<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】 ・「女のコ達が無駄話をするだけ」、それこそが楽しいんだという執念で作られたゲーム ・荒廃した秋葉原でサバイバルをする――のは、プレイヤーじゃなくてキャラクター達 ・ストーリーには文句なし!有料DLCのやり方には文句しかない! 『じんるいのみなさまへ』 ・発売:日本一ソフトウェア、開発:アクワイア
プレイステーション4用ソフト :2019年6月27日発売
Nintendo Switch用ソフト :2019年6月27日発売
※ Nintendo Switch本体機能でのスクリーンショット撮影○、動画撮影○ ・ガールズアドベンチャー
・セーブスロット数:4
VIDEO 私が1周クリアにかかった時間は約
18 時間でした
有料DLCの2周目は既読スキップを使いまくって、1+2周合計で約
27 時間かかりました
※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください 【苦手な人もいそうなNG項目の有無】 ※ この記事 に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。 ※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。 ・シリアス展開:
△(重い設定もあるけれど、終始明るい展開です) ・恥をかく&嘲笑シーン:
×(失敗することはあるけれども不快レベルではない) ・寝取られ:
× ・極端な男性蔑視・女性蔑視:
○(男性は存在しません、そんな生物はいません) ・動物が死ぬ:
△(グロ描写はないけど動物を捕らえて食するサバイバルなんで) ・人体欠損などのグロ描写:
× ・人が食われるグロ描写:
× ・グロ表現としての虫:
× ・百合要素:
○(「恋愛感情」はハッキリ描かれてるけど「肉体関係」とかはない) ・BL要素:
× ・ラッキースケベ:
△(CERO:Bなのはシャワーシーンのことか?) ・セックスシーン:
× ↓1↓ ◇ 「女のコ達が無駄話をするだけ」、それこそが楽しいんだという執念で作られたゲーム このゲームは「日本一ソフトウェア」と「アクワイア」のコンビで作られたガールズアドベンチャーです。
「アドベンチャーゲーム」という言葉で『ゼルダの伝説』とか『トゥームレイダー』みたいなアクションアドベンチャーを想像してしまう人もいるかもですが、『逆転裁判』とか『ひぐらし』みたいなテキストアドベンチャーの方が近いです。
言っちゃえばノベルゲームですし、「ソシャゲのストーリー部分」と言った方が若い人には分かりやすいかも知れません。 PS4とNintendo Switchで出ていますが、私がプレイしたのはNintendo Switch版の方ね。
「日本一ソフトウェア」という会社に対して、
「インディーゲームをフルプライスで売る会社」 と表現している人がいて言い得て妙だなと思いました。その表現をした人は恐らく、ダウンロード専用ソフトとして2000~3000円で買えるクオリティのものを定価7500円のパッケージソフトで売る―――という皮肉で言ったのだと思いますし、私もまぁ同意する部分はあります。
開発費は抑えているのに、販売価格は抑えねえのかよ とは思います。
ただ、それは見方を変えれば
「他の大手メーカーがやらない挑戦的なゲームを作ってパッケージソフトとして売る会社」 とも言えると私は思うのです。挑戦的なゲームだから万人受けはしないし、大失敗することもあるけど、刺さる人には刺さる―――
「インディーゲーム」という単語を、「安いゲーム」と捉えるか「挑戦的なゲーム」と捉えるかで、その意味は180度変わるんですね。
『じんるいのみなさまへ』は本当にハートフル日常系百合なのか、百合愛好家が菅沼Pを小一時間問い詰めてみた 発売前のプロデューサーのインタビューを読むと、その辺りのことも語られています。
日本一ソフトウェアには『ディスガイア』のような本流と、
「ある一部分を尖らせた、チャレンジングな性質のゲームを作る」 という2つの方向性があって、このゲームは後者だったと。しかし、後者の代表例は『嘘つき姫と盲目王子』とか『世界一長い5分間』なんかだと思うのですが、今回はその中でも特に尖った企画らしく社内では全く賛同されなかったそうなんですね。
