別エントリにコメントを頂いて、まぁ色々悩んだのですけど……ケジメとして思ったことは書いておかなきゃならないなと、今日はアニメのお話。しかも、「夢も希望もないよね」的な話なので……話半分くらいに読んでもらえると良いかなと思います。
違法コピーの話はややこしくなるので割愛。
“合法な部分だけ見てもこんなに大変なんだよ”という話を今日はしていきます。
○ アニメのDVDは何故高い? 既得権益だとか中間搾取だとかは、難しすぎてよく分かりません。漢字も書けません。
でも、単純に「人間の労働時間」だけを見てもアニメ制作(製作)というのは費用対効果が悪すぎると思います。
喩えば、週刊漫画なんかの場合は6~7人で1週間かけて1話を作りますよね。隔週連載の場合は2週かけて、月刊連載の場合は1ヶ月かけて。もちろん休日とか連載前の準備期間もありますが、描く時間=掲載ペースというのが基本原則なはずです。
で、アニメの場合。現場を観たことはないので聞きかじりの情報ですが、1話分のアニメを作るのに必要な時間は3ヶ月間くらいだそうです。話を考える人、脚本を書く人、演出する人、絵を描く人、それらを仕切る人等等……その間に動く人数が漫画の比ではないのは、EDのクレジットを観れば分かるでしょう。これらを複数チームのローテーションで回して何とか週1になっているという。
しかも、これがテレビ上では30分で終わってしまうワケです。3ヶ月間、生活をかけて大人達が走り回った結果が30分なのだから……これが儲かるワケがない。
DVDを売らなければ採算が合わないビジネスモデル――― 僕個人としては「違法コピー」は問題を表面化させただけであって、元々の問題はもっと根が深いと思うのです(もちろん“違法”である限りは“違法”ですから賛同も利用もしませんけど)。
だってさ……ロボットアニメを見てロボットのプラモデルを欲しがるかつてのビジネスモデルとはワケが違うのですよ。
DVDって基本的に「テレビで観た話をもう一度観る」ためのものじゃないですか。(放送地域の話とかもあるんですが、あくまで“基本的には”ね)しかも、ほとんどの家庭では録画機器があるだろうにですよ。
僕だってアニメDVDを何本も持っていますけど、やっぱりそれは“自分にとって特別な作品”とかに限定してしまいます。でも、この山ほどあるアニメのほとんどが「DVDを売る」前提でビジネスとしてやっていることに、絶対どこかで破綻するよなぁ…と不安を覚えてしまうのです。
○ DVDを売るためのアニメ 話が突然横道に逸れる上に、恐らくほとんど賛同を得られない話なんですけど……
DOCOMO2.0のCMが好きです 2.0の機能には全く魅力を感じませんし、現にDOCOMOユーザーがどんどん減っている現状な上に、プライドもへったくれもないキャスト偏重のCMだと分かっているんですが……CM自体は、「商品の魅力」を分かりやすく寸劇に落とし込んでいる良いCMだと思うんですよ。
昨日観たのは、浅野忠信が長瀬智也に「オマエの家に携帯忘れてない?」と電話するパターン。排気口とか下駄箱の裏も探せという浅野に長瀬が「こんな狭いトコに携帯入りませんよ」と言うと、「オレの携帯は薄いから入るんだよ」と言う。
別に僕が説明するようなことじゃないですけど、「DOCOMO2.0の携帯は今までの携帯よりも薄い」ことをアピールしているんですよね。
「携帯が薄くなりすぎると何処にいったのか分からない」ということもアピールしてる気がするんだけど(笑)、僕はこういうCMが好きです。
CMってスポンサーの商品を「欲しい!」と思わせようとするものですよね。
アニメも同様で……喩えば、つい最近『ガンダム』の総作画監督をやっていた安彦さんが「ガンダムが合体するのは玩具会社のためだった」と仰っていましたね。当然のことです。ロボットアニメとは、ロボットのプラモデルを売るためのアニメだったんですから。
『ガンダム』でも『Zガンダム』でも『ガンダムZZ』でも、毎週のように試作型の敵ロボット(=モビルスーツ)が出てきてやられるのは、敵ロボットの数だけ玩具やプラモが作れるからという理由だけです。当時はそういうビジネスモデルでしたから、別に何もおかしくありません。
※ 7月19日追記:コメント欄にて、『ガンダム』放映時のスポンサーはバンダイではなくクローバーで、クローバーはプラモデルを出していないとの指摘を受けました。また、どうやら参考記事なんかによると、『ガンダム』のやられメカが多数登場するのはやられメカの玩具を売りたいのではなく、異形のやられメカと戦うガンダムの玩具を売る戦略だったみたいですね。
