】
【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
※ この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。
・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:△(恥ずかしいことは言うが、嘲笑されるシーンはほとんどない)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×
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◇ 小学生によるせいいっぱいの恋愛頭脳戦!(ただし、一方通行)
この漫画は新潮社のWEBコミックサイト「くらげバンチ」にて、2018年から連載されているラブコメ漫画です。「くらげバンチ」では1~3話を始めとして、飛び飛びですが結構な数の回を無料で読むことが出来るので、まずはそちらからでもどうぞ。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』2巻11話より引用>
主人公の一人、相川姫乃ちゃんは小学4年生の女のコです。
まだまだこどもなのに、大人ぶって背伸びしようとしているお年頃なのです。
男子からは怖がられている(ウザがられている)「こらーっ!男子ー!」系の女子なんだけど、隣の席のオージくんのことが大好きで、ことあるごとに恋愛アピールしていきます。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』3巻26話より引用>
もう一人の主人公、オージくんこと堂本逢司くんは年相応におこちゃまな小学4年生の男のコです。姫乃ちゃんが立ててくる恋愛フラグをことごとく理解せず、男友達と遊んだり、ゲームしたりする方が楽しいお年頃です。
姫乃ちゃんは恋愛ドラマなんかの定番をやりたがるのだけど、オージくんは恋愛ドラマなんか見ないから「何言っているかわからない」「何考えているかわからない」とすれちがいが発生するという。
ということで、この作品は「男子」と「女子」のコミュニティが分断されていることの多い小学生の2人を主人公にして、「すべてを恋愛ベースで考えるオマセな女子」と「まだ恋愛が何かも分かっていない鈍感な男子」のすれちがいを描いていくラブコメ漫画なのです。
この「両者の思惑」を読者だけが“神の視点”で両方読めるからこそすれちがいが面白い感覚は、『かぐや様は告らせたい』なんかにも通じるんだけど……あちらが(一応は)天才たちによる恋愛頭脳戦なのに対して、こちらはまだ小学4年生な上に一人は「まだ恋愛を知らない男子」でもう一人は「ただのポンコツ」なので超低レベルな恋愛頭脳戦になっちゃうのが魅力ですね。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』3巻25話より引用>
席替えの回で、オージくんの隣の席になろうと必死に策をめぐらす姫乃ちゃん可愛い。
恋愛を描く作品の基本は、「好き合っている2人を如何にくっつけないように仕込むか」だと思うんですね。古くは『ロミオとジュリエット』のように、生まれた家のせいで結ばれることが出来ないとか。教師と生徒のような「恋人にはなっていけない禁断の関係」だとか。三角関係のせいで、いいところで必ずジャマが入るとか。相手に告らせるまでは、こちらからは告れないとか。
そこで生まれたのが「鈍感系主人公」「難聴系主人公」という概念です。
ヒロインから「好き好き」アピールをされていることは明らかだろうに、「この2人をくっつけてしまえば話が終わってしまうから」という作者の思惑で、そのアピールに気付くことが出来ない主人公のことで。自分達でそう名乗っているのではなく、読者から揶揄される言葉ですね。
この漫画のオージくんも、究極の「鈍感系主人公」だと思うのですが……「こどもなんだから気付かなくてしょうがない」と「鈍感系主人公」であることにエクスキューズを持ってきて、逆に「鈍感系主人公に猛烈アピールを繰り返す女のコ」の可愛さと面白さをブキにしているのです。これは見事な逆転の発想だし、ある種の発明だと思いますわ。
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◇ 出てくるキャラがみんないいこ(いいひと)の「やさしい世界」
しかし、この作品の魅力って「ラブコメ」部分だけじゃなくて、「小学生の日常」を描いているところにもあると思うし、リアルな小学生のコミュニティを描くんじゃなくて、理想的な小学生のコミュニティを描いていると思うんですね。
例えば「いじめ」とかはないし、小学生にだってないわけじゃない「ドロドロとした人間関係」とかもないし、基本的に出てくるキャラはみんないいこなんですね。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』1巻9話より引用>
男子グループの中に初めて姫乃ちゃんが混じって遊ぶ回、「女子となんか遊べねーよ」と言っていたよっちゃん・タケちゃんだけど、その後もフツーに一緒に遊んでいるのなごむ。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』3巻20話より引用>
その男子グループの中に混じっていつも一緒に遊んでいる女子が高岸翼ちゃん。
女子だけど、ゲームや特撮が大好きなので男子との方が気が合うというコです。とは言え女子だし、可愛いし、「いつもオージくんの一番そばにいる女のコ」だから姫乃ちゃんからはライバルキャラとして認識されているのだけど、翼ちゃん本人は中身が男子なので全く気にしていないという。
恋愛作品だったら定番の「恋のライバル」「三角関係」になるポジションだと思うのだけど、小学4年生なので特に争うことなく一緒に遊んでいて、姫乃ちゃんの妄想の中でしかライバル扱いになっていないのが面白いところです。。
さっきの「いじめ」も「ドロドロした人間関係」もない小学生のコミュニティという話に絡んでくるんですけど、あくまでこの作品は「姫乃ちゃん一人だけが恋愛脳で暴走する」ところを面白がる作品なので、そのジャマになりそうなリアリティみたいなものは極力排しているんですね。「いじめ」とか「深刻な三角関係」を描き始めたら、ゲラゲラ笑えなくなっちゃいますから。
なので、翼ちゃんだけでなく他の女子達も、姫乃ちゃん以外の女子は恋愛には疎くて鈍いという設定になっているんです。実際の小学4年生の女子だったら「クラスの男子で誰が好き」とかで盛り上がりそうだと思うんだけど、姫乃ちゃん一人だけが恋愛脳の方が面白くなるし、そのためにそれ以外は「優しい世界」にしているのかなぁと思います。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』2巻13話より引用>
私がこの作品を「すげえ面白い!」と思うようになったのは、姫乃ちゃんのお姉ちゃんが出てくるようになってからです。大学生のお姉ちゃんで、美人で、「姫乃ちゃんがオージくんのことを好きなこと」も「オージくんは鈍感だからまだそれに気付かないこと」も把握しているキャラです。
要は、読者と同じ目線=神の目線で姫乃ちゃんやオージくんを見守っているキャラで、姫乃ちゃんの暴走に対して読者の代わりにツッコミを入れてくれるんですね。まさかの読者目線のキャラが「一番の美女」という!