その尖った企画というのが
「百合」 。
「百合」とは、女性同士の関係性を主題として描いた作品のことで―――漫画・アニメなんかでは「ガッツリと女性同士の恋愛を描いたもの」から、「女のコが集まってイチャイチャするだけのライトのもの」までたくさんあります。特に、『けいおん!』とか『ゆるゆり』のアニメがヒットしたあたりからライトな百合は「日常系アニメ」として一大ジャンルになったと言えます。
しかし、ゲーム業界―――特にゲーム機用のゲームソフトでは「百合ゲー」なんてほぼ存在していません。
たまたま『じんるいのみなさまへ』と『夢現Re:Master』が同じ月に出たから世に百合ゲーがたくさんあるように錯覚するかも知れませんが、工画堂スタジオですら『白衣性恋愛症候群』が2011年、『白衣性愛情依存症』が2015年、『夢現Re:Master』が2019年ですから、
4年に1本くらいのペースでしか「百合ゲー」って発売されないんですよ。 だから、一百合好きとしての意見を言わせてもらえれば、まずは
「発売してくれてありがとう」 なんです。売れそうにないどころか、そもそも市場が存在していないニッチなところを開拓してくれようとしたワケですから。
このプロデューサーさんは学生時代から百合姫を買っているくらいの百合好きだったそうなのですが、社内で誰も「百合」が分かる人がいない―――からの、企画を通して、開発をしていく過程は大変だったろうなぁと思います。まぁ、
それでもゲームとして許せないところはありましたが(笑)。 <画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 「百合ゲー」なんだから、一番重要なのは「どんなキャラクターが登場するのか」でしょ!ということで、ここからは登場する女性キャラクターを紹介します。まずは、主人公
「榛東 京椛(しんとう きょうか)」 ちゃん。おばあちゃんっこなため妙に知識が古臭い、アニメオタク。
いわゆる「アホの子」系の主人公で、明るいムードメーカーです。
タイプ的には『けいおん!』の平沢唯とか、『ゆるキャン△』の各務原なでしこの系統なんですが、みんなからイジられるタイプなので『ごちうさ』のココアちゃんが一番それっぽいかと思っていたのですが、プロデューサーが『ゆるゆり』好きということを踏まえると赤座あかりなのかも。なんだかんだ、私はきょうかちゃん推しです。
アニメ好きという設定なんだけど、序盤以外にそれをにおわせることを言わないので「シナリオ書いた人、あまりアニメ詳しくないと見た……」と思ってしまいました。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> ネタが微妙に古いし!
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 恐らくこのゲームのキャラクターで人気投票をしたら1位になるであろう、ゲームオタク
「菓子 永里那(かし えりな)」 ちゃん。
背が小さくて釣り目で、全体的に猫っぽいカンジなので、『けいおん!』のあずにゃんとか『ごちうさ』のチノちゃん系統なのかなと思いきや……そちらは有料DLCの朱香さんの担当で、えりなちゃんはノラリクラリとみんなにツッコミを入れていく『バンドリ!』の青葉モカとか『少女終末旅行』のユーリみたいなキャラでした。
シナリオを書いている人も同じようにゲーム好きなんだろうなーと思うくらい、
普段の言動から自然にゲームネタをはさみこんでくる のが好きなところ。テンプレのヲタクキャラじゃなくて、普通にゲーム好きの女のコってカンジなんですよね。まぁ、ちょっと知識が「本当に13歳ですか?」と言いたくなるくらい昔に偏ってはいますが(笑)。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> <画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 続いては、おっとりおっぱい
「少弐 勇魚(しょうに いさな)」 ちゃん。
女のコ達が4~5人集まるアニメでは必ず一人はいるであろう、「おっとりしていて」「おっぱいが大きい」「母性あふれる」キャラです。『けいおん!』で言えばムギちゃんとか、『がっこうぐらし!』で言えばりーさんとか。
