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『私を球場に連れてって!』全4巻紹介/少なくとも西武ファンは全員読んでくれ!

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<画像は『私を球場に連れてって!』1巻より引用>


【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
女子高生だらけのきらら漫画、なのにやってることは野球観戦!
舞台は所沢、西武ドームで西武の試合をひたすら観る!何故こんな西武推しなの!?
実在のチーム、選手、試合がモデル。だからこそアニメ化とかは無理なんだよなぁ……


【紙の本】




【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×(このキャラ達には恥という概念がなさそう)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:△(序盤は小学生相手に過度な愛情を見せたりもしたが)
・BL要素:△(選手たちでのBL妄想を口走るキャラがいる)
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


↓1↓

◇ 女子高生だらけのきらら漫画、なのにやってることは野球観戦!
 この作品は芳文社のまんがタイムきららMAXにて、2017年から2021年の間に連載されていた4コマ漫画です。既に完結していて、単行本は全4巻です。

 きらら系の漫画というと、『けいおん!』や『ご注文はうさぎですか?』、『ゆるキャン△』などアニメ化されて大人気になった作品達のイメージで「女子高生(まれに女子中学生)達が、何かの趣味・部活動などにハマる」作品が多いと思われていることでしょう。女子高生がバンドを始めたら『けいおん!』、喫茶店でバイトをし始めたら『ごちうさ』、キャンプを始めたら『ゆるキャン△』みたいに。

 この作品もそうした名作達と同様に、これといった趣味もない地味な女子高生の主人公が、高校入学とともに新しい趣味に出会うというきらら漫画としては王道の展開から始まります。その“新しい趣味”とは―――


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<画像は『私を球場に連れてって!』1巻より引用>

 プロ野球の観戦!

 女子高生である必然性が全然ない!
 この手の「女子高生+特定の趣味」作品って、バイクとか釣りとかキャンプとか、オッサン趣味のものばかりじゃないかと言われることがあるのですが……その最たるものでは!?



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<画像は『私を球場に連れてって!』1巻より引用>

 ただし、きっかけはやっぱりきらら漫画らしい始まりです。
 高校に入学したばかりの主人公が、クラスメイトが言い争っているところに遭遇して、そこからなし崩し的に巻き込まれて球場まで連れていかれる第1話です。「新しい出会い」+「巻き込まれ」+「そこからハマっていく」という超王道展開ですね。

 では、このクラスメイト2人は何を言い争っていたのかというと……
 埼玉に本拠地を構え、鉄道会社が親会社の「ホワイトキャッツ」は貧乏球団なので選手を引き抜かれて、ここ数年ずっと下位に低迷している――――って、これ2017年時点の西武ライオンズじゃねえか!

 一方、福岡に本拠地を構え、豊富な資金力で選手を集めて毎年優勝候補筆頭だけど、昨年は終盤に失速して育成重視のチームに敗れて優勝を逃した――――って、これ2017年時点のソフトバンクホークスじゃねえか!

 つまり、教室に行ったら西武ライオンズのファンとソフトバンクホークスのファンがお互いを罵り合っていたんですね。ふむ、女子高生のよくある日常風景ですね! 何も問題はありません!


 ということで……この漫画に出てくる球団は「架空の球団」と聞いていたんで私は今まで読んでいなかったのですが、「架空の球団」の名前にしているのは権利的にそうしないと危ういからであって、昔のファミスタみたいなカンジで全て元ネタがある球団・球場・選手が出てくるんですね(選手は姿が描かれないし、架空の名前も出てきませんが、明らかに「あの選手だ」と分かる元ネタがある)。


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<画像は『私を球場に連れてって!』1巻より引用>

 例えば、ここのネタ―――
 2021年現在、西武ライオンズの正捕手の森友哉選手のことを指していると思われます。現在は「打てる捕手」として球界随一の選手となった森選手ですが、2014~2016年は「捕手としてはまだ起用できるレベルではないが、打撃を育てたい」チーム方針で指名打者・外野手として起用されていました。2017年シーズンは、いよいよ本格的に捕手として起用されるぞという時期だったのでこういうやり取りになっているんですね。

 こんな風に、実名こそ出てこないんですが、会話の内容は実在のプロ野球のことばかりで、プロ野球ファン(特に西武ファン)は元ネタが分かるようになっているんですね。


 ちなみに、2017年の西武ライオンズの試合日程を見てみると、実際に4月7~9日にメットライフドーム(西武ドーム)でソフトバンクとの3連戦が行われていました。恐らく第1話のやり取りは4月7日の出来事だと思われます。
 ただ、その4月7日の実際の試合で森友哉選手がホームランを打ったワケではありません。というか、出場すらしていません。この2017年シーズンの森友哉選手は開幕前のキューバ代表との強化試合でデッドボールをぶつけられて骨折、8月まで試合に出ることが出来ませんでした。

 掲載時期を考えると、実際の試合が行われる前に漫画が描かれたのでしょう。予定されている年間の試合日程を見て、ちょうどその日がソフトバンクとの試合とのことで「恐らく森友哉選手がホームランを打つだろう」と思って描いたのだと思われます。なら、西武ファン的にはヨシ!


