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忘れないうちに、『魍魎戦記MADARA』シリーズについて語っておきたい

 令和3年に『MADARA』についての記事を書いて誰が読むんだよと思うのだけど、先日持っている単行本全部を自炊して、ちゃんとスキャン出来ているかを確認がてら何十年かぶりに全部読み返したので……私の記憶が残っている間にブログに書いておこうと思いました。恐らくもう、残りの人生で二度と読むことも語ることもないと思いますんで。

 なので、「オススメだよ!」みたいなことを書きたいワケじゃないです。
 このシリーズを知っている人とは「そんなんあったねー」と語りたいし、知らない人には「こんなんあったんだよ」と知らせたいだけの記事です。なので、堂々とネタバレも書いていきます。


 『魍魎戦記MADARA』は1980年代末~1990年代に、漫画・小説・ゲーム・OVA・ラジオドラマなどが展開されたメディアミックスプロジェクトです。軸としては「漫画」が中心で、それを補足する形で様々なメディアで展開されたというカンジかな。



 最初の『魍魎戦記MADARA』(後に『摩陀羅壱』と呼ばれる)は、1987年からゲーム雑誌「マル勝ファミコン(角川書店)」で連載開始となった漫画です。1985年に「ファミリーコンピュータMagazine(徳間書店)」が創刊された後、1986年に「ファミコン必勝本(JICC出版局)」、「マル勝ファミコン(角川書店)」、「ファミコン通信(アスキー)」と次々と現れたファミコン雑誌の一つですね。

 この「ゲーム雑誌に連載された漫画」というところが初期は重要で、当時大ブームだったRPGのようにキャラクターのパラメータが数値化されるなど―――「ゲーム」の表現をいち早く「漫画」に取り入れた作品だったんですね(ちなみに『ドラゴンボール』で「戦闘力」が出てくるのは翌年の1988年みたい)

madara-1.png
<画像はドラゴンコミックス版『魍魎戦記MADARA』1巻より引用>

 ストーリー的にも、主人公の摩陀羅(マダラ)は赤ん坊の時に体の8つのパーツを「魍鬼八大将軍」に奪われて機械の体になったため、各地を冒険して「魍鬼八大将軍」を倒して自分の体を取り戻していくという―――手塚治虫の『どろろ』に、RPG的な「各地に散らばった○○を集める」要素を組み合わせたような話でした(『ドラクエII』の紋章を5つ集めるみたいなカンジ)。

 ストーリーの序盤は、如何にもモンスターな風体の「魍鬼八大将軍」を退治していく話なのだけど……中盤からは夏凰翔(カオス)、聖神邪(セイシンジャ)、影王(カゲオウ)といった人間キャラのライバル・仲間が登場し、そうしたキャラ達による群像劇となっていきます。『MADARA』シリーズの人気とは、要はこの辺りのキャラ人気に支えられたものだったのだと思います。

 1990年にはコナミからファミコンのRPGが発売(BGMがむっちゃ評価高いのでやったことがない人も名前は知っているかも)、1991年にはOVAが全2巻で発売、1993年にはPC98でアドベンチャーゲームが発売(発売が工画堂スタジオ!)されました。この辺は全部『摩陀羅壱』のストーリーをベースにしていますね。


 原作漫画の『魍魎戦記MADARA』は、ファミコン版の発売に合わせて1990年に一応の完結をします。原作の大塚英志さんは「ゲーム雑誌で連載されていたため、ファミコン版の発売に合わせて完結する必要があって、エピソードが大幅カットになってしまった」と後に言っていますが、“完結する必要”って大事なんだなぁと後の『MADARA』シリーズを知っているファンとしては思ってしまいますね。

 しかし、このラスト―――最後の最後で大ボスのミロクが別の次元に逃げ出してしまい、主人公のマダラ、ヒロインのキリン、あと何か老人の白沢の3人でそれを追いかける、カオスや聖神邪はそれを遠巻きに見ているしかないという結末なんですね。要は、この次元では決着が付かなかったという決着。ここまでが『摩陀羅壱』です。





 そして、同じ1990年にすぐに新章『摩陀羅弐』がスタートします。後の復刊では主人公の名前を取ってタイトルは『BASARA』に変わっているそうな。登場人物が一新されて、耶倭土(ヤワト)という和風の世界が舞台になりました。

 『壱』の終わり方から、なるほどマダラやキリンがミロクを追って転生した「新しい次元」での冒険が仕切り直されるのだな―――と思っていました。伐叉羅(バサラ)=マダラ、芙蓉(フヨウ)=キリン、甲賀三郎=ミロクっぽいしと読んでいたら、全然ちがっていました。
 物語の終盤にようやく「前世」という概念が登場し、バサラが前作の影王のような存在、今まで登場してきたキャラが「魍鬼八大将軍」の生まれ変わりと―――前作の敵キャラ達の生まれ変わりがメインとなる話だったのだと明らかになります。なので、『弐』にはマダラもカオスも聖神邪も出てこないという。

 故に、あんまり人気がないなんて言われていますが、「『壱』ではほぼ出番のなかったヒョウブの生まれ変わり:獅子丸が後半の主人公になる」ところとか私は結構好きでした。ヒロインの芙蓉もかわいいし。



 んで、いつ頃から言われたのか分かりませんが、『MADARA』シリーズは108の話で出来ている壮大な話だ―――と言われるようになりました。
 その内の8つが「本編」で、『壱』『弐』のように田島昭宇先生が作画する漫画がそれに当たり。残りの100コは小説だったり、他の漫画家による漫画だったりする……という話で、こどもながらに「絶対に完結しねえだろ」と思ったら実際に完結しませんでした。

 ただ、今になって思うのは……この108の大風呂敷って、もちろん「108コの話を実際に考えていた」のではなくて、『MADARA』のキャラを使っていろんな漫画家さんに作品を描いて欲しかったのかなと思うんですね。
 同人作家による二次創作を集めた『公式海賊本』という、今で言うアンソロジーコミックを3冊発売したり。パロディ作品とも言える『幼稚園戦記まだら』(1994年~)の義見依久先生や、後述する『ギルガメシュ・サーガ』(1995年~)の花津美子先生など、シリーズの後半は田島昭宇先生以外の漫画家さんによる展開が増えていきましたからね。

 転生のシステムも、スターシステム的なものなので……目指していたのは、後の『舞-HiME』プロジェクトとかに近かったのかも。


 閑話休題。
 では、田島昭宇先生による本編はどうなったのかというと……『弐』の完結後、じきに3作目にあたる『魍魎戦記MADARA赤(ラサ)』が1992年から連載開始になります。



 非常に難解かつ、『壱』の人気キャラであったマダラもカオスも聖神邪も出てこなかった『弐』の不人気っぷりを反省したのか、3作目は『壱』のその後を描いた正統続編となりました。マダラが別次元に転生していくのを眺めるしかなかったカオスと聖神邪は、「次元を超えられる門」を求めてカオスは西へ、聖神邪は東へと旅立ちます。この『赤』は、そうして東の大陸に旅立った聖神邪の物語です。

 『壱』の人気キャラ聖神邪がメインキャラだったこと、マダラに似たこども:ムー(実は霊的にはマダラのイトコにあたる)を助ける話、勧善懲悪の物語―――と非常に分かりやすい話になっていました。「前作の人気キャラが新作の主人公を助ける」構図は『Zガンダム』みたいで熱かったです。

 ただ、1992年の秋―――「角川お家騒動」と呼ばれるゴタゴタがあって「マル勝スーパーファミコン」の編集者は大量に退社、設立されたメディアワークスによる「電撃スーパーファミコン」が創刊されて『MADARA赤』の連載も途中から「電撃スーパーファミコン」に移籍されることになります。
 “非常に分かりやすい話”とは言え、途中で雑誌が変わるトラブル、また作画の田島昭宇先生の画力が上がりきった一方で「こども向け漫画」から逸脱していく方向になり……1994年に『MADARA赤』が完結したのを最後に、田島昭宇先生による『MADARA』本編は描かれなくなってしまいます(1996年から『多重人格探偵サイコ』の連載が始まったのも大きかった)。



 時間軸は前後しますが……
 この108つの物語のラストに、このキャラクター達が現代の東京に転生した『転生編』という作品が予定されていて、1990年に最初の2話だけ描かれていました。



 『壱』のヒロインであるキリンが転生した伏姫輝燐が、女子高生でありながら前世の記憶を頼りに「マダラの生まれ変わり」を探す物語で―――2話の段階で、聖神邪の生まれ変わりである犬彦綬陀矢、沙門の生まれ変わりである兵頭沙門と出会い、仲間になったところまで描かれていました。