その溢れる母性を活かして、このゲームでは料理担当を一手に担うのだけど、ひたすら前に突き進むメンバーと比べて自分が役に立っていないんじゃないかと不安になってくるという側面も描かれます。このポジションのコが一番闇が深いというのは伝統なのかも知れない。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 体力担当が
「小松 和海(こまつ かずみ)」 ちゃん。どうしてこのコだけ平々凡々な名前なんだ……というのは、特に伏線でもありませんでした。『デスノート』みたいな際どいテーマを扱う作品は「実在の人物と名前が被らないように突飛な名前を付ける」ことがよくありますが、このコだけ「よくある名前」なんですよねぇ。
ボーイッシュで、でもおっぱいは大きいという、『きんいろモザイク』の猪熊陽子や『となりの吸血鬼さん』の夏木ひなた系のキャラですね。背が高くて体力があるだけじゃなくて、キャンプ知識があるというスーパープレイヤー。遭難したときには一人は欲しい逸材です。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 頭脳担当が
「邑楽 幽々子(おうら ゆゆこ)」 ちゃん。
年少組だけどクールで頭が良くて、トラブルの解決方法をしっかり考えてくれる学者タイプのキャラです。あまり日常系アニメにはいないタイプのコかなぁと思いましたが、『となりの吸血鬼さん』のソフィーとかはそれっぽいか。
所持アイテム一覧のところの解説なんかは、彼女の口調なんですよね多分。
このコがいなかったらどうなっちゃっていたんだろうというくらいのMVPなのだけど、有料DLCでは上位互換みたいな朱香ちゃんが出てくるので活躍の場を半々に分けられるという可哀想な目に合います。朱香ちゃんについては後で書きますが、やっぱり有料DLCは失敗だったんじゃないかって思いますわ。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 本人も言っている。
ということで、キャラクターは日常系アニメっぽいキャラが揃っていて。
「女性同士の恋愛をガッツリ描く」百合作品というよりかは、「女のコがたくさん集まってみんな仲良し!」という日常系アニメに近い作品だと思います。
実際、先のプロデューサーのインタビューでも『けいおん!』や『ゆるゆり』、『ゆるキャン△』なんかを楽しんでいた(る)人に向けたと書かれていますし、そういった日常系アニメの主人公になれるというコンセプトのゲームだと思うんですね。 『ゆるキャン△』って百合かなぁ って話をし始めると、5時間くらいかかりそうなのでやめておきます(笑)。
カップリングは固定で、「プレイヤーの行動によってくっつくカップルが変わる」みたいなことはありません。ストーリー展開も(有料DLCを除けば)一本道です。個人的にはゲームなんだから自由にカップリングを選ばせて欲しかったんですけど、マルチシナリオを実装するような開発期間はなかったんでしょうね。そこはホント残念……
メインストーリーはフルボイスで、声優さん達は正直名前を聞いたことのないような方ばかりだったのですが、みなさんしっかり上手いし、
「初めて聴く声」だからこそ「この作品にしか存在しないキャラ」に聴こえる というのは日常系アニメでもよくあるキャスティングかなと思います。終盤のきょうかちゃんの演技がね、すごく良くてね……
開発中に社内で「このゲームは無駄話が多すぎないか?」と言われたそうなんですが、「そういう日常的な会話を楽しんでもらう作品なんだ」と押し切った執念は見事だったと思います。
ゲーム機用のゲームじゃないですけど、スマホ用で大ヒットしている『バンドリ』なんかは「今日は買いたかったパンが売り切れてた」みたいな心底どうでもいい話を女のコ同士がしているのを眺めるのがホーム画面だったりしますし……
「無駄話」にこそ百合が宿るんですよ! それなのに、百合に理解のない人間が「女が喋っているだけで中身がない」とか言ってくるのは、それこそ『けいおん!』のアニメがヒットした10年前に出てきた「ストーリーがない」「成長を描かなければアニメではない」みたいな10年遅れの価値観なんですよ!