↓2↓

◇ 舞台は所沢、西武ドームで西武の試合をひたすら観る!何故こんな西武推しなの!?

 というワケで、漫画内では別の名前になっていますが、出てくるのは全て実在のプロ野球球団がモデルのチーム達です。

・北海道セイバーズ(元ネタ:北海道日本ハムファイターズ)
・福岡ファルコンズ(元ネタ:福岡ソフトバンクホークス)
・千葉アルバトロス(元ネタ:千葉ロッテマリーンズ)
・埼玉ホワイトキャッツ(元ネタ:埼玉西武ライオンズ)
・宮城ワイルドグース(元ネタ:東北楽天ゴールデンイーグルス)
・大阪ホルスタインズ(元ネタ:オリックス・バファローズ)

・広島レッドスナッパーズ(元ネタ:広島東洋カープ)
・東京タイタンズ(元ネタ:読売ジャイアンツ)
・神奈川ハムスターズ(元ネタ:横浜DeNAベイスターズ)
・関西サーバルス(元ネタ:阪神タイガース)
・東京ラクトパシラス(元ネタ:東京ヤクルトスワローズ)
・愛知スネークス(元ネタ:中日ドラゴンズ)


 「なるほど! きらら系の漫画には女のコがたくさん出てくるから、それぞれ推しの球団がちがうってことかー」と思うでしょう? 少なくとも私は思いました。じゃあ、コミックスの表紙になっている女のコ達が着ているユニフォームを見てみましょうか。これでどこのチームのファンか分かるはずですから。




 埼玉ホワイトキャッツ(元ネタ:埼玉西武ライオンズ)ファン





 埼玉ホワイトキャッツ(元ネタ:埼玉西武ライオンズ)ファン





 福岡ファルコンズ(元ネタ:福岡ソフトバンクホークス)ファン





 埼玉ホワイトキャッツ(元ネタ:埼玉西武ライオンズ)ファン



 4分の3が西武ファンじゃねえか!

 普通こういう作品を描くなら、メインキャラ6人配置してそれぞれをパリーグ1チームずつのファンにするとかしそうじゃないですか? しないんですよ、メインキャラのほとんどが西武ファンなんです、この漫画!

 一応、話が進むと「千葉アルバトロス(元ネタ:千葉ロッテマリーンズ)ファン」と「大阪ホルスタインズ(元ネタ:オリックス・バファローズ)ファン」のキャラは出てきますし、主人公の父親が「東京タイタンズ(元ネタ:読売ジャイアンツ)ファン」だったりはするので、他球団のネタも出てこないワケではないのですが……


 そもそも舞台が埼玉県所沢市ですし、高校から15分のところに西武ドームがある設定ですし、なので頻繁に西武ドームに野球観戦に行くから西武ネタが多くなるしで……マジでこの漫画、西武ファン以外が読んで面白いの???


 でも、西武ファンなら絶対面白いです!
 細かいところでも、これって多分あの選手のことだよなーと分かるのがイイんですね。

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<画像は『私を球場に連れてって!』1巻より引用>

 例えば、ここの1コマ―――
 「2017年シーズンで、高卒2年目の野手」と言えば……後の2021年シーズンに大ブレイクした愛斗選手のことかな、みたいなことが分かるのです。西武ファンなら! 西武ファン以外が読んで面白いかは知りませんが、西武ファンなら面白いはずです!



 「どうしてこんな西武推しなのか」と言ったら原作者の方が西武ライオンズのファンだから―――みたいなシンプルな理由なんでしょうけど。実際に所沢に住む女子高生がプロ野球観戦にハマっていくなら西武ファンになるでしょうし、「友達といっしょに楽しめるから」いっしょに西武ファンになって、西武の話ばかりするのも自然な形だと思います。

 幅広い読者に受けるために、1キャラずつパリーグの6球団のファンに分散させて、全球団のネタを均等に配分するみたいな作為的なことをするより、「女子高生がプロ野球観戦にハマったら」のロールプレイとしては正しい形だと私は思うのです。


 でも、西武ライオンズはあくまで「勝手にモデルにしている」だけですから、当然のことながら「西武ファンにオススメ!」みたいなことを公式で言うことは出来ません。この漫画を楽しめるであろう西武ファンなのに、この漫画を知らない人も―――私もそうでしたが―――たくさんいると思われるので、こうしてファンが勝手に「西武ファンなら読んで!」と言っていくしかないという。


 西武ファンなら読んで!


