【旧サイトからの移行記事】フリーゲーム『LADY PEARL』紹介
今回の感想は物凄くネタバレです。
出来れば、まっさらの状態でプレイした方が良いと思うんで・・・・ちょっとでもプレイする気のある人は読まずに、クリアしてから読んでほしいです。20時間くらいでクリアできると思うので、ほら1日休みがあれば!(無茶な)
1.妥協しない作りこみ
俺はフリーウェアのゲームってのはほとんどやったことがないし、ツクール作品でどの程度のものが出来るのかも知らない。なので、これがどの程度凄いことなのかは分からないんだけど―――プレイ中1回たりとも「アマチュアが作った作品だなぁ」とは思わなかった。それこそ、商業作品をプレイしている感覚でプレイしていた。つか、俺が買ってきたRPGよりも遥かに面白かった。
普通にゲームとして楽しめるってだけじゃなく、雪山行ったり、お化け屋敷行ったり、だだっ広い平原をひたすら歩いたり、ダンジョンも凝っていた。町の人の台詞も手抜きせずに生活観に溢れ、サブキャラにすら細かい設定が練られている。
特に世界観――――冒頭から童話や過去話なんかの設定見せで、世界のとてつもない広さと「今いる国はその中の一つに過ぎない」ということが提示される。そこには宗教があり、ベストセラーの本があり、子どもたちが憧れる過去の英雄があったりする。これらの全てをゲーム内で消化することなく、設定だけをさりげなく垣間見せることで、「あぁ。俺は今膨大な世界の一部を歩いているんだ」とプレイヤーに世界を感じさせることになっている。設定がストーリーやゲーム攻略にダイレクトに関わりすぎちゃうゲームって、逆に世界が小さく見えちゃうもんね。
そうそう。作りこみと言えば―――序盤からヒールレインを覚えるクーちゃんと違って、タバちゃんはなかなか全体回復魔法を覚えない。「何だよ、コイツ。友達がいのないヤツだなぁ」と思っていたら、公式サイトによると“作者さんの意図”だったらしい。うっわー。だから、終盤にアレを覚える展開になったのかぁ・・・・・ソツねえ。
2.究極のキャラ立ち
『FFVI』のヒットあたりからだろうか。キャラクター同士の人間関係を中心にしてストーリーが進むRPGが増え、そのアンチが声高に叫んでいたのが「キャラ中心のRPGは、ドラクエみたいに“主人公=自分”じゃないから冒険している気にならない」。そして、続く台詞が「だからクソだ」となる。
中学~高校あたりの俺は、何故そんな凝り固まった価値観でしか楽しめないのか理解に苦しんでいた。“『SLAM DUNK』に比べて『アイシールド』は主人公が貧弱だから嫌い”に通じる、視野の狭さだと思う。
果たして、キャラ中心のRPGでは冒険している気にならないのか。
その話は置いといて、『LADY PEARL』の話。このゲームこそ、キャラクター中心に話が進む。大まかなストーリーが見えない序盤は、ただキャラクターの一喜一憂だけで十分に楽しめる。
324の必殺技を持つバトル少女:クーがとにかくスゴい存在感だけど、世間知らずでプレイヤーの気持ちを代弁してくれるエリアとか、超行き当たりばったりチーム:コルレオーネ一家とか、味方・敵・サブキャラ問わず美味しいキャラばっか。
でも、本当にスゴいのは味方チームが大所帯になった後半。総勢9人というキャラになるにも、(流石にミラノ君は登場遅くて絡みが少ないけど)それぞれがそれぞれに絡み合っているのだ。
例えば、AというキャラはBのことをこう思っていて、CというキャラはDというキャラに因縁がありつつAのことを尊敬していて・・・・みたいな。社会学的なネットワークで結んでも、存在感の薄いキャラがいないのはスゴい。
まぁ、ミラノ君は登場遅いのでアレだけど、8人を同時に回せる作家さんってほとんどいないんじゃないかなぁ。『ワンピ』とかでも7人が限度、『アイシールド』は三兄弟1セットとかにして変則的にこなしているし・・・・デフォルト7人+1年3人の『帯ギュ』ですら三溝・仲安・石田の存在感がないし。
味方チームの関係って、結構重要な要素だと思うのだ。後期『ドラゴンボール』とか『幽遊白書』を好きになれない理由は、“その他大勢”の味方がいるから。例えば、亀仙人とトランクスの関係とか、飛影と静流の関係とか、明確に分かる人います? 同人的にはそこが狙いどころなのかもしれないけど、俺はそこで「あー捨てキャラ発生しちゃったよ」と萎えちゃう。人間関係にリアリティを感じないのね。
『LADY PEARL』は最後までここらをきっちり描いていた。チーム2分割とか別行動とか、そういう要素を利用してこれでもかってほどに。だからこそ、ラストの「私はもう独りじゃないから・・・」というタバちゃんの台詞がグッとくるのだ!