ゲーム業界は(百合に関しては)10年遅れている! ということで、基本的には「女のコ達がイチャイチャするのを眺めるノベルゲー」で、百合好きとしてはそのコンセプトを絶賛したいのですが……ノベルゲーとして致命的な欠点がありまして、このゲーム
「セーブが各章の終わりか1日の終わりにしか出来ない」 んです。会話の途中でセーブ出来ないんですね。
特にどこにでも持ち運べるNintendo Switchなら、空き時間にちょっと起動して読み進められるからノベルゲーとの相性が無茶苦茶イイはずなんですけど……このゲームは好きなタイミングでセーブが出来ないため、「空き時間にちょっと起動する」のが難しいのです。
スリープモードを使えばええやんってことなのかも知れませんし、実際自分はスリープモードをフル活用してちょっとずつ読み進めてクリアしましたが、そうすると「他のゲームと並行して遊ぶ」ことが出来ないんでストレスになるんですよ。おかげで『スーパーマリオメーカー2』ほとんど起動できなかったよ!
『バイオハザード』みたいに「セーブするタイミングを考える」ことまでゲーム性に落とし込んでいるのならともかく、そうでないなら「セーブできるタイミングが限られている」ことがプレイヤーにとってプラスに作用するところは1ミリもありません。
開発期間が短いとか言い訳にならず、ノベルゲー作るなら「どこでもセーブ」はマストで実装しなきゃいけません。 料理自体は美味しいのに、「お皿を買ってくる時間がありませんでした」とテーブルの上に直で盛り付けてくる料理屋くらい、「自分達の良さを台無しにしている」ところですからね!
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 1日の終わりに「セーブしますか?」と聞かれるのをスキップして必ずセーブすることを「オートセーブ」と言い張って、オプションでオン/オフ出来るとかドヤ顔で言ってくるのも神経を逆なでしてくれる。それを世間では「オートセーブ」とは言わないですよ……
セーブデータ周りではもう一つ許せないことがあって……エンディング後にセーブしたデータは「2周目のオープニングから始まる」セーブデータになるため、クリア直前の世界を歩き回りたい場合はセーブデータを分けておく必要があります。
これはまぁ許せるのですが、有料DLCのルートだと最終日のセーブデータは「エンディングを見る」以外のことが出来なくなります。
有料DLCルートではクリア直前の世界を歩き回りたい場合は「最終日の1日前のセーブデータ」を分けて保存しておかなくちゃならないのです。 初見でプレイしていたらいつが最終日かも分からないし、セーブデータ4つしか保存できないのにいちいち細かくセーブデータ分けられないでしょ!
そのため、せっせと集めたレシピや、つくった料理の一覧も、全部確認できなくなってしまいました。 「女のコ達の日常を楽しんで欲しい」というゲームなのに、強制的に日常が終わるという。
セーブデータ周りはプレイしたら真っ先に不満に思うところだろうに、
クロスレビューで酷評したファミ通はこういうところに触れない んですよね。「遊ばずにレビューしたんじゃないの」とまでは言いませんけど、ユーザー目線に立ったレビューだとはとてもじゃないけど思えませんよ。
↓2↓ ◇ 荒廃した秋葉原でサバイバルをする――のは、プレイヤーじゃなくてキャラクター達 「女のコ達が4~5人集まってイチャイチャする日常系アニメ」と言っても、例えば『けいおん!』だったら「バンド」、『ごちうさ』だったら「喫茶店」、『ゆるキャン△』だったら「キャンプ」と、作品によって描いているものは違います。
「日常系アニメのようなゲーム」を目指して作られた『じんるいのみなさまへ』が描いているのは、ズバリ
「サバイバル」 です。
自分達以外誰もいなくなった世界で、力を合わせて生きていこうというストーリーなんですね。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> なので、「誰もいなくなった街」を歩き回る探索パートというのがあります。