 『MADARA』シリーズ、「こんな話を予定していますよ」と断片的なシーンだけ描くことが結構あるんですよね。『死海のギルガメシュ』なんか「最後に聖神邪とカオスが心中する」というラストシーンだけ見せられて、「ラストを先に知らせるの!?」と思ったものです。


 ただ、1990年の時点で『転生編』の冒頭を見せたのは、108つある壮大な『MADARA』シリーズのグランドフィナーレとしてとっておきがあるぞと旗印にする必要があったからなのかと思います。ことあるごとに「転生編の続きは描きます」「必ず描きます」とあとがきとかに書かれてましたし。

 1993年、漫画ではなく、文化放送のラジオドラマで『転生編』の続きが描かれます。
 マダラを探して転校を続けていた伏姫輝燐が、「マダラと影王」を思わせる光河兄弟と出会う―――というストーリーで、前半部分だけが田島昭宇先生ではない漫画家さんによって後に『MADARA影』というタイトルで漫画化されています。「続きを読みたいという声が大きければ後半も漫画化するかも知れない」とあとがきに書かれていましたが、後半は漫画化されませんでした。


 1993年にラジオドラマが展開されて、1994年に『MADARA赤』が完結したところで、「次はとうとう『転生編』が描かれるのかな!」と多くのMADARAファンは期待していたと思うのですが……同1994年から「電撃アドベンチャーズ」というTRPGなどを取り上げる雑誌にて、小説『摩陀羅 天使篇』の連載が開始されていました。



 これはなんと、未だ本編が描かれていない『転生編』の後日譚で、最後の戦いとなる『転生編』で敗れた伏姫輝燐や犬彦綬陀矢たちが、前世の記憶も力も失って、1999年の東京で大人になっている姿を描く小説です。「ラストシーンを先に描く」どころか、「後日譚を先に描く」という、しかももう「主人公達が負けた」ことが先に明らかになるという!

 当時は「なんでこんなことをするんだろう……転生編を楽しみにしてるファン達に対する嫌がらせ?」と思ったのですが、大人になって読み返してみると、この小説「いつまでオマエらマダラマダラ言ってるんだよ。いい加減に卒業しろよ」と言わんばかりの話になっているんですね。
 『壱』の頃から転生していったキャラ達は結局マダラに会うことが出来ず、記憶も力も失い、「マダラなんて追いかけてたこともあったなー」とウソの思い出になっていて、それでいて彼らはみんなとてつもなく悲惨な末路を迎えます。
 キリンは胎児を引きずり出される形で殺されるし、聖神邪は周りにいた人間が次々と死んで孤独になるし、沙門は狂いに狂って最後は人間じゃなくなるし、カオスも狂った挙句に「私が神だ」と言い始めるし、ロキはキリン殺害犯に仕立てられて最後には死体として海に浮かんでたし、ヒミカは満州国の皇帝みたいな人と結婚させられるし(この中じゃまだマシな方だ)、白沢はついでのように殺されるし、ジャミラはここでも男に見捨てられるし。

 恐らく、メインとなって物語を動かしていくのは「『壱』から転生してきたキャラ」ではない人達で、世代交代をして『MADARA』シリーズを終わらせたかったのかなぁと思うんですね。

 ただ、その『天使篇』も未完のまま3巻で刊行が止まってしまいました。
 3巻の途中から「電撃アドベンチャーズ」の連載ではなく単行本の書き下ろしとなっていて、あとがきで「4巻は全部書き下ろしだよー」と愚痴っていたのだけど、どうやら出版社と意向が合わなくて続きが書かれなかったようです。角川からメディアワークスへと大々的に移籍してきた『MADARA』シリーズだけど、最終的にはメディアワークスと喧嘩別れになる形で完結しなかったとは、皮肉なものだ……



 この反省からなのか、大塚英志さんは1999年に『MADARA MILLENNIUM 転生編』という小説を角川文庫から出されます。このあとがきで、「メディアミックスに翻弄されて終わらせられなかったMADARAシリーズ」「10年前(89年?)に終わらせておかなくちゃならなかったものを、1999年に終わらせよう」と書かれています。

 舞台は1990年代中盤の日本で、登場人物の名前こそ『転生編』~『天使篇』のキャラと同じですが、設定は大きく変わっていました。「魍鬼八大将軍」の生まれ変わりを殺してチャクラを喰らうカオスと、それを追う犬彦綬陀矢たちの話で――――なんと、これも1巻が出ただけで未完のまま終わります。ここまで来ると様式美かと言いたくなるのですが。




 最近まで私は知らなかったのですが、角川書店から徳間書店に出版社を変えて2003年に『僕は天使の羽根を踏まない』というタイトルで、前半は『MADARA MILLENNIUM 転生編』の1巻をそのまま収録、後半は新作という形で完結していたのです。

 タイトルが変わっていたどころか、最終的にはタイトルから「MADARA」の文字が外れるだと!?

 後半の新作部分は今回初めて読んだのですが、「いつまでオマエらマダラマダラ言ってるんだよ。いい加減に卒業しろよ」という『天使篇』を踏襲していて、夢を終わらせることに終始しているような物語で……特に面白くはないのだけど、これが大塚英志さんなりのケジメなのかなとは思いました。


 逆に言うと、『多重人格探偵サイコ』の連載が終わったら描くと言っていた『MADARA転生編』はやっぱり描かないのか……と思っちゃいましたが。




 総括をすると、メディアミックスプロジェクトが予想以上のヒットをして、大風呂敷を広げたら、誰も責任を取らなくて、誰も収拾を付けられなくなってしまった―――それが『MADARA』シリーズだったと思うのですが。



 実は、田島昭宇先生の作画ではありませんが、花津美子先生作画の『ギルガメッシュ・サーガ』(1995年~1997年、後に『MADARA 青』に改題されるけどそれ以前にも『MADARA 青』という読み切り漫画があったので超ややこしい)は、MADARA完結編と呼ぶのにふさわしい漫画だったんですね。



 『MADARA 赤』のラストで門をくぐった後の聖神邪とカオスが再会した後の話で、結局漫画としては最初の1話しか描かれなかった『死海のギルガメッシュ』(小説版があったらしいがAmazonですら売っていない)の前日譚となっています。

 「カオスと聖神邪のその後」「マダラの生まれ変わりであるデュー」「体が機械だから転生もせずにずっと生きていたという超絶後付け設定で登場した沙門」「ロキとヒミカの子孫」「レラの娘」「八大将軍」「かわいそうなジャミラ」「ミロク化する○○」と、『壱』『弐』『赤』の人気キャラがいろんな形で登場し、みんなが見たい『MADARA』の新作をちゃんと描いててくれたんですね。
 少女漫画のような絵なのでバトルシーンの迫力は劣るかも知れませんが、ロリロリなヒロイン達はみんな可愛いし。私にとっては『MADRA』シリーズの中で一番好きな作品かも。


 そして、『天使篇』や『僕は天使の羽根を踏まない』と同様の「いつまでオマエらマダラマダラ言ってるんだよ。いい加減に卒業しろよ」というメッセージを、説教くさくなく、読者に納得いく形のエンターテイメントとして描いてくれていたのです。ぶっちゃけこれが『MADARA』最終章で良かったのに―――と思うのですが。

 1990年の時点で、『MADARA』の最終章は田島昭宇先生による現代東京を舞台にした『転生編』と掲げてしまったため、ファンのみんなは『転生編』を読まないと終わった気にならなくなってしまったのかなーと。マジで、畳めない風呂敷は広げるもんじゃないと、他人事じゃないと胃が痛くなる所存でございます。




 ちなみに、『MADARA』を描くのをやめた田島昭宇先生と大塚英志先生による『多重人格探偵サイコ』は2016年に完結したそうで、2017年以降『MADARA』シリーズの復刻というか電子書籍化などが進められていたんですね。私が『MADARA』最終章と言ってもイイと思うと言った『ギルガメッシュ・サーガ』も『MADARA 青』というタイトルで2020年秋に電子書籍化されたそうです。

 「もう二度と読むことがないだろうから今の内に語っておこう」と今回の記事を書いたけど、ひょっとしてシリーズ再起動して『転生編』か『天使篇』の続きが書かれたりするのだろうか? でも、そうやって「次こそは完結するのでは」と期待して裏切られて、を1990年代からずっと続けていたMADARAファンはもうみんな忘れちゃっているので、再起動されたところで追いかけられないような気もする……それこそ記憶を奪われた『天使篇』の伏姫輝燐や犬彦綬陀矢のように。

| 漫画読み雑記 | 21:00 | comments:25 | trackbacks:0 | TOP↑

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『鬼滅の刃』のヒットの要因の解説の記事

 いやぁ~、『鬼滅の刃』が滅茶苦茶ヒットしていますね。
 映画は日本の歴代興行収入1位になることはもう間違いないだろうし、原作漫画の最終巻はとんでもない初版数だったにも関わらず入手困難と、異次元の大ヒットを飛ばしています。


