じゃあ、実際にマンガを描いてみよう!その2~プロット&シナリオ編~
先月に発売したキンドル本『マンガは描ける!絵が描けない人でも』を受けて、じゃあ実際にマンガが出来るまでの工程を毎週見せていこうじゃないかという企画記事です。逆に、「マンガが出来るまでの工程」を見て「自分も描いてみたくなった!」という人には、初心者用の教本として『マンガは描ける!絵が描けない人でも』がオススメですよ!
マンガは描ける!絵が描けない人でも
1.企画を立てる
2.プロットを考える&シナリオを書く ←今週はココ!
3.コンテに起こす
4.キャラクターをデザインする
5.ネームを描く
6.下描きをする
7.ペン入れをする(前編)
8.ペン入れをする(後編)
9.消しゴムをかける&修正する
10.ベタを塗る
11.トーンを貼る
12.スキャンしてセリフを入れて完成!
さて……「プロット」「シナリオ」「コンテ」「ネーム」は、人によって「どの過程でどこまで書くのか」が違っていたりしますし、言葉の定義が微妙に違っていたりします。誰かと共同で作品を作ったり、編集者に見せたりするのでなければ、その辺は全部自己流でイイと思いますし、必要ないと思ったらその作業は飛ばしてしまって構わないと思います。
例えば、『ドラゴンボール』で超有名な鳥山明先生なんて、「ネーム」が「下描き」を兼ねていたみたいですからね。自分がそうしようとしたら、逆に余計な時間かかっちゃいます。人それぞれ「自分に合ったやり方」は違うのです。
でも、今まで一度もマンガを描いたことがない人にとっては、一例があった方がイメージがつかみやすいと思うので。それを踏まえた上で、自分がこれらの工程をどう定義付けているのかを書いておこうと思います。
○ プロット
描きたいもの、描かなければならないものを、羅列したもの。
それは「シチュエーション」だったり、「キャラクター」だったり、「おおよそのストーリー展開」だったりするのだけど、とにかく自分が思う作品の骨格となる部分が「プロット」なのだと自分は定義しています。
○ シナリオ
実際の「ストーリーの流れ」を、シーンの順番に沿って紙に書いていきます。
セリフも出来るだけ書いていきますが、この後の工程で「フキダシに入らない」とか「テンポが悪くなる」などの理由でガンガン修正されていくので、決定稿ではありません。
ここで重要なのは「全体のストーリーの流れ」を作者自身が把握することで、「ここでこのシーンがあるということは、その前のここで設定を見せておこう」といったカンジに、描写を追加したり削除したりして「全体の流れを整える」ことだと思います。
○ コンテ
簡略化した枠に、コマ割や、1コマずつの構図、フキダシの位置などを書き込んで、見開きごとの「画面のバランス」や「読者の視線の動き」を考えて演出していく作業です。セリフは別の枠に書いておいて、どのフキダシにどのセリフがくるのか大まかに把握しておきますが、勢いと流れを優先して「細かいことはネームを描く未来の自分が頑張ってくれるはずだ!」と大雑把に仕上げることが多いです。
○ ネーム
私の場合、原稿用紙の枠と全く同じサイズの枠をコピー用紙に作って、その枠の中で実際にどのコマがどのくらいの大きさで、キャラクターはどのくらいのサイズで、フキダシはこのくらいのサイズでどんなセリフで――――と、絵以外は完成原稿と全く同じものを「別の紙」に描く作業をネームと呼んでいます。
人によってはノートにササッと描くだけの人もいたり、絵もしっかり描き込む人もいたりして、やり方は千差万別だと思います。以前Twitterで「みんなで自分のネームがどんななのかを晒そう」みたいなことが流行ったことがありましたが、そのくらい人によって様々なんですね。私の場合、絵はラフ画ですが「目」と「口」はしっかり描いておきます。この辺は「ネーム編」でやりましょう。
「別の紙」に描いたネームを「原稿用紙」にトレースしながら絵を作っていくので、この作業をやらないと私はマンガを描けません。故に、トレース台がないと何も出来ません。トレース台なしでマンガを描こうとしたら、私の場合「剣を使わないで『ゼルダの伝説』をクリアする」くらいの無理ゲーになります。
これらの4つの工程―――
先ほども書きましたが、必ずしも全てが必要というワケではありません。
私の場合、マンガを初めて描いた時から「ネーム」は描いていましたが、いきなり「ネーム」から描いていました。
しかし、それだと見開きの画面全体を使えていないんじゃないかと考えて、確か『朝が来る』辺りから「コンテ」をその前に描くようにしたんだったと思います。
「シナリオ」は「コンテ」に添えるような形で書いていましたが、「コンテ」とは別に書くようにしたのは現在描いている電子書籍用の長編マンガが初めてです。全○話という長編だと「このシーンの前にこういう伏線を張っておきたかった」みたいに後で悔やむことも起こりかねないので、まず全話分の「シナリオ」を書いて、8話までの「コンテ」を描いて、4話までの「ネーム」を描いて、それから1話の「下描き」を始めました。
「プロット」は紙に書き起こしたことはないです。頭の中で考えて……私の場合、マンガのネタ出しというかアイディアみたいなものを常に4~5作品くらい同時並行で考えていて、どれが一番面白くなるのかの一人会議を行って、「こっちの作品のアイディアをこっちに使ってみたら」とか「こういうテーマの作品ならこういうキャラがいれば面白くなりそうだな」と脳内プロット会議で叩き上げられたものだけが次の工程に進むというカンジです。
既に公開している私のマンガで一番新しいものは『たのしみのない家族』なので、実際にこの作品を例に見ていきましょうか。
春夏秋冬オクテット(冬): やまなしレイ漫画短編集
○ プロット