舞台となるのは秋葉原で、『AKIBA'S TRIP』などを開発してきたアクワイアの開発なので、荒廃した秋葉原が3Dマップで作りこまれています。ホテルの外に出たら、街の端から端までシームレスで移動可能。『AKIBA'S TRIP』では「この店、ゲーム内ではまだ○○だけど、現実ではもう潰れて△△になっちゃったんだよな」みたいなこと言われていましたが、『じんるいのみなさまへ』なら大丈夫!全部の店が平等に潰れている!(笑)
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 秋葉原なので実際に秋葉原に行ったことのある人はもちろん、行ったことがない人も「この景色は『ラブライブ!』で観たことある」とか「ここにあの駿河屋ゲーム館があったのか」みたいな楽しみ方が出来ます。
写真は「ガンダムカフェ」の跡地、
『ガンダムビルドダイバーズ』ではすぐそこの階段でリクとチャンピオンが喋っていた っけ。
という探索パートの映像で「このゲームはガチなサバイバルアクションゲームなのか」と勘違いしてしまい、「自分には難しそう」と尻込みしてしまう人だったり、逆に
『7 Days to Die』 みたいなゲームだと期待していたのに全然ちがったという人だったりが続出してしまったみたいなんですが……
このゲーム、基本的には「ノベルゲー」で、探索パートは「目的の場所に着くとストーリーが進行するだけ」くらいに捉えてイイと思います。 <画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> あの黄色い光が、「ストーリーが進行する場所」です。
ストーリーを読んでいれば「次に行くべき場所」は説明されますし、もし読み逃しちゃってもLボタンを押せば「○○に行こう!」と教えてくれるので親切。
「荒廃した秋葉原で自給自足のサバイバル生活をしなくてはならない」のですが、食料調達や道具の作成、インフラの整備なども
ストーリーを進めるだけでキャラクター達が全部やってくれます。 プレイヤーがあれこれ悩んだりする必要はありません。
だってこのゲーム、「日常系アニメみたいな百合を楽しむゲーム」ですもの。襲ってくる敵もいなければ、シビアな食糧管理なんかも必要ありません。
ゲームが下手な人が遊ぶと女のコ達がズタボロになっていって最終的に餓死するみたいなゲームだったら、ちっとも「日常系アニメ」っぽくないじゃないですか! まぁ、後半は大雑把な場所しか指定されず、どこに行けばイイのか分かりづらいところは不満なのですが……その根本的な原因が。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 「黄色い光」が背景に溶け込んで見つけづらい! いや、マジで、どうしてこんな色にしたの……もっと見やすい色にしようよ。レインボーカラーにしてキラキラ光って遠目にも見つけやすいくらいで丁度イイでしょう。お店探索と色が被っているし。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 逆に、ファミ通のクロスレビューなどで批判された「地図に現在地が表示されない」というのは、それを受けて
公式でもパッチで追加するとアナウンスしている のですが……個人的には、
それは雰囲気ぶち壊しなのでは と思いました。
このゲームは、「スマホなどの電子機器がなくなった世界」で地図と地形を見比べて探索することによって、ゲームが進むにつれて「どんどん街の構造を覚えてくる」「庭のようになってくる」ところにプレイヤーとキャラクターの一体感があるというのに―――
「他のゲームではマップに現在地が表示されるのが普通だから」って理由で、そこを批判するファミ通のゲームセンスのなさよ! 他に批判するところあるでしょ!よりによってそこかよ!