↓3↓

◇ 実在のチーム、選手、試合がモデル。だからこそアニメ化とかは無理なんだよなぁ……

 きらら系の漫画って、毎クールのように何かしらアニメ化されていることで「簡単にアニメ化されてヒットする」みたいなイメージを持っている人もいるかも知れません。ですが、実際にアニメ化される作品なんて一握りで、大半の作品はコミックス数冊で完結してしまうものです。

 この『私を球場に連れてって!』も全4巻で完結ということで、アニメ化までには至りませんでした。いや、そもそもこの題材はアニメ化など最初から狙っていたら描けないというか……アニメ化なんて不可能な題材なんですよね。
 それは別に実在のプロ野球球団をモデルにしているから、権利者に怒られるとかそういう話ではなく、野球ってやっぱり「時事ネタ」なんですよ。


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<画像は『私を球場に連れてって!』2巻より引用>

 例えば、コレ……
 「ホルスタインズ(元ネタ:オリックス・バファローズ)」が弱いというネタで、この作中時期は2018年のシーズン開幕前なので直近の3シーズンが「5位」→「6位」→「4位」と確かにBクラスで低迷しているので「弱い」と言われても仕方がないのですが。2021年のシーズンのオリックス・バファローズは、9月3日現在堂々の1位です。


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<画像は『私を球場に連れてって!』4巻より引用>

 続いてコレ……
 「アルバトロス(元ネタ:千葉ロッテマリーンズ)」も弱いというネタで、この作中時期は2018年の9月あたりだと思われるので、2017年が6位、2018年が5位だったロッテファンも自虐ネタに走るというものですが―――2020年は2位、2021年のシーズンも9月3日現在、1位に肉薄する2位とかなりの好成績です。


 漫画のネタを考えて、描いて、それが雑誌に掲載されて、それが単行本になって、そこからアニメ化されて―――なんて数年の間に、強いチームと弱いチームが総入れ替えになるのがプロ野球の世界なんですね。
 そもそもこの漫画の序盤、西武ライオンズも「5位」→「4位」→「4位」と3年連続でBクラスに低迷していた時期なので、「キャッツは貧乏で弱小球団」「でも、私達は愛している」みたいなノリで始まっているんですね。でも、そこから2017年は「2位」、2018年は「1位」と強くなっていくため、単行本1巻が出た2018年4月頃には「ダントツ1位を走っているのに弱小球団とか自虐ネタを言っている」という酷いタイムラグが生まれるという。



 「じゃあ、時事ネタを数年遅れで読む価値なんてないの?」とは、私は思いません。

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<画像は『私を球場に連れてって!』2巻より引用>

 この漫画で描かれているのは2017年と2018年の2シーズン―――
 この2シーズンの思い出を、ファン目線でギュギュッと凝縮して詰め込んでいるんですね。

 例えば、↑の試合―――
 現在は千葉ロッテマリーンズの監督である井口資仁選手の現役最後の試合が描かれています(現実だと相手は日本ハムファイターズだったけど、漫画では埼玉ホワイトキャッツと対戦したことになっている)。


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<画像は『私を球場に連れてって!』2巻より引用>

 また、例えばこの試合―――
 この試合は西武ライオンズファンにとっては語り草になっている試合です。
 2018年4月18日の日本ハムファイターズ戦――――この試合は忘れられない試合でしたが、漫画で読んであの日の気持ちを思い出しました。登場人物達といっしょにあの試合を追体験できているみたいで楽しいんですよ。


 ……にしても、3年前の西武ライオンズの面々。秋山と浅村が移籍したことを除けば野手はほぼ今も同じメンバーなのに比べて、投手はカスティーヨとかワグナーとかまったく覚えていないな!どんな投手だったっけ?? 中塚駿太も1軍で投げていたんだ……2016年のドラフト2位選手やで(1位が今井達也、3位が源田壮亮、5位が平井克典というすごい年)。


 とまぁ、こんな風に思い出語りをしたくなる漫画なんですね。
 西武ファンにとっては特に2017年~2018年シーズンは、長らくBクラスに低迷していたチームが強くなっていったシーズンなんで思い入れが強い2年間ですし、ずっとずっと大切にしたい作品です。



◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像は『私を球場に連れてって!』1巻より引用>

 西武ライオンズファンには、そりゃオススメです!

 ただ、元ネタが分からなかったとしても、「人が何かに夢中になっている姿」を眺めるのが好きな人なら楽しめる作品だと思います。こんなにも何かを大好きだと公言して、それでクラスメイトとケンカ出来るなんてこと、そうそうありませんからね。

 野球、素晴らしい! FA移籍の話はしないで!


【キンドル本】

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