約1年前に書いたこの記事について。
「中古ゲームは利用しない」宣言から1年半が経った 2008年の秋頃にこのブログにて「中古ゲーム屋の利用は悪か」論争が白熱しまして、賛否両論まっ二つな結果として、自分は実験的に「じゃーとりあえず自分は中古でゲーム買わないし、中古にゲームを売らないことにするよ」と宣言しまして。
んで、上の記事が2010年の春。
その結果として「1年半パッケージソフトを買っていない」という事態になっていました。理由はまー上の記事を読んでもらうとして、当時これを書いたことでものすごく非難されました。
「オマエのようなヤツはゲーム業界の客じゃない」
「オマエのようなヤツにゲームを語る資格はない」
「オマエのようなヤツがいるからゲーム業界の人たちが苦しんでいるんだ」
僕のことはともかく。自分が驚いたのは、こっちでした。
パッケージソフト以外はゲームソフトだと思っていない人がこんなに大勢いるんだ。 パッケージソフトというのは、ゲーム屋さんなどで買う“形のあるゲームソフト”ですね。ディスクメディアだったり、カートリッジだったりするアレですね。
対するダウンロード(販売)ソフトというのは、インターネットを通してデータだけを購入するソフトです。バーチャルコンソールやゲームアーカイブスなどといった旧作もあれば、WiiウェアやDSiウェアなどの新作ソフトをダウンロード専用で販売しているサービスもあります。同様のサービスはPS3・PSP・Xbox360にもあります。
自分はあの記事で「パッケージソフトを」と敢えて限定して書きましたし、ダウンロードソフトは購入しているとちゃんと明記しました。それでも「ゲーム業界の客じゃない」と言われるということは、
ダウンロードソフトはゲームとして認めていない人がいるってことなんだと思うのです。
「それはその人一人だけの問題なんじゃない?」と思うかも知れませんが、同じようなことは色んな人から言われたことがあります。
Wiiウェアのサービスが始まった時、Wiiを持っている人でインターネットを自宅に繋いでいるにも関わらず
「データだけ買うのには抵抗あるからパッケージでも販売して欲しいですよ」というコメントを頂きました。
『フォトファイターX』をウチのブログで猛プッシュした時も、あるフォロワーさんからTwitterで
「面白そうだけどDSiウェアだからなぁ…」と言われました。
パッケージソフトとして売ってくれたら買ったんだけど、ダウンロードソフトだから買わない――という意見って結構見るんですよ。
現に、最初はダウンロードソフト(DSiウェア)で出て、後にパッケージソフトでも発売された『絵心教室』は(大した追加要素もないのに)パッケージソフトとして20万本以上売り上げていました。DSiウェア版のユーザーが「当時は見向きもされてなかったのに、パッケージで出た途端に話題になるのかよ!」と嘆いている書き込みも見ました。
どうして、同じ“ゲーム”のはずなのに区別されてるん? 今日はその辺のことを考えていこうと思います。
自分が詳しいWiiウェアとDSiウェアを中心に語らせていただきますが、ある程度は他の機種にも共通して言えることだと思います。
あ、あと……PS3やPSPなどにある“「パッケージソフト」と「ダウンロード販売ソフト」を同じ内容で発売するケース”はまた別の話だと思うんで、今日は考えないことにします。悪しからず。
○ ダウンロード販売ソフトの良いところ
× ダウンロード販売ソフトの悪いところ こんなカンジでバシバシ列挙していきます。フリースタイル!!
○ 定価が安い Wiiウェアは500~1000円が中心、DSiウェアは200~800円が中心です。
パッケージソフトの定価が4000~7000円くらいなのと比べると、遥かに安いです!手を出さないのが勿体ないですよ!