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 「移動速度が遅い」という批判はまぁ分かる。
大して運動神経も良くなさそうなきょうかちゃんの移動速度ならこんなもんだとは思うので、移動速度を上げるよりもファストトラベル機能を付けて欲しかったとは思います。
欲を言えば、ゲームが進むことで「自転車」とか「馬」とかを入手できるようになって、それで移動速度が上がる―――みたいな要素があれば完璧だと思うんですが。
このゲーム、開発の予算がなさすぎて主人公のきょうかちゃん以外の3Dモデルが作れなかったくらいなんで。 「自転車に乗るモーション」とか「馬に乗るモーション」とか、とてもじゃないけど作れなかったのでしょう。
出来ることならば、きょうかちゃん以外のキャラも3Dモデルを作ってそうしたキャラが街を歩いているみたいなこともやって欲しかったですよねぇ。畑に行けば和海が農作業をしていて、川に行けばえりなちゃんとゆゆちゃんが釣りしてて、ホテルに戻ったら勇魚さんが夕食の下ごしらえをしている――――そうした日常を見せてくれたら、もっと「日常系アニメっぽいゲーム」になったと思うんですけどねぇ。
その代わりと言っちゃなんだけど、きょうかちゃん以外に連れ歩く2人を選ぶことで歩いている最中にその2人が会話する要素はあります(ボイスはなし)。これ、地味に
「どのキャラとどのキャラの組み合わせか」と「今ストーリーが何章か」で会話内容が変わる という優れものなのですが……パターンがそれぞれ2~3ずつしかないので、同じ会話を延々とループして読まされるという。
ここはマンパワーで頑張るところでしょ!
こういうところこそ『バンドリ』とかやって見習ってほしかったです。
特定キャラと特定キャラを連れている時に特定の行動をすると特殊イベントが起こるという要素もある みたいなんですが、自分は朱香とえりなちゃんで釣りをした時に1回見ただけです。他のキャラの組み合わせでもあったのかも知れないけど、メンバーの入れ替えも1日の終わりにしか出来ないので組み合わせを試しづらいんですよねぇ。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 多くのオープンワールドゲーが「目的地に着けばストーリーが進行する」「けど、横道に逸れて延々とサブクエストをクリアしたりも出来る」みたいなカンジで、このゲームも
「メインストーリーを進める」ことを無視して秋葉原を自由に探索することが出来ます。 <画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 「お店の探索」「畑での作業」「釣り」などは、素材や食材が手に入る代わりに時間を消費します。これによって探索時間が12時間を超えるとホテルに強制的に戻されて1日を終えます。
1日の最後に料理を作れないと翌日「空腹状態」で探索に必要な時間が倍になるというペナルティを受ける ので、メインストーリーから逸れた横道の遊びとしては「毎日の食事を作れるくらいに食材やレシピを集めて色んな料理を作る」のが目的になりますかね。
ぶっちゃけ探索時間が倍になるペナルティを受けても、探索せずにメインストーリーを進めればイイし、イザとなったら大量のカップラーメンもあるので、ペナルティは激ゆるですけどね。
いろんな食材を集めていろんな料理を作っていくのは、それなりに楽しいです。『牧場物語』系のゲームでも「あの食材が手に入ったら、この料理もこの料理もこの料理も作れるようになる!」という楽しさがありますが、それに近いものがあります。ただ、
素材に関しては一部の消耗品以外はほぼ何の役にも立ちません。 <画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> というのもこのゲーム、
「ノベルパート」と「探索パート」が上手く噛み合っていない んです。序盤から自由に「探索」して大量に持っている素材も「ノベルパート」のストーリーでは持っていないことになっていて、「○○を作るためには××が必要だから△△にないか探しに行こう!」と大量の××がアイテム欄にあるのに言うんですよ。頭にメガネ載せながら「メガネメガネ」言う人かよ!
ただまぁ、こういうこと自体は他のゲームでもよくあって……『The Escapists2』でも「既にそのアイテムは持っている」のに「指定された場所にあるアイテムを取ってこなくちゃいけない」仕様だったため、既に持っているこれじゃダメなのと思ったものでした。だから、あまりそこを批判したくはないのですが。
でも、100円玉硬貨だけは「ノベルパート」と「探索パート」がしっかりと連動して、あれだけ大量に貯めた100円玉硬貨がストーリーの都合で全部なくなったのは許してねえかんな!