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』2巻17話より引用>
私が好きなキャラは、オージくんのお兄ちゃんです。高校生。
ある程度の大人なので「美少女と一緒に遊んでいる弟」の境遇に驚いて戸惑うも、弟をねたむことなく応援できるちゃんとしたお兄ちゃんです。弟と一緒にゲームで遊んだりしてあげてるからか、オージくんの友達たちからも慕われている……でも、同年代の女子からはまったくモテないという!
この人も読者目線のキャラのようで、「読者以上に“恋愛”に対して過剰反応してしまう」キャラで、ぶっちゃけ姫乃ちゃんと気が合うのではと思わなくもない(笑)。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』2巻15話より引用>
さっき「三角関係はない」と書いちゃいましたが、登場回数の多くないイレギュラーキャラ:いとこのりんちゃんはしっかりとオージくんのことが大好きなライバルキャラです。8歳。このコの存在は「他のキャラでは起こせない展開」に持っていける反面、「この作品を壊しかねない」結構な劇薬だと分かっているからか、たまにしか出てきません。
この作品「姫乃ちゃん一人が恋愛脳で暴走する」のが面白いところなので、恋愛脳のキャラが多くなっちゃうと成り立たなくなっちゃうんですけど……姫乃ちゃんと同レベルで暴走するキャラが2人になると、これはこれで新しい展開を見せられるんですよね。このキャラをレギュラーではなく、たまにしか出てこない親戚のコにしているのは上手い。
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◇ 大人が思い描くノスタルジックな「小学生ライフ」を堪能しよう!
ということで、「小学生の日常をリアルに描く」というよりかは、理想の友達・理想の兄弟・理想のクラスメイトの女のコを配置して、大人目線で「理想的な小学生ライフを描く」作品って考えると―――『よつばと!』とかに近いのかなと思います。
今の小学生もこんなことをしているのか・言うのかは分からないけど、あー確かに自分が小学生のころはこんなことをしていた・言っていたなぁと思わせられるのです。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』1巻番外編「高岸翼」2より引用>
虫取りをしたり(「2億点」って表現が小学生っぽい)。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』3巻22話より引用>
神社で缶蹴りをしたり。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』4巻29話より引用>
下校中にブロックの上とか、白線の上だけを歩く遊びをしたり。
「小学生のころにやっていたこと」あるあるに溢れているのが楽しいのです。
もちろん「運動会」とか「宿泊学習」とかの学校イベントも満載です。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』2巻11話より引用>
男子を注意する姫乃ちゃんと、姫乃ちゃんに注意されてウザがる男子達―――この時の男子の「走っていない、これはギリ歩いているんだ」って言い張り方が、すげえ小学生男子っぽくて好き。

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』4巻34話より引用>
『リングフィットアドベンチャー』(に限りなく近いもの)を遊ぶ回もあるのだけど、この「コロコロのランキングには載っていないけど……」「大人が買ってんだと」ってやり取りから始まるのも面白い。
私がこどものころにはもちろん『リングフィットアドベンチャー』なんてありませんでしたが、ゲーセンのゲームとかPCゲームとか、小学生のコミュニティから見た「別の世界」ってこんなカンジだったよなーと思い出されます。
◆ 結局、どういう人にオススメ?

<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』5巻43話より引用>
「ラブ」と「コメディ」を合わせて「ラブコメ」ならば、その比率は3:7くらいで「コメディ」寄りの作品だと思います。噛み合わない「男子」と「女子」のすれちがいを、時にゲラゲラ、時にニヤニヤ笑う作品なのだけど―――大人が読むと、そこにノスタルジーを感じて懐かしい気持ちになれる作品です。
ずいぶん前に大人になっちゃったけど、小学生だった頃をふと懐かしがりたくなった時にオススメです!
にしても、姫乃ちゃん……オージくんのことを好きな理由が、「足が速いから」とか「イケメンだから」とかじゃなくて、「優しいから」なのがイイよね。ここだけは小学生らしからぬ、姫乃ちゃんの大人っぽいところだと思う。
【キンドル本】
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