× 定価から値下がりしない とは言え、パッケージソフトを定価のまま買うことってあまりないですよね。
発売日ですら10%オフとかで買えますし、在庫がさばけなかったら値崩れしますし、さばけ過ぎても中古で戻ってきたら安くなっているし、中古対策で廉価版が出たりするし。
「中古は悪か」みたいな話は今日は置いときますけど。
例えば、パッケージソフト『428』が現在では廉価版2800円で買えるのに、ダウンロードソフト『レッツキャッチ』がずっと1000円ということを考えると。必ずしも割安とは言えないなぁとも思います。
○ 在庫切れにならない 発売からちょっと経ってしまったマイナーソフトの場合、パッケージソフトだとそもそも売っていないことが多くて、各地を探し回ってようやく見つけて買えるかどうか。見つかっても中古ソフトしかなくて「中古を買うヤツはゲーム業界の敵だ!」と言われそうでビクビクして買うのやめたり。
ダウンロード販売ソフトだと、自宅でコタツに入りながらササッと買うことが出来ます。ダウンロードに時間はかかりますけど。
「マイナーソフトでも在庫が切れない!」
これ重要。
まー、稀に『人生ゲーム』とか『LONPOS』みたいに配信停止になるものがあって、そうするともうどんなに足を使っても絶対に買えなくなってしまうんですけどね……
◎ マニアックなソフトでも(バーチャルの)店頭に並ぶ これは上の「在庫切れ」と繋がる話。
パッケージソフトには形があるので、「在庫がある=倉庫の場所を占拠する」んですよね。そりゃーまぁどんな商品でもそうなんですが。加えて新品のゲームソフトは非常に利益率が低いので、ゲーム屋さんは「売れないゲーム」はあまり入荷したがりません。
「1万人に1人だけが買いたいと思うゲーム」を、週に500人しかお客さんが来ないお店に置いても売れない確率の方が高いですよね。そんなゲームを入荷して赤字になって倉庫を圧迫するよりかは最初から入荷しない方がイイ、と普通は考えます。
しかし、ダウンロード販売ソフトの場合、ゲーム機をネットに繋いだ人全員がお客さんですから。
Wiiの場合、本体普及が1千万台でネット接続率が4割ですから400万人のお客さんが来店するという計算になります(計算上は)。
「1万人に1人だけが買いたいと思うゲーム」でも400本売れるんですよ! マニアックなゲームは、ダウンロード販売にこそ生きる道が残されているんです!
400本ってあんまり多くないだろと思ったアナタ、それはそれだ!(笑)
× 売れなければメーカーには1円も入らない 上の話の裏返しですが……
パッケージソフトは「なかなか店頭に置いてもらえない」というハードルがある一方で、店頭に置いてもらった時点でメーカーさんにお金が入るんです。お客さんに買われるかどうかはあまり関係がない。ということで、この辺の夢がない話はネット上でよく見かけますよね。「○○をたくさん入荷するためには、××も入荷しなくちゃならなかった」みたいな。
逆に、ダウンロード販売ソフトはその辺をすっ飛ばしていますから、「お客さんに買われるかどうか」の一点勝負です。
営業や宣伝が不必要な反面、買われなかったら1円にもならない。なので、結局は宣伝を頑張らなければならないという矛盾。社長自ら宣伝ブログをやっていた『王だぁ』なんかは分かりやすい例ですよね。
そのため、
ある程度の資本力・営業力・宣伝力がある大手メーカーはあんまりダウンロード販売ソフトに乗り気じゃないんですよね。メリットが少ない。Wiiウェア初期こそ大手メーカーの名前も沢山見かけましたが、最近の新作はWiiウェアもDSiウェアも「ここでしか名前聞かないな!」というマイナーメーカーがほとんどです(任天堂はもちろん例外ね)。
この辺……小売店の力が強いアメリカ市場だとまた事情が違うって話を聞いたことがあるんですけど、どうなんだろう。
そういう海外のソフトも日本で出てくると面白いのですが、海外のメーカーも日本のパブリッシャーを通さないとWiiウェアを出せないらしい(「ワールドゲームパレード」の時にマーベラスの人が言っていました)ので。あんまり盛り上がれないなーというところ。
◎ 「安い」から許されるゲームが出せる 人数や資本力がない会社であっても、アイディア勝負のゲームを出せる! これがWiiウェアの理念であることは以前に書きました。Wiiウェアに限った話ではなく、ダウンロード販売ソフトにはそういうメリットがあるんです。
(関連記事:
Wiiが成し得なかった“革命”~その1.アイディア勝負のWiiウェア)
例えば、Wiiウェアの『珍道中ポールの大冒険』の定価は500円です。
もし、Wiiウェアが存在しなくて「『珍ポ』をパッケージソフトで出そう!」とした場合、そのまんまWiiのパッケージソフトの平均価格4800円で出しても売れないでしょう。『ラストストーリー』が6800円で出ているワケですからね(笑)。
なので、『珍ポ』にストーリーを付けたりムービーを付けたりマルチルートにしたりやりこみ要素を増やしたり対戦モードを付けたり―――4800円に相応しいゲームに仕立てて売ろうとした結果、最初のコンセプトはどんどん薄まってしまいます。
実際、『珍ポ』の続編の『珍スポーツ』はパッケージソフトで5040円で発売されて売上げ測定不能になっています。Wiiウェアの成功例をパッケージソフトに持って来ようとして失敗した例。というか、アレのどこが続編なんだ!