プレイヤーの都合のいいようには連動しないのに、都合のわるいようには連動するダブルスタンダード! この辺が「遊ぶ人の気持ちに立ってゲームが作られていない」と思ってしまうところです。
強制的に100円玉を全部失うことによってゲームが面白くなったと思いますか? と訊きたい。
「メインストーリー」を進めずに、秋葉原中を「探索」して遊ぶ要素がある―――と言っても、このゲームだと料理は1日1つしか作れないし、作った効果も「採取量が1.1倍になる」みたいなショボショボなものだったりで、あんまりカタルシスがないんですよね。
例えば『ルーンファクトリー』みたいに作った料理を複数持ち運べて、探索中に「○○を食べて移動速度アップ!」「××を食べて釣り効果4倍!」「△△を食べて畑の収穫量が10倍だー!」みたいにガンガンパワーアップしていけば楽しかったと思うんですけどね。
あとは「作った料理で図鑑が埋まっていく」とか「釣った魚で図鑑が埋まっていく」みたいな要素があるとか、他のキャラがメインストーリーとは関係ないサブクエストを出してくれるとか、そういう目的があったならもっと横道に逸れるのも楽しかったと思うのですが……そういうものもありません
(PS4版には一応「料理をたくさん作る」みたいなトロフィーがあるし、今までにどの料理を作ったのかは料理一覧の画面から見ることはできる) 。
一つ一つの要素は良いのに、それが上手く噛み合わなかったというか…… 「ゲームとしてどう遊ばれるのか」の完成したビジョンがないまま作られたような気がします。
それとも実装させるはずの仕様が、開発期間の短さで実装できなかったとかですかね。もったいない作品でした。
↓3↓ ◇ ストーリーには文句なし!有料DLCのやり方には文句しかない! このゲーム―――「ダメなところ」「行き届いていないところ」を挙げればキリがないんです。
しかし、じゃあ「ダメなところしかないゲームなのか」と言ったらそんなことはないし、冒頭から書いているように日常系百合ゲーという「他のゲームにはやらなかったことをやろうとした」ことは確かですし、ストーリーは文句なしで良かったと思います。
そういや、夏から始まるアニメには「無人島で遭難したり」「宇宙空間で遭難したり」「世界中の人が石化したり」、サバイバルものがやたら多いのですが……
“他に頼れる人がいない”状況で限られたキャラクター達が試行錯誤して生き延びようとする話は、やっぱり面白いんですよ。 <画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 『じんるいのみなさまへ』もそうです。
「魚を食べたいけど、魚を捕まえられるような網がない」→ いろんなお店を探索→ 「ハンモックで代わりにならないかな!」と、生活に必要なものを秋葉原にあるもので代用したり作ったりするのが楽しかったです。
そうしてみんなで力を合わせて生きていく内に、一人一人に劣等感だったり憧れだったりが芽生え、感情が少しずつ変化していくものを描いているので……
「サバイバル」と「百合」を上手く組み合わせたストーリーになっていた と思われます。ネタバレになるので何かは言わんけど、大量のアレも良かったです。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> そして、誰もが気になるであろう「どうして秋葉原に誰もいなくなっていたのか」という世界の謎も――――序盤からガンガン伏線が張られて、先が気になるストーリーになっていました。
プロデューサーのインタビューによると「日常系の百合はゲームとは相性が悪いので、大きな物語として謎で引っ張ることにした」とのことで、実際
「百合」に興味がない人も「序盤は女が喋っているだけで退屈だったが終盤の謎が明かされていく展開は面白かった」という感想の人をチラホラ見かけた ので狙い通りだったのかなと思います。
「ノベルパート」と上手く噛み合っていなかった「秋葉原の探索パート」も、あのメインビジュアルがなかったら買っていなかったという人も多いだろうし、百合ゲーの今の市場規模では「百合以外の要素」を売りにしなきゃいけないんだなぁとちょっと悲しくなりますけどね……
それでも、「サバイバル」「百合」「世界がどうしてこうなったのかという謎」が組み合わさったストーリーは見事だったし、自分はエンディングに向けた展開はすごく好きでした。