 どうして『鬼滅の刃』はヒットしたのか?
 多くの人がその要因を考察して解説しているのを私も見ましたが、『鬼滅の刃』のここが斬新だったんだよみたいにムリヤリに理由を説明しようとして「そんなん他の作品にも当てはまるわボケェ」とツッコミたくなるものがほとんどでした。

 そうなんです、『鬼滅の刃』は別に「とてつもなく画期的で斬新だから大ヒットした」のではなく、それまでの多くのヒット作が大事にしてきたものを踏襲して昇華したからこその大ヒットだと思うんです。ヒット作とは「新しいから」「他にはそんなものはなかったから」ヒットするのではなく、「過去の名作の良いところをしっかりと受け継いでいるからヒットする」のです。


 では、その「『鬼滅の刃』が過去の名作から受け継いだヒットの要因」とは何なのか、解説しましょう。


 それは、


 タイトルに「の」が含まれていることです。


 『鬼滅刃』と、「の」が入っていますよね。
 同様に、日本の歴代ヒット作品のタイトルには大抵「の」が含まれているんです。



 有名なのは、宮崎駿作品ですね。

 『風ナウシカ』
 『天空城ラピュタ』
 『となりトトロ』
 『魔女宅急便』

 そのため、『もののけ姫』は「の」を2つ入れたなんて話がありますし。
 『千と千尋神隠し』『ハウル動く城』も「の」が入ります。


 宮崎駿監督作品以外でも、日本映画の歴代興行収入上位を見れば―――
 『君名は。』
 『アナと雪女王』
 『ハリー・ポッターと賢者石』

 ほら、「の」が含まれている作品がズラッと並びますよね。
 タイトルに「の」を入れるのは、ヒット作品の定石なんです。



 映画は分かった、では漫画はどうなのかというと―――
 『鬼滅の刃』よりも前に国民的大ヒットを飛ばしていたダークファンタジーと言えば、そうです。

 『進撃巨人』

 これも「の」が入っていますよね。
 映画というジャンルに限らず、もはやすべての国民的ヒット作には「の」が入っていると言っても過言ではないのです。


 『進撃の巨人』『鬼滅の刃』は2010年代を代表するダークファンタジーですが、ゼロ年代を代表するダークファンタジーとして国民的大ヒットを飛ばしたのは―――

 『鋼錬金術師』

 これも「の」が入るんですねー。
 どうですか、「ヒット作のタイトルには「の」が含まれている説」、もう明日にはクラスや職場のみんなに話したくなっちゃったんじゃないですか?



 ダークファンタジーの分野に限らず、ライトノベルとかはどうなのかというと。
 ゼロ年代を席巻した代表作もまた「の」を含みます。

 『涼宮ハルヒ憂鬱』
 『灼眼シャナ』
 『とある魔術禁書目録』
 『化物語(ばけもがたり)』
 『俺妹がこんなに可愛いわけがない』

 これらもぜーーーんぶ、「の」が含まれているんですねー。
 すごいですねー。



 じゃあ、ゼロ年代後半から2010年代に人気になっていった日常系漫画はどうでしょうか?

 『けいおん!』

 ほら、これも「の」が含まれているんですよ。
 ここまで来ると、「の」業界との癒着を疑うレベルですy………



 え? なんですか?
 『けいおん!』には、「の」が含まれていないじゃないか? ですって!?

 そんな馬鹿なことがありますか。
 よーーーーーーく、見てくださいよ。


keion-1.png

keion-2.png

 ほら、タイトルに「の」が含まれているじゃないですか!
 やはりヒット作には「の」が含まれる説―――アリだと思います。




 ここまで読んで、「いや、やまなし、国民的大ヒット作品でも「の」が含まれていない作品があるだろう」と言いたくなったものがあるかも知れません。例えば、1990年代に始まって現在も大人気のあの探偵漫画です。

 『名探偵コナン』

 確かに、一見すると「の」は含まれていません。
 ですが、これらの文字を全部ひらがなにすると―――

conan-1.png

conan-2.png

conan-3.png

 むしろ2つも含まれているんですよ!
 そりゃ大ヒットするワケですねー。




 こんなカンジで「漢字やカタカナになっているから「の」が入っているか分かりづらい作品」もありますが、ひらがなに変換すれば「の」が含まれていることが分かるんですよ。例えば、1970年代に生まれて大ブームを起こしたこのロボットアニメなんかも―――


gundam-1.png

gundam-2.png

gundam-3.png

 ほら、「の」が含まれています!
 『アンパンマン』とかも、『あんぱんまん』とひらがなにすると「の」が含まれていることが分かりますよね。




 「ひらがなには大抵「の」が含まれているから反則だろう! やまなしはいつも自説のために都合の悪いことを無視するクソ野郎だ! 早く死ねばイイのに!」とまたコメント欄に書かれそうなんで、ひらがなに変換する以外の話もしましょう。

 こちらも1990年代から続いている大ヒット海賊漫画『ONE PIECE』はどうなのか? これは、別にひらがなに変換しないでも『の』が含まれているんですね。反則じゃなくて、れっきとして「の」が含まれているんですねー。



onepiece-1.png

 このロゴを左右反転させると―――

onepiece-2.png

onepiece-3.png

 ほら、「の」が含まれていることが分かりました!


 同様に、『DRAGON BALL』とか、『DRAGON QUEST』とか、『SUPER MARIO BROS.』にも「の」が含まれているんですね。もう、大抵の国民的大ヒット作品に「の」が含まれていることは疑いの余地はありませんし、『鬼滅の刃』がタイトルに「の」を入れたこともこれらのヒット作に倣ったと言っても過言ではなくもないんじゃないかと思わなくもないです。



 「え? じゃあ、『エヴァ』はどうなんだ? 『エヴァ』はひらがなにしても、アルファベットでも、「の」が含まれてなくないか?」という声が聞こえてきました。しかし、ここにもよーーーーく見ると、「の」が含まれているんですよ。よーーーーく見てくださいね。


 『新世紀エヴァンゲリのン』

 分かりやすくするために、全部ひらがなにしてみましょうか。ヴはひらがなに出来ないので、それ以外を。

 『しんせいきえヴぁんげりん』


 ほら! ちゃーんと「の」が含まれているでしょ!?
 ということで、みなさんも国民的大ヒットを狙って作品を作る際には、タイトルのどこかに「の」を含めてみてくださいね!


| 漫画読み雑記 | 21:00 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

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「漫画紹介」「この漫画が面白い!」で紹介した作品リスト

 このブログで書いてきた漫画レビューに目次を作ることにしました。
 今後、「もっと興味を持ってもらえるように」改良していくかも知れません。

 基本的には、「完結した作品を全巻読んだ」上で書かれたのが『○○紹介』と記述してあって、「まだ連載中の作品をその当時の既刊全部を読んだ」上で書かれたのが『○○が面白い!』と記述してあるのですが……その分類をハッキリしていない頃に書いたものは、完結していなくても『○○紹介』となっているものもあります。




『鳴かせてくれない上家さん』全3巻紹介(2022.1.6)
<原作:更伊俊介、作画:古日向いろは、監修:内川幸太郎/掲載誌:月刊コミックフラッパー/連載時期:2020年~2021年>
・ゲームのマージャンとはちがう、実際に人と集まって打つとはこういうことだ!
・大会に出るとかではない、「いつも同じメンバーとマージャンを打つ」日常を描く
・マージャン×ラブコメは、どちらも「相手の気持ちを考える」ので実は相性が抜群






『私を球場に連れてって!』全4巻紹介(2021.9.6)
<原作:スーパーまさら、作画:うみのとも/掲載誌:まんがタイムきららMAX/連載時期:2017年~2021年>
・女子高生だらけのきらら漫画、なのにやってることは野球観戦!
・舞台は所沢、西武ドームで西武の試合をひたすら観る!何故こんな西武推しなの!?
・実在のチーム、選手、試合がモデル。だからこそアニメ化とかは無理なんだよなぁ……






『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』1~5巻が面白い!(2020.11.10)
<作者:ゆずチリ/掲載誌:くらげバンチ/連載時期:2018年~>
・小学生によるせいいっぱいの恋愛頭脳戦!(ただし、一方通行)
・出てくるキャラがみんないいこ(いいひと)の「やさしい世界」
・大人が思い描くノスタルジックな「小学生ライフ」を堪能しよう!