だから、自分が冒険をしているというよりは、修学旅行の引率をしている気分なのだ。「あっはー、クーは馬鹿だなぁ」とか「タバサ、頑張れ!」とか叫んでいたし。すっげーワクワクドキドキしたし。それでも、「主人公=自分じゃないとクソだ」なんて台詞が出てきますか?
3.タバサ成長物語
なんつっても、このコ。ゲスト主役どころか、主役といっても過言ではない。最初は閉鎖的で心開いてくれないし、笑わないし、主人公チームがピンチでも一人でウリック追いかけるし、ヒールレイン覚えないし!
とにかく、生きていて楽しくなさそうなコだったのよ。クーやリンのやることを一歩引いて見てるし。いや、それは普通の人間の反応なんだけど。
「私を追うだけで、旅をしながら何も見ていなかったのか」とウリックに言われ、仲間たちに出会うことで彼女も少しずつ変わる。「もうちょっとワシらを頼れ」と言われても素直に答えられなかったが、徐々に皆を頼れるように。魔女を辞めた叔母に会い、自分の道を真剣に考えていく。そして、ようやく人々がどんなに笑ってどんなに必死に生きているのかに気付く。
だからこそ、風奉りの神殿でのタバサの「アナタこそ世界の美しさを見ていない!」って台詞にジーンと来た。エンディングの「貴方は一人ぼっちじゃないよ・・・」に本気で泣いた。タメてタメてタメて、よくぞここまで成長した。最後は全体回復魔法覚えたもんね。
小ネタとか味方キャラ同士の掛け合いだけでも十分に楽しいのだけど、こんな風に主軸のストーリーがきちっとキマっているのがまたスゴい。ここまでやって作者さん、「ストーリーはだめだめ」とか言っているのか。いやぁ、ストーリーだけでも歴代RPG上位に入るんスけど。それこそ俺の視野が狭いのかなぁ・・・・
まぁ、ここまでがゲーム自体の大まかな感想。
細かい部分にも語りたいコトいっぱいあるけど、更に長文化しそうで怖いので控えます。
で、ここからは作者さん自身へのリスペクト。
公式サイトで制作中の日記が3年分読めるんすよ。
凄いよ・・・・・これ。今でこそゲームは色んなトコで紹介されて「すげー」「すげー」言われ慣れちゃっているだろうけど、それ以前の1枚1枚スクリーンショット紹介している(没になったぽいグラフィックなんかも見れてお得!)様から完成後記までの気分ってどんななんだろう?
だってさ、皆さん。3年間も一つのものを黙々と作っていたことあります? サイトを3年運営していたって人はいるだろうけど、それは1日1日レス貰えるじゃないですか。でも、それを一人で誰に支持されるのかも分からず延々と作り続け、それが本当に完成した時の喜びってどんなだろう。
それを3年かけて完成させて、「3年待った甲斐があった」と思わせることが出来る人なんて一部の“努力と忍耐の天才”だけですよ。マジで作者さん、尊敬。
―ほとんどの登場人物において、今回のお話は「人生の旅の途中」の物語であって、終わりの話ではないのです―
作者さんの後書きからの引用。
世界観とかキャラ立ちとかも、こうした姿勢があるから形になるんですよ。きっと、『LADY PEARL』を愛している全てのプレイヤー以上に、作者さんが誰よりもキャラを想っている。同人受けしそうなキャラを連発して大金稼いでる一部のジャンプ作家にも見習ってほしい。
それと、ともに。
作者さん自身にとっても、『LADY PEARL』制作は「人生の旅の途中」であるんだろう。今後もゲームを作るのか否か、サイトを続けるのかどうかも作者さんの自由だけど・・・・・・出来れば、この人の動向を見守り続けたい。シェアウェアだろうがなんだろうが、この人の作るものを享受したい。
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