ノベルパートの背景がストーリーとあまり合っていないみたいな不満点がないワケじゃないですけど、低価格のノベルゲーにはよくあることですしね(このゲームはフルプライスですけど)。
だが、 有料DLC。オマエはダメだ。 このゲームの有料DLCは500円で、1周目のクリアデータがあると、
6人目のキャラが追加された「別ルートのストーリー」が楽しめる という売り文句でした。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 追加された6人目は
「朱香 CyxaЯ(しゅか すはーや)」 ちゃん。
日本人とロシア人のハーフで、12歳で大学生をしている天才留学生だそうです。
ふむふむ。
「2周目以降限定」ということは、この天才設定を活かして「1周目ではなかなか気づかなかったことに彼女が早めに気付いたり」「1周目では謎だったところが彼女がいると分かったり」するのかな?と思うじゃないですか。
そういうのはほとんどないです。 ストーリーの8割はほぼ同じ内容で、終盤のみ彼女がいることで別展開に進む程度です。確かに終盤の展開で「1周目では明らかにならかった真実が判明する」ところはあるんですけど、私は有料DLCの方のエンディングはあまり好きじゃありませんでした。エンディングに向けてのストーリーの盛り上がりみたいなのがまったくないんですもの。
そもそも、どうして有料DLCは「2周目以降限定」だったのかって話ですよ。
有料DLCを売るなとは言いません。ニッチなゲームだから、少ない購入者から更に集金したい気持ちは分かります。
でも、500円払った人に8割同じ話をもう1回読ませるってどういうことよ。 1周目の時点で有料DLCを使わせてくれたって良かったじゃないですか。終盤で選択肢によってルート分岐するようにしておけば、事前にセーブデータ分けておくとかで対応できたじゃないですか。
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> 8割同じ展開をするのに「わたくしたちは全員で力を合わせてきた」みたいに言われても、
オマエがいなくても問題のなかった1周目をオレ達は知っているぞ……! と言いたくなってしまいます。
「百合」部分のストーリーはそれなりに良かったのですが、そのためだけにもう1周遊ぶ時間が必要なことを考えるとあまりオススメは出来ませんね。
2周プレイしようとすると、「セーブできるタイミングが限られている」のと「探索パートの移動の遅さ」が更にのしかかってくるという。 自分はそれでも「1周目ではあまり作れなかった料理をなるたけコンプしたいな」と思ってがんばってプレイしたのですが、前述したように最後の最後でセーブデータがおじゃんになったので持っていた匙をぶん投げました。
このゲーム……
「コンセプト」も「キャラクター」も「ストーリー」も良かったと思いますし、
一つ一つの要素は光っているのに、盛り付け方でとことん台無しにしているゲームだなぁ と思いました。このゲームがそこそこ売れたことで、もしまた「百合ゲー」を作る機会があったなら、もうちょっと遊ぶ人の気持ちを考えて作ってほしいと思いますわ。
◇ 結局、どういう人にオススメ? <画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用> いろいろと書いてきましたが、私の不満点は……
・基本的にはノベルゲーなのに好きなときにセーブできない ・目的地に行けばストーリーが進むゲームなのに、目的地の色が保護色で見づらい ・消えた100円玉 ・有料DLCを買うと、8割同じ話をもう1回読まされる 大体この4つに集約されるので。
これらを許容できる人で、
『けいおん!』『ゆるゆり』『ゆるキャン△』などの日常系ライト百合アニメが好きな人や、「サバイバル」「百合」「世界がどうしてこうなったのかという謎」が組み合わさったストーリーに興味がある人 にはオススメです。
実際「似たようなゲームがあるか」って言われたらありませんし、唯一無二のゲームなのは間違いないです。このゲームをきっかけに「百合ゲー」がもっともっとたくさん作られるようになって、全体的なクオリティが上がってくれることを期待しています。
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