くらげバンチで連載中




『ワールドトリガー』1~19巻が面白い!(2019.3.7)
<作者:葦原大介/掲載誌:週刊少年ジャンプ→ジャンプスクエア/連載時期:2013年~>
・普段は「敵チーム」でも、侵略者と戦う時は「味方チーム」になる“日本代表”感
・「超強い主人公」と「超弱い主人公」のW主人公
・3Dゲーム世代による「地形を活かしたチーム戦」





『DARK EDGE』全15巻紹介(2019.1.10)
<作者:相川有/掲載誌:月刊電撃コミックガオ!/連載時期:1998年~2006年>
・学園ホラー?バトル?いや、やっぱりこれは青春群像劇なんだ
・誰にとっても謎に満ちた「夜の学校」は、想像以上に謎でいっぱいだった!
・ガンガン人が死ぬシリアスな話なのに、明るさを失わないのが高校生らしい

DARK EDGE (1) (幻冬舎コミックス漫画文庫) DARK EDGE (2) (幻冬舎コミックス漫画文庫) DARK EDGE (3) (幻冬舎コミックス漫画文庫) DARK EDGE (4) (幻冬舎コミックス漫画文庫) DARK EDGE (5) (幻冬舎コミックス漫画文庫)




『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』1~4巻が面白い!(2018.11.6)
<原作:バンダイナムコエンターテインメント、漫画:廾之/掲載誌:サイコミ/連載時期:2016年~>
・たくさんの「シンデレラガールズ」の中から「小学生」だけを集めた作品
・同じ「小学生」が集められたからこそ、際立つ一人一人の個性
・まだ何者にもなっていないコドモ達が、アイドルになっていく物語

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149(1) (サイコミ) THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149(2) (サイコミ) THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149(3) (サイコミ) THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149(4) (サイコミ)
サイコミで全話無料公開中



冨樫義博短編集『狼なんて怖くない!!』紹介(2018.9.12)
<作者:冨樫義博/掲載誌:WJ増刊 少年ジャンプ、週刊少年ジャンプ/作品の発表時期:1987~1989年>
・「王道」のように思われているかもだけど、実は「ちょい外し」こそが真骨頂
・スポーツ、推理、ラブコメ、オカルトなど多様なジャンルの「ちょい外し」が楽しめる
・天才が駆け出しだった頃に考えていたこと

狼なんて怖くない!!―冨樫義博短編集1 (ジャンプコミックス)



『満ちても欠けても』全2巻紹介(2018.8.6)
<作者:水谷フーカ/掲載誌:KISS→Kiss PLUS/連載時期:~2014年>
・「一つのラジオ番組」を中心としたオムニバスのストーリー
・予算がなくても、華やかな場所じゃなくても、「ラジオ」が好きな人達が熱いんだ
・オムニバスだからこそ、不器用な二人をいろんな視点で眺めるのにニヤニヤする

満ちても欠けても(1) (Kissコミックス) 満ちても欠けても(2) (Kissコミックス)
Pixivコミックで第1~2話無料公開中



『うちのクラスの女子がヤバい』全3巻紹介(2018.2.12)
<作者:衿沢世衣子/掲載誌:少年マガジンエッジ/連載時期:2015年~2017年>
・「超能力」とは呼べない、心底しょーもない「無用力」のおかしさ
・主役が毎回変わることで、多角的に見えてくる「うちのクラス」
・「うちのクラス」と一緒にすごした1年間の果てに……

うちのクラスの女子がヤバい(1) (少年マガジンエッジコミックス) うちのクラスの女子がヤバい(2) (少年マガジンエッジコミックス) うちのクラスの女子がヤバい(3) (少年マガジンエッジコミックス)
Pixivコミックソク読みで第1~3話無料公開中



『兄の嫁と暮らしています。』1~3巻が面白い!(2017.8.2)
<作者:くずしろ/掲載誌:ヤングガンガン/連載時期:2015年~>
・「他人」だけど「家族」になって生きていく
・ヘビーな境遇を周りから支えてくれるサブキャラクター達
・本人にもまだ分からない「百合」なのか「家族愛」なのか微妙な感情

兄の嫁と暮らしています。 1巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス) 兄の嫁と暮らしています。 2巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス) 兄の嫁と暮らしています。 3巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
公式サイトで第1~3話無料公開中



『百万畳ラビリンス』上下巻紹介(2017.5.27)
<作者:たかみち/掲載誌:ヤングコミックチェリー→ヤングコミック/連載時期:2013年~2015年>
・「見ていられない」けど、見ていたくなる主人公:礼香の魅力
・超人気イラストレーターの画力によって描かれた世界
・ミステリーでもあり、SFでもあり、大冒険でもあり

百万畳ラビリンス(上) (ヤングキングコミックス) 百万畳ラビリンス(下) (ヤングキングコミックス)
Pixivコミックで第1話無料公開中


『三ツ星カラーズ』1~3巻が面白い!(2017.2.2)
<作者:カツオ/掲載誌:月刊コミック電撃大王/連載時期:2014年~>
・上野の街を舞台に、女子小学生3人が走り回る!
・クソガキだけど、女子小学生ってやっぱりかわいい!
・大人たちも楽しそうでワクワクする!

三ツ星カラーズ1<三ツ星カラーズ> (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ2<三ツ星カラーズ> (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ3<三ツ星カラーズ> (電撃コミックスNEXT)
作者のPixivページで1~3話、10話・11話・14話が無料公開中



『かぐや様は告らせたい』1~3巻が面白い!(2016.12.11)
<作者:赤坂アカ/掲載誌:ミラクルジャンプ→週刊ヤングジャンプ/連載時期:2015年~>
・“恋愛”を描くからこそ、面白いネタが尽きない!
・「主人公がヒロインを好きすぎる」のも「ヒロインが主人公を好きすぎる」のも好きだ!
・天才、ボンボン、お嬢様だらけなのに、どうしてこんなにキャラが愛おしいのか

第1~5話が無料公開中(ページ中部)


『ダンジョン飯』1~3巻が面白い!(2016.09.28)
<作者:九井諒子/掲載誌:ハルタ/連載時期:2014年~>
・このファンタジー世界は「リアル」でなくても「リアリティ」がある!
・ファンタジー作品の有名モンスター達との“ザコ戦”にスポットライトをあてた作品!
・RPGの定番“4人パーティ”、一人一人のキャラがしっかり魅力的に描かれる!

第1話無料公開中



『おおきく振りかぶって』1~27巻が面白い!(2016.07.27)
<作者:ひぐちアサ/掲載誌:月刊アフタヌーン/連載時期:2003年~>
・あたかも「もう一つの世界」があるかのような描写の細かさ
・野球漫画の面白さって「読者だけが全てを知っている」情報戦なんだ!
・描かれているのは実は「負け犬たちのワンスアゲイン」



『イチゴーイチハチ!』1~2巻が面白い!(2016.05.11)
<作者:相田裕/掲載誌:ビッグコミックスピリッツ/連載時期:2014年~>
・「高校入学」から始まる、ど真ん中な学園青春物語!
・「実際にこの高校があるんじゃないのか」と思わせる圧倒的な実在感
・“夢に敗れた者”だからこそ、高校生活では負けずに楽しむ!

第1話無料公開中


『ひとりぼっちの○○生活』1~2巻が面白い!(2016.03.06)
<作者:カツヲ/掲載誌:コミック電撃だいおうじ/連載時期:2013年(?)~>
・超コミュ障だからこそ、主人公は「友達」を否定しないのがイイ!
・「友達」になろうとするからこそ見えてくるクラスメイト達の色んな一面
・侮れない画力!構成力!

第1~3話無料公開中


『ヴォイニッチホテル』全3巻紹介(2015.07.14)
<作者:道満晴明/掲載誌:ヤングチャンピオン烈/連載時期:2006年~2015年>
・南国のホテルを舞台に、様々な登場人物が躍動する群像劇
・本当ならグロイはずなのに、コミカルな作風ゆえに、爽やかさまで感じられる
・風刺と、パロディと、テンポの良さが光るテキスト

第1話無料公開中


『P.S.すりーさん』1~4巻紹介(2015.05.13)
<作者:IKa/掲載サイト:作者のブログ等/連載時期:2006年~2012年>
・激動だった2006年~2012年のゲーム業界を切り取った作品
・擬人化したからこそ、彼女達の健気さに心を打たれる
・変なキャラ達と、4コマ漫画としての上手さ



『星川銀座四丁目』全3巻紹介(2014.11.08)
<作者:玄鉄絢/掲載誌:コミックアンソロジー「つぼみ」/連載時期:2009年~2012年>
・これぞ文句なしの「禁断の愛」
・一緒にゴハンを食べて、お風呂に入って、寝る―――同棲だから描けるもの
・金髪・碧眼のスーパー美少女・乙女ちゃんが心底かわいい



『テレキネシス 山手テレビキネマ室』全4巻紹介(2014.10.15)
『テレキネシス山手テレビキネマ室』全4巻(2007.07.11)
<原作:東周斎雅楽、作画:芳崎せいむ/掲載誌:ビッグコミックスピリッツ/連載時期:2004年~2007年>
・「昔の映画」を題材にした、「昔の映画」に詳しくない人に向けた漫画
・クリエイターでもあり、サラリーマンでもある「テレビ局の社員」の物語
・1話完結で読みやすい、けど大きな流れもある漫画