紙に書いたものはありません。
最初の企画は、「『絵のない世界』の外伝として、同一テーマで現代を舞台に描き直す」というところから始まっています。そして、それとは別に温めていた「誰か一人を主人公にするのではなく、“その場所”に集まる複数のキャラクターを描く群像劇」という企画を合わせて、それでいて『春夏秋冬オクテット』の他の外伝三作品の流れを受けて「家族を題材にした作品」という角度から煮詰めていきました。
で、そこから「視点となるキャラクターが切り替わる」「真ん中にいるキャラクター(結ちゃん)は視点にならない」「それぞれのキャラクターと結ちゃんとの関係を描くことで、複数の立場の人間を描く」という“作品の核”が出来上がります。
○ シナリオ
この頃の私は「シナリオ」と「ネーム」を兼ねていたので、シナリオ単体として書いたものはありませんでした。しかし、『たのしみのない家族』は「視点となるキャラクターが切り替わる」作品なため、作者自身が全体のストーリー像を把握できなくなりかねないなと思って、こんな表を作っていました。
『趣味のない家』って、タイトルだったのか……(笑)
まぁ、『絵のない世界』の外伝ですからね。こっちの方がそれっぽいと言えば、それっぽい。
ハッキリ言って、みなさんはこれを見てもサッパリ分からないことでしょう。
私にも分かりません(笑)。
しかし、このマンガを描き始める前の2013年の自分は、これを見て完成原稿のイメージをつかんでいたのです。この時点ではまだ1ページも描かれていないワケですからね。
あと、こればっかしは経験則というか……何本も何本もマンガを描いていると、「企画」した時点で大よその「完成像」が見えてくるのですが。逆に言うと、まだ1本もマンガを描いたことのない人にとっては、こんな作業をしたところでイメージは多分つかめないと思います。
漫画家マンガの中には「漫画家や編集者はネームを読んだだけで完成原稿が見えてしまう」みたいな描写がありますし、アニメ業界を描いたアニメ『SHIROBAKO』には「絵コンテを見ただけで制作の人が感動して涙ぐむ」描写があるのですが……ああいうのって「ネーム」や「絵コンテ」から「完成した作品」が出来上がるところを数多く見ている人達だから完成像が見えるんだと思うんですね。
これから初めてマンガを描く人は、こういう作業をしても完成原稿のイメージはつかめなくても仕方ありません。1本マンガを完成させて、2本マンガを完成させて―――そうやってイメージがつかめるようになっていくのだと思います。
○ コンテ
詳しく書いてしまうと「コンテ編」で書くことがなくなっちゃうので、簡単に。
「プロット」って書いてあるような気がしますが、気にしないで!
「シナリオ」と「コンテ」を同時にやっていますが、「コンテ」は1ページずつなんですね……私自身も「この頃はこうやっていたのかー」と新鮮な気持ちで見ています。この話はまた今度。
「美少女がそういう言葉を使うんじゃない!」は、ネーム以降は「女子高生がそんな言葉を使うんじゃない!」に変わっていますね。
あと、この時点で没にしたのだと思う「取り消し線で消されたセリフ」に、「自殺とかしないでよ?」「その前に父親を殺すよ」という物騒なセリフが。全然覚えていないです(笑)。結ちゃんに「自殺」という言葉は似つかわしくないと思って没にしたんでしょうか。「オナニー」は言わせてるのに!
○ ネーム
↑のコンテはコピー用紙1枚分に4ページ分の話を描いていましたが、ネームはコピー用紙1枚分に1ページ分の話を描いています。詳しくは「ネーム編」でやりましょう。
○ 完成原稿
見ての通り、ネームとほぼ同じコマの大きさ、キャラの大きさ、セリフとなっています。大まかなコマ割、構図などはコンテの段階で出来上がっていることも分かると思います。つまり、コンテ作業の時点で「作品」はほぼ8割くらい出来上がっているとも言えるんです。
今後の作業工程のイメージはもう出来ましたかね。
今回やるのは2週目の「プロットを考える&シナリオを書く」までです。
【使用する道具】
・メモできる紙と鉛筆
まずは「プロット」から。
先ほども書いたように、普段私は「プロット」を紙に書くことはほとんどありません。しかし、今回はブログにその工程を乗せていく企画なので、初めて紙に書いてみました。
「設定」「キャラ」「ストーリー展開」などを羅列していて、「こういうものは入れておこう」的なアイディアを書き込んでいますね。
次に「シナリオ」。
全部載せちゃうのもアレなので、前半部分だけ。
私の場合、この時点で「このページでどこまで描くのか」を大まかに決めていますし、「ここは大ゴマ」というところはシナリオにしっかり書き込んでおきます。映画やアニメの脚本家の場合そこまでやる人が一般的なのかは分かりませんが、マンガの(作画はやらない)原作者の中にはカメラワークまで指定する人もいます。
私のシナリオにも、「どーん おっぱいのコマ」なんて書かれていますね。ストーリー上、「おっぱいのコマ」がここのタイミングで必要だし、「おっぱいのコマ」があってこそストーリーが成り立つと思っているから、わざわざシナリオに書いているのです。
これを読んだ来週の私は「よーし、おっぱいのコマを入れるぞー」とコンテを描くし。
そのコンテを見た3週間後の私は「よーし、おっぱいのコマを描くぞー」とネームを描くし。
そのネームを読んだ4週間後の私は、「っざけんなよ……作画がどれだけ大変だと思ってるんだよ……ネーム描いた1週間前の俺と、コンテ描いた3週間前の俺と、シナリオ書いた4週間前の俺は全員死ねよ……」とボロボロになりながら下描きをすることでしょう(笑)。
がんばれ!4週間後の私!!
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