「ザクレロなんか出してオモチャが売れると思ったのか」という長年の疑問が氷解しました。一部記事を修正しお詫びするとともに、疑問に気付かせてくれたご指摘に感謝したいと思います。 翻って現在のアニメ。もちろんDVD以外にも主題歌CDやら挿入歌CDとかキャラソンCDとかフィギュアとかもあるんですけど、ビジネスモデルの中心にDVDがある限り―――“より沢山のDVDが売れるような作品”を作っていくことになります。
初回封入特典やオーディオコメンタリーを付けたりなんかは基本ですね。テレビ版では乱れていた作画を直したり、テレビ版では規制されていたエロイ絵が解禁されるなんて「あざとすぎないか?」という方法も使われていますね。
ただ、もっと露骨なのは「何度も観ることを前提にストーリーが作られている」ことだと思います。 『電脳コイル』の話を振られたのでハッとしたんですけど、1周目では絶対に気付かない伏線(それを伏線と呼ぶかは人それぞれだと思うけど…)ってアニメだと異様に多いですよ。
僕は基本的には1周しか観ない人間なのでほとんど気付きませんし、気付かないものはどうでも良いと思うんですけど。『舞-乙HiME』2周目を観た時に、(終盤まで明らかにならない)主人公達の出生の秘密が序盤に暗示として描かれていたことに驚きました。「いやー凄いね!吉野弘幸ってこんなところにも伏線入れるなんて天才だね!」ということではなく、
「これって視聴者が全部観終った後に2周目を観ることを考えて作っているんだな…」と。
もちろん、あのシーンを観て1周目から二人の出生の秘密に気付いていた人もいるでしょうし、そういう人には「推理小説でも書きなよ」と思うんですけど。
基本的に創作って「1度観て理解できないものは作るな」と口を酸っぱく言われるものなんですよ。喩えば、今週のジャンプないしマガジンなどの漫画雑誌でアナタが“2度読み返したもの”ってどれだけあるかって話です。“2度読み返すもの”って“1度目が面白かったもの”なんですよね。
何度も読んでもらうことを前提に漫画を描いてはいけないというのは漫画描きの基本なんですよ(『ワンピ-ス』みたいに伏線だらけの漫画も、1周目が面白いからこそ読んでもらえるのですからね)
そう考えると……“2周目を観てもらう”ことを前提にしているアニメって変ですよ。「分かる人だけ分かれば良い」領域に踏み込みそうな危うさを感じてしまいます。
以前に、僕が尊敬するあいばたんが
「思考力を必要としない娯楽」という記事を書いていて興味深く読ませてもらったのですが……僕としては、もっと単純に「瞬間視聴率を0.1%でも上げたいNHK朝ドラ」と「DVDを1枚でも多く売りたいアニメ」のビジネスモデルの差だと思うのです。
まぁ、『ガンダムSEED』の場合はヲタク向けアニメの中でも「今日初めて観た人でも楽しめる」ように配慮しようとしたから話がややこしいんですけど……
アニメがこのまま「DVDを売るための作品」であり続けていけば、どんどん「今日初めて観た人でも楽しめる」娯楽ではなくなっていくと思うんですよ。敷居が高くなって、パイが増えないのにパイがどんどん減っていく。
今この瞬間にはアニメDVDを買ってくれるお兄さんやお姉さんだって、家庭を築いてお父さんやお母さんになってしまえば財布の紐も固くなってしまいます。「ヲタクは家庭など築かない!」と言うのならば、少子化がどんどん進み新しい顧客が増えていきません。
破綻するのが5年後か、20年後かの差というだけで……このままじゃいつか絶対ビジネスとして成り立たなくなる時が来てしまうでしょう。
……と、ここまで話ので勘の鋭い人は「いつかどこかで通った道のような気がするなぁ」と思うことでしょう。
てゆうか、記事タイトルに書いちゃったしな。 そうなんです。これって、ニンテンドーDSが出る前のゲーム業界に似た状況なんですよ。
○ 何故、任天堂は『脳トレ』を作れたのか あ……念のため言っておきますけど、「アニメDVDを買わない人」も「中古ゲームを買う人」も批判をしたいワケじゃないですよ。それも一つの選択肢なのだから、胸を張って買わなかったり買ったりしましょう。
(プレミアついて定価より高く販売されている商品を買うのは、転売屋が横行して欲しい人に行き渡らない原因にもなるので、個人的には辞めてくれとは思いますけど……)
ここで話したいのは業界の構造の話。