『銀河パトロール ジャコ』全1巻紹介(2014.04.19)
<作者:鳥山明/掲載誌:週刊少年ジャンプ/連載時期:2013年>
・「これぞ鳥山明の漫画!」という世界観
・過去を変えようとする主人公「大盛博士」が何を意味するのか
・徹頭徹尾ムダのない“完成度の高いエンターテイメント作品”



『機動戦士クロスボーン・ガンダム』全6巻紹介(2014.03.04)
<原作:富野由悠季、作画:長谷川裕一/掲載誌:月刊少年エース/連載時期:1994年~1997年>
・「ガンダム」シリーズを知らない人でも大丈夫
・「ガンダム」生みの親である富野由悠季監督が漫画原作を担当した貴重な作品
・「人間」とは何か、「ニュータイプ」とは何だったのか



『おっとり捜査』全10巻紹介(2014.02.12)
<作者:小手川ゆあ/掲載誌:週刊ヤングジャンプ増刊・漫革等/連載時期:1995年~2000年>
…犯罪者はどこから生まれるのか―――


『鋼の錬金術師』全27巻紹介(2013.09.01)
<作者:荒川弘/掲載誌:月刊少年ガンガン/連載時期:2001年~2010年>
…今ならばラストまで一気に読める幸せ。


『この世界の片隅に』全3巻紹介(2013.08.12)
<作者:こうの史代/掲載誌:漫画アクション/連載時期:2006年~2009年>
…この国の70年前に生きていた人達の物語。


『けいおん!college』『けいおん!highscool』(2012.11.05)
<作者:かきふらい/掲載誌:まんがタイムきらら・まんがタイムきららキャラット/連載時期:2011年~2012年>
…終わった物語の“その後の話”―――


『とめはねっ!』1~4巻紹介(2009.03.28)
<作者:河合克敏/掲載誌:週刊ヤングサンデー→ビッグコミックスピリッツ/連載時期:2007年~2014年>
…『帯ギュ』が好きだった人にこそ読んで欲しい


『ONE OUTS』全19巻(2007.08.07)
<作者:甲斐谷忍/掲載誌:ビジネスジャンプ/連載時期:1998年~2006年>
※ アニメ化に伴い、2008年~2009年に外伝が短期集中連載されて20巻が発売されました
…スポーツ漫画の到達点


『ルナハイツ』全4巻(2007.04.10)
<作者:星里もちる/掲載誌:ビッグコミックスペリオール/連載時期:2003年~2004年>

| 漫画読み雑記 | 17:55 | comments(-) | trackbacks:0 | TOP↑

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ヤムチャが勝ったことのある相手を網羅する

※ この記事は、原作漫画版『ドラゴンボール』全42巻のネタバレを含みます。

 元々は、『ドラゴンボール』関連のもっと大真面目な記事を書くつもりだったのですが……こっちの方が面白そうだなと思ったので、原作漫画版『ドラゴンボール』におけるヤムチャの全戦績を網羅する記事にしました。ヤムチャが戦ったシーンから、「勝ち」「負け」「引き分け」を判定してトータルで何勝何敗何分だったのかを調べます。

 『ドラゴンボール』におけるヤムチャは「ヘタレ」「味方サイド最弱」「悟飯と髪型が被るのが迷惑」と散々に言われるキャラなのだけど、本当に彼が何の活躍もしていないのか確かめてみたくなったのです。印象だけで彼を「ヘタレ」扱いするのは良くない!ちゃんとデータに基づいて「ヘタレ」扱いしましょう。

 ちなみに、参照するのは原作漫画版のみです。
 テレビアニメ版や劇場版アニメ、比較的最近のアニメ版(とそれを原作とした漫画版)などは含みません。

<判定基準>
○ 勝ち
 相手に勝った場合。
 「仲間と協力してやっつけた」なども含みますが、「ヤムチャがやられた後、仲間がやっつけてくれた」はナシで。

× 負け
 敵に敗れた場合。
 殺されたり戦闘不能に追い込まれたりしていなくても、逃げ帰ったなどは負け判定にします。

△ 引き分け
 決着がつかなかった場合。
 誰かの横槍などが入って、勝ち負けがつかなかった時もこれにします。




【ロン毛の盗賊時代】
△ vs.孫悟空
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<画像は漫画版『ドラゴンボール』1巻8話「ヤムチャおそるべし!!」より引用>

 記念すべき1戦目は「腹を空かせて力が出ない孫悟空」相手に、狼牙風風拳をお見舞いするも、ジャン拳を喰らって吹っ飛ぶなど“互角の戦い”を繰り広げます。しかし、白熱したところで眠っていたブルマが起きて休戦―――流石にこれを「ヤムチャの負け」判定にするのは可哀想なので、「引き分け」扱いにしました。


× vs.孫悟空
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<画像は漫画版『ドラゴンボール』1巻10話「強盗大作戦」より引用>

 お腹がいっぱいになった孫悟空相手に完膚なきまでに叩きのめされ、前歯を失います。この前歯はしばらく欠けたままなのだけど、その後に治っているところを見ると西の都で直したのか?持つべきは金持ちのガールフレンドですね。


○ vs.チチ
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<画像は漫画版『ドラゴンボール』1巻11話「フライパン山の牛魔王」より引用>

 幼女をぶん殴って気絶させた後、「オレはロリコンじゃないからな……」と言って立ち去るという―――ヤムチャのヘタレっぷりって、天下一武道会で負けたとか、人造人間に負けたとかじゃなくて、この時点から相当極まっている気がします。


○ vs.ウサギ団
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<画像は漫画版『ドラゴンボール』2巻17話「オヤブンの得意技」より引用>

 ブルマが人参に変えられて、手も足も出せなくなった悟空を颯爽と助けるヤムチャ達!
 実際に活躍したのはプーアルじゃないのかとは思いますが……


○ vs.大猿悟空
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<画像は漫画版『ドラゴンボール』2巻22話「悟空の大変身」より引用>

 1回目のドラゴンボール集めのハイライトです。
 満月を見て大猿になってしまった悟空を止めるため、ヤムチャがしっぽを抑え、プーアルが斬り落とすというシーン―――またしても活躍しているのプーアルじゃない?

 しかし、この「悟空の弱点はしっぽ」という情報を尾行していたヤムチャ達だけが知っていて、それをここで使うという構成は見事ですよね。伏線が、主人公達をピンチに追い込むのではなく、主人公達をピンチから救うために使われるという。


 この時期のヤムチャの戦績:3勝1敗1分
 ヤムチャ視点でこの時期を振り返ると、万全状態の悟空には勝てなかったものの、しっぽが弱点という情報を活かして大猿悟空を撃破したとも言えて―――ヤムチャが悟空に勝って終わるんですね。序盤の敗戦も最後に輝くための布石とも言えるので、『ドラゴンボール』の真の主人公はヤムチャだったんだよ!



【短髪・シティボーイ時代】
× vs.ジャッキー・チュン
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<画像は漫画版『ドラゴンボール』4巻37話「第2試合」より引用>

 ヤムチャ苦難の歴史の始まり。
 世界中から武道の達人が集まる天下一武道会に挑戦するも、(本戦の)1回戦負けとなってしまいます。ここでの対戦相手が優勝したジャッキー・チュンというのは不運なだけだとよく言われるのですが、後のクリリンや悟空と比べて「まったく見せ場もなく敗れた」というのがヤムチャ=弱いという印象につながっているのかなと思います。


○ vs.透明人間のスケさん
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<画像は漫画版『ドラゴンボール』8巻100話「大流血戦」より引用>

 続く、レッドリボン軍編はほぼ出番なし。
 占いババ編にて悟空の前の副将ポジションで登場するも、透明人間相手に手も足も出ません。そこでクリリンが機転を効かせることで大逆転勝利を収めるのだけど、今だったら「女性の人権うんぬん」で問題になりそうな勝ち方ですよねこれ(笑)。


× vs.ミイラくん
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<画像は漫画版『ドラゴンボール』9巻102話「孫悟空見参」より引用>

 よくヤムチャがネタにされる「天下一武道会一回戦負け」は、対戦相手が強敵なため仕方がないと思うのですが……占いババ編での「敵の中堅クラスに手も足も出なかった」のは言い訳のしようもないと思います。実際、ヤムチャもこの惨敗が堪えたのか、亀仙人のところでの修行を決めたくらいですからね。


○ vs.1番の選手
○ vs.4番の選手
○ vs.8番の選手

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<画像は漫画版『ドラゴンボール』10巻114話「予選サバイバル」より引用>
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<画像は漫画版『ドラゴンボール』10巻115話「予選サバイバル その2」より引用>