逆に言うと、
「何千円も出してパッケージソフトで買うのもなぁ……」というゲームは、ダウンロード販売ソフトとして500円とか800円で出す道があるんです。 任天堂は分かりやすくWiiウェアやDSiウェアにパズルゲームを沢山投入していましたものね。パズルゲームというのは、なかなか今の御時世で何千円も出して買ってもらうには厳しいジャンルなんですが。500円や800円ならば需要があると踏んだのでしょう。
『ロックマン』『グラディウス』『ソニック』などの、昔の人気作品の復刻新作も「ダウンロード販売ならば…」で成功した例ですよね。しかし、こう考えるとセガはダウンロード販売に積極的ですね。今日名前が出るゲームはセガ率高いす。
× 「マニアックなゲーム」でみんなが喜ぶワケではない 少しずつ核心に近づいてきました。
ダウンロード販売ソフトにはたくさんメリットがあると書いてきましたよね。ちょっとまとめてみると…
【ダウンロード販売ソフトのメリット】・安い
・「安い」なりのアイディア勝負のゲームが出せる
・在庫切れがないので、アイディア勝負のマニアックなゲームもいつでも買える
パッケージソフトでは出来なかった「アイディア勝負のゲーム」「マニアックなゲーム」が出せるというのがダウンロード販売ソフトの魅力なのですが、「アイディア勝負のゲーム」「マニアックなゲーム」をみんなが求めているワケじゃないですよね。
「みんなが求めているワケではない」からマニアックなゲームなんですし! もちろん何を持って「マニアック」かは時代によるもので……
『どうぶつの森』や『脳トレ』は最初に出てきた時は「マニアックなゲーム」だったのに、いつしか400万本売れるソフトになっていたので。
スタートは「マニアック」でも広く受け入れられる可能性があるよ!という夢がある市場とも思うのですが。
「Wiiウェアはマニアックなゲームがたくさんあって楽しいな!」と言っている自分が、
「Wiiウェアはどうしてマイナーなんだろう?」と疑問を持っていたのって、「答えはずっと自分の近くにあったんじゃないか」感が半端ないです。
○ ゲーム以外にも言える話 ゲームにおける「パッケージソフト」と「ダウンロード販売ソフト」は、出版業界における「紙の本」と「電子書籍」にも置き換えられますし。ひょっとしたらテレビやラジオの未来にも言えることなんじゃないのか―――と、思うのですが。
ひとまず。
この記事を書きながら「ダウンロード販売ソフトの良さって何なんだろう?」と考えてみた結果、構造的に
「パッケージソフトが抱えていた不満点を解消してくれる」ところにあると思いました。アイディア勝負のゲームも、マニアックなゲームも、安価なゲームも、パッケージソフトには出来なかったことが出来る魅力なんです。
従来のパッケージソフトに不満を持っていた人は「ダウンロード販売ソフト」に魅力を感じますし 従来のパッケージソフトに満足している人は「ダウンロード販売ソフト」に魅力を感じないんです。 そして(ここ重要!)
ゲーム機を持っている人というのは、「従来のパッケージソフトに満足している人」の方が圧倒的に多いんです。だって、不満を持っていたらゲーム機なんて買いませんもの。普通は。僕らみたいなひねくれもの以外は。
従来のゲーム機を中心にしたビジネスを続ける限り、「ダウンロード販売ソフト」=「非パッケージソフト」が軽視されるのも仕方ないんじゃないかと思えてきました。
客層とかネット接続率のせいにしても問題は解決しない気がするのです。ネットに接続されているWiiが400万台って、ゲームキューブの普及台数と大差ない数字ですよ。それでビジネスにならないのならもう道がないんじゃないの?
3DSが何千万台売れても、この状況は変わらないんじゃないかと予想しています。PSP2はこのビジネスモデルを変えるんじゃ?という噂があるので保留。
GREEとかモバゲーとか、ゲーム機を必要としない携帯電話によるソーシャルゲームが人気な理由ってそう考えると説明がつくんじゃないかと思いますよ。
ゲーム好きな人(従来のパッケージソフトに満足している人)が、「あんなものにお金を払わされて…!」と、そうしたゲームを楽しんでいる人達をあたかも詐欺の被害者であるかのように語っているのをよく見かけます。まぁ、そういう「騙された!」という人がいないとは言いませんけど。
「従来のパッケージソフトに不満を持っていた人」がそっちに流れただけなんじゃないかって思うのです。別に“形あるゲームソフト”なんていらない、“豪華なグラフィック”もいらない、“最初にソフト買うのに何千円も払いたくない”って人が、ソーシャルゲームに流れたんじゃないかと思いますし。
そういや、Wiiウェアのランキング1位が『人生ゲーム』でランキング2位が『ペンギン生活』だということを考えると、
Wiiウェアの層ってソーシャルゲームの層に近かったんじゃないかという説も言えそうですね。
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