ゲーム屋さんにとって新品よりも中古で売った方が利益が高いらしいのですが、メーカーからすると中古市場に流れると“売れるはずだった新品が売れずに1円も儲からない中古が売れてしまう”と百害あって一利なしな気分なんですよね。中古で安くなるのを待つために新品を買わない人も出てくるでしょうし。
なので、ゲームメーカーは「中古屋さんに売られない」作品を作ろうとします。
RPGなんかは「さっさとクリアして中古に売ってしまおう」という人も多いですから、クリアまでの時間を長くするとかの工夫がされてきましたよね。他にも、クリア後にアイテム集めなどのやり込み要素を用意するとか、2周目のプレイにオマケ要素が付くとか、1周だけではストーリーの全容が分からないとか。
とにかく1本のソフトにかかる時間を増やそうとしたのです。
人間の時間は有限ですから、1本のソフトにかかる時間が増えても、ゲームを遊ぶ時間は増やせませんよね。なのでソフトを買う本数が減るし、本数が減るということは「買うソフトは限定されてくる」ことになりました。
その結果、“シリーズもの”しか売れない市場になってしまい、「時間がかかるなら」とか「複雑すぎてついていけない」とか「“シリーズ”を途中からは遊べないし」とゲーム離れに繋がってしまったのです。
実際、ゲーム業界全体の売上げは97年か98年を境に縮小傾向にありました。
この負のスパイラル現象を打ち破ったのが、我らが任天堂の岩田社長なのです!ニンテンドーDSは偉大!バンザーイ!バンザーイ!!……という話をしたいのではないんですけど、現に任天堂はこのスパイラルから抜け出そうとしました。
操作方法の簡略化を始めとする「ゲーム人口の拡大」でパイを増やし、『脳トレ』などの「低コストの商品」でリスクを減らして多種多様な商品を作ることが出来たのです。
ちょっと姑息かなぁとは思いますが、DSではソフトにセーブデータが内蔵されるので中古に売りにくいというのもありますね。そもそもがライトユーザーは中古にゲームを売るという考えが薄いというのもあるか。
あ……コレは任天堂だけがやっていることではありませんが、ゲーム業界の場合は最初から海外展開を睨んで作っているというのは大きいですね。日本だけを市場に考えるよりも、全体の分母が増えるワケですから。
で、ここからが本当に言いたいことなんですけど……
何故、任天堂は『脳トレ』を作れたのでしょうね? ゲームキューブの惨敗を経験したからだとか、元々そういう路線が向いていたとか、ハード会社だから出来たとか、色々と理由はあると思います。でもやっぱ、僕はこの一言に尽きると思うんですよ。
任天堂は『脳トレ』以前から日本一のソフト会社だった 98年以降、年間のソフト売上げで任天堂は1位を守り続けていたそうです。PS&PS2に惨敗していた頃も、ゲームボーイやアドバンスで地道に。だから、資金も人材も豊富に抱えていたワケです。
言ってしまえば、任天堂にとって『脳トレ』なんて売れても売れなくても構わない商品だったのですよ。少数のスタッフが数ヶ月で作ったソフトですから、最初から期待もしていなかったと。
任天堂からしてみれば『脳トレ』がコケたとしても、『ポケモン』も『マリオ』も『ゼルダ』もありますからね。少数のスタッフが数ヶ月で作った『脳トレ』の裏で、任天堂史上最大規模の人員で4年かけて『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』を作っているというのが、物凄く分かりやすい話です。
こんなの、他の会社にはムリですよね。
プレステ陣営に惨敗し続けてきた任天堂が、一か八かの大勝負に出て大逆転した―――みたいな話にした方がサクセスストーリーとしては面白いのでしょうが、「絶対的な力を持っていた企業がリーダーシップを持って業界を広げていった」という表現の方が適切かなと思います。
アニメの話に戻します。
全てがゲーム業界と同じだとは言いませんが、やはり何処かで舵を切る会社がないとアニメ業界もキツイんじゃないかと思います。キーワードは「低コスト化」と「アニメ人口の拡大」。
アニメの場合はゲーム業界以上に難しいでしょうけど、このままのビジネスモデルが何年も続くとは思えません。
「何度も観てようやく意味が分かる奥が深い作品」を否定したいワケじゃないです。それも立派な娯楽ですし、僕としてもそういう作品の方が好きだったりします。それはゲームも一緒…何だかんだ言って僕は『FF』も大好きですもの。
でも、全部が全部そっちに行っちゃうのは危険だよというお話なのです。
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