 ということで、亀仙流を学んだうえでの2回目の天下一武道会の予選です。
 182人からトーナメントで8人に絞り込むためには182→91→46→23→12と、恐らく少なくとも4戦(多い人は5戦)しなくてはならないと思うのですが、明確に描写がある3試合だけを記録に残しました。


× vs.天津飯
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<画像は漫画版『ドラゴンボール』10巻118話「ヤムチャ破れる!!」より引用>

 そして、始まった本戦は1回戦負け。
 しかも、この敗戦はただの敗戦ではなく、ここで脚を折られてしまったため次のピッコロ大魔王編で他の全員が命をかけて戦っている間カメハウスでお留守番しているしかなくなるのです。レッドリボン軍編もそうなんですが、肝腎な時に戦ってすらいないというのが「ヤムチャ=ヘタレ」というイメージを作っているのかなと思います。


 この時期のヤムチャの戦績:4勝3敗
 かろうじて勝ち越してはいますが、「天下一武道会の予選で戦った名前のないキャラ」が3人含まれているので、ネームドキャラで勝ったのは「透明人間のスケさん」だけです。ヤムチャはレッドリボン軍ともピッコロ一味ともまったく戦っていないというのも、驚き。



【ロン毛の十字傷時代】
○ vs.天下一武道会の予選で戦った相手 その1
○ vs.天下一武道会の予選で戦った相手 その2

yamucha12.jpg yamucha13.jpg
<左の画像は漫画版『ドラゴンボール』14巻167話「波乱の天下一武道会」より引用>
<右の画像は漫画版『ドラゴンボール』14巻168話「8勝者 決定す!!」より引用>

 ブルマに言われて髪を短く切っていたヤムチャだが、武者修行の旅に出て再びロン毛に戻りました。そして、この頃から顔に傷がついてトレードマークになるのだけど、あらゆる傷を一瞬で治す仙豆でも治らない傷って一体。ひょっとしてこれフェイスペイントなのでは……?


× vs.シェン
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<画像は漫画版『ドラゴンボール』15巻175話「シェン」より引用>

 はい、ということで3大会連続で天下一武道会1回戦負けですよ。
 この戦いでシェンさんから「あなたは素晴らしい素質をもっている」「もう少し修行なさい」と言われるのだけど、この後のヤムチャの活躍を見るに「神様なんてアテにならねーな」と思いますよね。


△ vs.栽培マン
yamucha15.jpg
<画像は漫画版『ドラゴンボール』18巻215話「ヤムチャの予感」より引用>

 シェンさんからのアドバイスも虚しく、「相手のことをふんいきやしぐさで判断する」「技を決めたあとに油断してしまう」クセが抜けきれず、栽培マンの自爆を喰らって相討ちになってしまいます。
 レッドリボン軍編ではブルマに置いていかれ、ピッコロ大魔王編では足を骨折して戦えず、そしてナメック星編ではあの世に行っているために出番がないという―――「亀仙人」→「カリン塔」→「神様」→「界王様」と、悟空がした修行を1周遅れで追いかけているにも関わらず、それを活かす機会がまったくないというのが不憫極まりないです。


 この時期のヤムチャの戦績:2勝1敗1分
 とは言え、まだ勝ち越してました(笑)。
 このまま退場していれば、生涯成績でも勝ち越しだったのでは……?



【短髪・十字傷時代】
× vs.人造人間20号
yamucha16.jpg
<画像は漫画版『ドラゴンボール』29巻339話「ヤムチャ 間一髪!!」より引用>

 ドラゴンボールで生き返り、西の都に戻ったからなのか再び髪を短く切りました。
 コミックスで言えば11冊ぶり、話数で言えば124話ぶりに戦ったヤムチャですが、みんなを呼ぶ前に口を塞がれている間にやられるという……どうも栽培マン辺りから「最初に敵にやられるのはヤムチャ」みたいな定番が出来ていたのか、劇場版アニメとかでも真っ先に敵にやられていたような気がしなくもない。2年半ぶりに原作漫画で戦ったヤムチャが瞬殺されたのも、その逆輸入と言えるのかも知れなくもなくもない。


× vs.セルジュニア
yamucha17.jpg
<画像は漫画版『ドラゴンボール』34巻407話「セルジュニアの地獄」より引用>

 悟飯の真の力を目覚めさせるため、「仲間を痛めつければこのガキも本気になるだろう」とセルが使わせた子分達。そうは言っても、一人一人がベジータやトランクスと互角なんだからヤムチャが勝てるはずがありません。

 歯が欠けたり、骨が折られたり、ドラゴンボールの世界でもしょっちゅう重傷を負う人だよねヤムチャ。



× vs.魔人ブウ
yamucha18.jpg
<画像は漫画版『ドラゴンボール』41巻493話「異次元からの脱出」より引用>

 最後はとうとうやられる姿すら描かれず、チョコにして食べられていました。
 ヤムチャとか亀仙人とかはどうでもイイんだけど、ブルマとかをチョコにして食べるってエロくない?


 この時期のヤムチャの戦績:0勝3敗
 後半は見せ場なく、「病気で倒れた悟空を運ぶ」くらいにしか出番がなかったヤムチャ。まぁ、この時期になるとクリリンや天津飯ですらマトモに戦えない状況になるし、チャオズに至っては置いていかれるばかりなので、ヤムチャだけが弱いと言われるのは可哀想だとは思うのですが。







 生涯戦績:9勝9敗2分

 まさかの勝率5割。
 実際に勝ったことのある相手はというと……

・チチ
・ウサギ団
・大猿悟空
・透明人間のスケさん
・1番の選手
・4番の選手
・8番の選手
・天下一武道会の予選で戦った相手 その1
・天下一武道会の予選で戦った相手 その2


 後半ほとんどモブじゃねえか!
 最後に勝ったネームドキャラは「透明人間のスケさん」なのだけど、これはクリリンの機転がなければ負けていたし。「ウサギ団」や「大猿悟空」もプーアルの力を借りていたので、ヤムチャ一人で勝ったことのあるネームドキャラは「チチ」だけということになりました。

 私が想像していた以上に勝っていなかった、ヤムチャ!


 ちなみに、テレビアニメ版だと「原作の連載に追いついてしまいそうになる」ためアニメオリジナル展開でいろんなキャラと戦わせられているみたいですね、ヤムチャ。それはそれで不憫である。




 この機会に『ドラゴンボール』全42巻を駆け足で振り返ってみたのですが、『ドラゴンボール』って必ずしも「強いキャラ」だけが活躍するワケではないんですよ。最初の大猿悟空をヤムチャとプーアルが倒したように、弱くても活躍できるはずだという描き方をすることが多いのです。ただ、そのポジションはクリリンとかヤジロベーとかミスターサタンに奪われてしまうため、ヤムチャの見せ場がほとんど残らなくなってしまったんですね。

 そう考えると、ヤムチャというキャラは「強さのインフレについていけなかったキャラ」というよりかは、どんどんキャラが増えていったことで「情けないキャラがここぞという時に活躍する」ほどに情けないキャラではなかったという象徴なのかなと思います。どちらかというと、中途半端に強いことで「調子に乗って油断してたらやられてしまった」ことが多いですし。

 

| 漫画読み雑記 | 17:51 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

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悟飯やトランクスを「地球人」と見なさないヤムチャは差別主義者ではなかろうか

※ この記事は漫画版『ドラゴンボール』終盤までのネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。

 昨年のリオ五輪でのケンブリッジ飛鳥選手や、今年の世界陸上でのサニブラウン・アブデル・ハキーム選手が「日本代表」として世界の舞台で活躍していることに対して、「でも日本人とは思えない」といった発言をしている人を目にしました。

 ケンブリッジ飛鳥選手は、父親がジャマイカ人で母親が日本人で、生まれたのはジャマイカですが2歳の頃に大阪に移住して中学・高校・大学・社会人と日本で過ごした「日本育ち」で日本国籍の日本人です。
 サニブラウン・アブデル・ハキーム選手も、父親がガーナ人で母親が日本人で、福岡県出身で中学・高校は東京で過ごした「日本育ち」で日本国籍の日本人です。今年の秋から、大学はアメリカの大学に通いますが。


 日本人の母親の元に生まれ、日本で育ち、日本の国籍を持ち、日本語を喋り、日本代表として戦っている―――これ以上ないほど「日本人だとしか思えない」と私は思うんですけど、この件でちょっと思い出したことがありました。



yamutya.jpg
<画像は『ドラゴンボール』37巻439話「クリリンそしてピッコロの闘い」より引用>

 このシーンは、久々の天下一武道会に出場したクリリンに、父親の強さを知らない娘がそれを心配するのだけど、かつてクリリンとともに戦ったヤムチャが「おとうさんは世界でいちばん強いんだ!」と言うシーンです。
 父親が実は幾度も修羅場をこえてきた戦士だったと分かるところや、かつての戦友が自分のことを差し置いて「おとうさんは世界でいちばん強いんだ!」と言うところとか、ヤムチャって結構子どもの面倒見るの得意そうだなとか―――何気ないですが、私は結構このシーンが好きだったんですけど。

 「好き」だからこそ、ずっと気になっていたことがあるのです。
 それは「地球人の中ではクリリンが一番強い」の部分です。



 『ドラゴンボール』に出てくるキャラの強さ比較というのはファンの間でも熱く議論されるところで、このヤムチャの「地球人の中ではクリリンが一番強い」発言は、「ヤムチャは自分はクリリンに勝てないと思っているのか」「子どもの前だからクリリンを立てただけなのでは」「天津飯はクリリンより強そうだが」「アイツは実は地球人ではないのでは?目が三つあるし」といったカンジにあーでもないこーでもないと言われたところなんですけど……



 この時点での「強さ比較」をヤムチャが知る範囲での基準で考えてみると――――
 「悟空」は、まぁクリリンより強いですよね。しかし、彼はサイヤ人なので例外です。
 「ベジータ」も、クリリンより間違いなく強いです。彼もサイヤ人。
 「悟飯」はセル戦後に怠けていたとは言え、それでも強いです。彼は父親がサイヤ人で、母親が地球人。

 その次が「ピッコロ」かなと思いますが、彼はナメック星人。
 そのピッコロと互角の闘いをしたのが「人造人間17号」と、それよりかは劣ると言われていた「人造人間18号」……これにはいろいろと思うところがありますが、語るのは後にして、とりあえずヤムチャとしては「地球人ではない」と見なしたのでしょう。

 その次が「トランクス」と「悟天」辺りでしょうか。超サイヤ人になれる2人とクリリンとでは、クリリンには勝ち目がないかなと思います。この2人も悟飯同様に父親がサイヤ人で、母親が地球人です。

 その次が「クリリン」「天津飯」「ヤムチャ」辺りですかね。「餃子」は置いてきた。


 つまり「全体では9位」だけど、上位陣は「サイヤ人」とか「ナメック星人」とか「人造人間」とかばかりだから、それらを例外とすると「地球人の中では1位」になる――――というのがヤムチャ理論なのですが。私はこれがずっと引っかかっているのです。悟飯もトランクスも悟天も、どうして地球人とは見なされないのか?と。


 人種的な意味で言えば、半分は「地球人」じゃないですか。
 父親はサイヤ人だけど、母親は地球人なワケですし。

 国籍的な意味で言えば、(ドラゴンボールの世界での国籍がどんなものかは分かりませんが)恐らく「地球人」の国籍は持っていることと思われます。地球人の母親の元で生まれ、地球で育ち、地球の文化に浸り、地球の言語を喋り、地球の学校に通っていて、そして何よりも何度も地球のために戦ってきた―――それでもなお「地球人ではない」と言われるのはあんまりではないでしょうか!

 まぁ、それを言い出すと悟空やピッコロだって「地球で育って、地球の文化に浸って、地球の言語を喋って、地球のために何度も戦ってきた」ワケですし、地球人として認めてあげたい気もしますが。



 この発言をしたのが「ヤムチャ」だということに注目すると、ヤムチャには実はサイヤ人に対する強い嫌悪感があるのではないかと考える人もいるかも知れません。サイヤ人に1回殺されているワケですし、(自分に責があるとは言え)元カノをベジータに寝取られているワケですし、トランクスに対して「あんなヤツは地球人として認めない!」と思ってもおかしくありません。
 が、ベジータとブルマがくっつく前は、ヤムチャはなんだかんだベジータと仲良くバーベキューしていたなどそこそこ上手くやっていたワケですし。悟飯に対しては、父親も母親も子どもの頃から知っている仲で、それになんでか知らんけど自分に似ているワケで……「サイヤ人だけを特別に嫌悪する」という差別意識があったとは、私には思えません。




 どうも、ヤムチャは「父親も母親も地球人な、純血な地球人以外は地球人ではないな」と、それが差別という意識もなくそう思っていたんじゃないかと思うのです。

 というのも、この発言を深く考えてみると、子どもの母親である「人造人間18号」のことも暗に「地球人ではない」と受け取ることも出来る発言なんですよ。それをヤムチャは悪気もなく言っているのです。
 人造人間17号と18号は人間ベースの人造人間なので、元々は地球人のはずなんです。それがドクターゲロによって人造人間に改造されてしまっただけで、クリリンはそんな彼らを「ほとんど人間と変わらない」と助けようとしました。しかし、クリリンとは対照的に、ヤムチャは「いや、アイツは人造人間だ!」と脅えていたのです。

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<画像は『ドラゴンボール』35巻417話「大団円」より引用>

 そう考えると、ヤムチャは「サイヤ人」がどうこうというよりも、無意識に「地球人」と「地球人以外」を区別する思想を持っているんじゃないかと思うのです。子どもからすれば、「君のお父さんは世界一つよいんだぞ」と言われるよりも「君のお母さんは地球人ではないんだぞ」と言われる方がショックだと思うんですけどね。





 もちろん、人種によって「ちがうこともある」と認識すること自体は、差別ではないでしょう。

 ケンブリッジ選手やサニブラウン選手に「日本人とは思えない」と発言する人達も、恐らくは「日本人とは認めない!日本から出て行け!」と言いたいのではなく、「黒人の血が入っていなければやはり短距離走では勝てないのか」というようなことが言いたいのかと思います。
 陸上の短距離走というのは「黒人」が圧倒的に強くて、「日本人(に多い黄色人種)では敵わない」と言われていて、しかしそこに立ち向かってきた先人達がいて「日本人にだって夢の9秒台が出せるはず」という希望を抱いてきたのですから――――父親に「黒人」のルーツを持つケンブリッジ選手やサニブラウン選手が「日本人初の9秒台が出るか」と期待されていることに抵抗感があるってことなんでしょう。



 ヤムチャのあの発言も、「サイヤ人の血が入っていれば超サイヤ人になれるからそりゃ強いよな」「そんな中、サイヤ人でもないのに頑張っているクリリンは凄いよな」というような意図だったのだろうとは思います。

 しかし、ですよ。
 全ての「黒人」が9秒台で走れるワケではありませんし、全ての「サイヤ人」が超サイヤ人になれるワケでもありません。少なくとも「原作で描かれた範囲では」の話ですが、ラディッツやナッパよりも最終的なクリリンの方が強かったと思われます。

 特にラディッツに関しては「悟空の兄」というポジションにも関わらず、最終的なクリリンどころかヤムチャにも負けそうな扱いというのは……『ドラゴンボール』の世界では血統のみで強さが決まることはないと証明していると思うんですね。
 悟飯が強いのは、子どもの頃からピッコロのスパルタ特訓を受けた上に何度も死線を超えてきたからですし。トランクスに関しても、あっちの世界からやってきた方は悟飯というお手本が、こっちの世界の方はベジータというお手本が身近にいたからですし。プロ野球選手の子どもは物心つく前から野球に触れさせられるから野球が上手くなるみたいな話だと思うんですね。悟天のことは知らん。


 悟飯の子どものころの境遇を考えると、彼が強い理由を「サイヤ人の血が入っているから」とか「悟空の息子だから」みたいな一言で片付けるのは失礼だと思うんですね。彼が地球の命運を賭けてボロボロになりながらサイヤ人と戦っていた時も、地球のドラゴンボールを復活させるためにナメック星まで行って戦っていた時も、当のヤムチャはあっさり死んでたじゃないですか。彼の努力も知らずに!!

 ヤムチャ、別にそこまで深く考えていなかったとも思いますけど……(笑)。



 だから私、ケンブリッジ選手やサニブラウン選手が活躍できる理由を「ジャマイカ人の血が入っているから」とか「ガーナ人の血が入っているから」で片付けようとするのは失礼だと思うんです。それは本人に対しても失礼だし、「日本人初の9秒台」を目指している他の選手達にも失礼だと思うんです。

 それを「日本人とは思えない」みたいに言う人がいたのなら、これからは「オマエはヤムチャか!」って言えばイイと思います。「オマエはヤムチャか!」って言われたら、その人も反省して「ヤムチャのようになりたくないから考えを改めよう」と思うでしょうし。

 それはそれで酷いヤムチャ差別だ。


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【アンケート結果】漫画の新刊が発売されたら、すぐにその巻から読めますか?

 2月23日に取ったアンケートの結果です。
 投票締切日を設定し忘れるという失態を犯したため、発表するのが遅くなってしまいました。

 【アンケート】漫画の新刊が発売されたら、すぐにその巻から読めますか?

chart.png
◇ すぐにその巻から読み始める
 65.5% (38票)
◇ 区切りのいいところや、1~2冊前の巻から読み返す
 19.0% (11票)
◇ 1巻から通して読み返す
 13.8% (8票)
◇ 完結している漫画しか買わない
 0% (0票)
◇ そもそも漫画の単行本を買わない
 1.7% (1票)


 予想通り「すぐにその巻から読み始める」が1位で過半数を占めているのですが、
 「そもそも漫画の単行本を買わない」という人を除けば、「数巻前から読み返す」と「1巻から読み返す」を合わせた人数がちょうど3分の1で、「すぐにその巻から読み始める」人が残りの3分の2と、キレイな比率となりました。3分の1が「すぐにその巻からは読み始めない」と言い換えると、ちょっと意外な結果かなと思います。


 コメントの傾向としては、「すぐにその巻から読み始める」派の人は「読んでいる作品数が少ないので忘れるということはありません」という意見が多かったです。「連載されている雑誌でも追いかけているので、単行本はむしろ“ちょっと前の話を振り返る”カンジ」という意見もあって、確かに記事を書く際にそのケースを忘れていました。

 また、「すぐにその巻から読み始める」派の人で興味深かったのは、「最新刊を読んだ後に、前の巻を読み返す」という意見も多かったことです。
 これは昔ネタバレに関しての記事を書いた際に触れた、例えば推理小説なんかでは「犯人が分かってて読み返す2周目が面白い」みたいなことで、最新刊を読んでから前の巻を読み返すことで「あー、あのキャラはここで出てきていたのかー」とか「あの展開の伏線はここにあったのかー」と分かる楽しさがあるってことなのかなと思いました。

(関連記事:世の中には、「ネタバレをして欲しい人」がいるという大切な事実



 あと、少し話題になったのは「前巻までのあらすじ」について。
 これが最初に載っているとわざわざ前の巻を読み返さなくても記憶が呼び起こされるという意見がありましたし、「登場人物紹介」の欄があると私の「キャラの名前を覚えていられない」という問題も解決されるんじゃないかと思うのですが……基本的に「前巻までのあらすじ」や「登場人物紹介」が載っているのって、少年誌の漫画の単行本だけですよね。私が最近買っているのは青年誌の漫画の単行本がほとんどなのですが、「前巻までのあらすじ」や「登場人物紹介」はあまり見かけません(ゼロではないですけど)。

 それが何故なのかを考えると……恐らく少年誌の漫画は「子どもが買う」ことを想定しているため、子どものお小遣いでは1巻から全冊そろえることがムリで1巻、5巻、12巻みたいに飛び飛びに買う子どもがいると考えて、途中から読んでも大丈夫なようにしているのかなと思ったのですが。
 大人は大人で「前の巻までの内容を覚えていない」ことや「何度も同じ本を読み返す時間がない」ことも多いと思うので、青年誌の漫画にも「前巻までのあらすじ」や「登場人物紹介」を入れてくれないかなぁと思いました。




 芳文社系の4コマ漫画とかだと、「登場人物紹介」が冒頭のカラーページに載っていることが多いですね。

kinmosa.jpg
<画像は『きんいろモザイク』3巻より引用>

 これはキャラ推しの狙いが大きいのかも知れませんが、しょっちゅうキャラの名前を混同してしまう私はたびたび冒頭に戻って名前を確認することが出来て助かっています。


 ちょっと話が逸れますけど……キャラの名前を忘れないのが本当に苦手なので、アニメを観て感想をTwitterに投稿しようとしても「アニメを観終わって」から「Twitterを開く」までの数秒の間にキャラの名前を忘れますからね私。だから、アニメの感想を書くときはいつも公式サイトを開いて確認していますし、公式サイトに載っていないキャラだった場合は録画を巻き戻してEDクレジットを見ながら書きますもの。

 漫画や映画の感想は、非公開にしているメディアマーカーにメモしているのですが、どんなに大好きな作品であってもキャラの名前を覚えていられないから「主人公が」とか「ヒロインが」とかしか書いていなかったりしますし(笑)。その割に声優さんの名前は憶えているから、「アニメ版で○○さんがやっていたコ」と書いてあったりしますし(笑)。


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【アンケート】漫画の新刊が発売されたら、すぐにその巻から読めますか?

 恐らく「作品によるよー」「出ている巻数によるよー」と思われるでしょうから、「続き物のストーリー漫画」で「発売された新刊は5巻」で「まだまだ完結しそうにない」という“架空の作品”に条件を統一しましょうか。

 楽しみにしている漫画の新刊が発売された際――――
 アナタはそれを心待ちにしていて、発売日に買って、「さあ読むぞ!」という時に、すぐに5巻から読み始めますか?それとも1巻から通して読み返しますか?


※ 投票の受付は終了しました



 私は、自分が少数派だと予想しているのですが、私は「1巻から通して読み返さないと気が済まない」んです。何故なら「前巻までの内容を覚えていられない」から。
 一番キツイのはキャラクターの名前で、当然知っているでしょというテンションで語られるキャラの名前が一体誰だか分からないまま読み進めて「その内また出てくるだろう」と思ったらその後に出ないままその巻が終わっちゃって「結局誰だったんだ、ソイツは!」と悶々としてしまったり。

 こういうことを書くと、「おじいちゃん、おひるごはんはもう食べたでしょ?」とか「本当に頭が悪いんですねー、早く死んでください」とか言われそうですが。
 今、自分の本棚(電子書籍も含む)にある「まだ完結していない漫画」でかつ「続きを買う意志のある漫画」を数えてみたら、全部で44作品ありました。その上、現在観ている今季のアニメが6本、Amazonプライムで観ているアニメ・特撮が3本、ハードディスクに溜まっている映画も観なきゃいけないし、積みゲーが70本以上あるし、続きものの小説も読んでいるし。


 そんなにたくさんのストーリーとかキャラとか、覚えていられないんですよっ!!

 メディアマーカーに感想をメモっておけば、1つ前の巻までの記憶がよみがえるかなと思ったのですが……「感想をメモする」ことに時間を割けないので、感想がどんどんどんどん「面白かった」「次も読みたい」と簡略化していって、数か月後にそれを読み返しても全く内容が分からなくて(笑)。


 だからもうイイや!と覚悟を決めて、新刊を読む際には1巻から読み返すことにしました。
 例えば『ダンジョン飯』の4巻は2月15日に発売ということが分かっていたので、2月13に1巻から読み返してちょうど2月15日に4巻が読めるように調整していました。そのおかげで「あぁ!あの時のあのキャラがここでこうなってこうなっているのか!」と分かって、1巻から読み返して本当に良かったなーなんて思ったのですが。

 しかし、当然のことながら1巻から読み返すのは時間がかかるので……電子書籍版が2月17日に発売された『かぐや様は告らせたい』の4巻は、買ったはイイけど1巻から読み返す時間がないのでまだ読んでいません。刊行ペースの早い作品なので、今ではもう「5巻が発売された時に1巻から読み返せばイイかなー」なんて考えていて。


 4巻とか5巻ならまだマシな方で……連載が続いていって20巻や30巻と出てしまっている作品は、1巻から読み返すには1か月まるまる費やすくらいの時間がかかってしまうので容易に読み返せず、新刊が出て買っても読まないことが続いて、最終的に「俺は何巻まで読んだんだっけ」「ここに並んでいるのは最新刊までそろっているんだっけ」が分からなくなって。

 もういっそのこと完結したら1巻から全部一気に読もう!と考えて――――
 それで実際に完結したのに、全巻揃えてはいても、読む時間がなくて読めていない作品も多くて。




 こんな風に悩んでいる人は世の中にどれくらいいるのかな、と思ってアンケートを取ってみたくなったのです。

 私とは逆に「すぐにその巻から読み始める」という人は、長期連載の作品の細かい伏線とかを覚えていられずに読んでいることも多いと思うんですね。古い話ですけど、『20世紀少年』が完結した際、最後に明かされた真相に「え……?誰?」とキョトンとした人が多かったという話を聞いて「やっぱそうなのかー」と思ったことがありました。私は巻数が増えた辺りから「1巻から読み返す時間」がなくて追いかけられなくなって、完結してから1巻から全部一気に読んだので「あー、やっぱりあの時の○○が真相だったかー」と思ったのですが、最終回だけとか最終巻だけを読んだ人はそんな伏線を覚えていなかったのだろうし。

 「全巻一気に読む人」と「最新刊だけ読む人」では、評価が変わるってことがあるのかなーなんて思ったのです。


※ 3月15日追記:
 結果が出たので、記事を書きました。

 【アンケート結果】漫画の新刊が発売されたら、すぐにその巻から読めますか?


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