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『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』1~5巻が面白い!/小学生だから許される「背伸び女子→鈍感男子」の猛烈アピールコメディ

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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』1巻9話より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
小学生によるせいいっぱいの恋愛頭脳戦!(ただし、一方通行)
出てくるキャラがみんないいこ(いいひと)の「やさしい世界」
大人が思い描くノスタルジックな「小学生ライフ」を堪能しよう!


【紙の本】



【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:△(恥ずかしいことは言うが、嘲笑されるシーンはほとんどない)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


↓1↓

◇ 小学生によるせいいっぱいの恋愛頭脳戦!(ただし、一方通行)

 この漫画は新潮社のWEBコミックサイト「くらげバンチ」にて、2018年から連載されているラブコメ漫画です。「くらげバンチ」では1~3話を始めとして、飛び飛びですが結構な数の回を無料で読むことが出来るので、まずはそちらからでもどうぞ。


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』2巻11話より引用>

 主人公の一人、相川姫乃ちゃんは小学4年生の女のコです。
 まだまだこどもなのに、大人ぶって背伸びしようとしているお年頃なのです。

 男子からは怖がられている(ウザがられている)「こらーっ!男子ー!」系の女子なんだけど、隣の席のオージくんのことが大好きで、ことあるごとに恋愛アピールしていきます。


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』3巻26話より引用>

 もう一人の主人公、オージくんこと堂本逢司くんは年相応におこちゃまな小学4年生の男のコです。姫乃ちゃんが立ててくる恋愛フラグをことごとく理解せず、男友達と遊んだり、ゲームしたりする方が楽しいお年頃です。

 姫乃ちゃんは恋愛ドラマなんかの定番をやりたがるのだけど、オージくんは恋愛ドラマなんか見ないから「何言っているかわからない」「何考えているかわからない」とすれちがいが発生するという。




 ということで、この作品は「男子」と「女子」のコミュニティが分断されていることの多い小学生の2人を主人公にして、「すべてを恋愛ベースで考えるオマセな女子」と「まだ恋愛が何かも分かっていない鈍感な男子」のすれちがいを描いていくラブコメ漫画なのです。

 この「両者の思惑」を読者だけが“神の視点”で両方読めるからこそすれちがいが面白い感覚は、『かぐや様は告らせたい』なんかにも通じるんだけど……あちらが(一応は)天才たちによる恋愛頭脳戦なのに対して、こちらはまだ小学4年生な上に一人は「まだ恋愛を知らない男子」でもう一人は「ただのポンコツ」なので超低レベルな恋愛頭脳戦になっちゃうのが魅力ですね。


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』3巻25話より引用>

 席替えの回で、オージくんの隣の席になろうと必死に策をめぐらす姫乃ちゃん可愛い。



 恋愛を描く作品の基本は、「好き合っている2人を如何にくっつけないように仕込むか」だと思うんですね。古くは『ロミオとジュリエット』のように、生まれた家のせいで結ばれることが出来ないとか。教師と生徒のような「恋人にはなっていけない禁断の関係」だとか。三角関係のせいで、いいところで必ずジャマが入るとか。相手に告らせるまでは、こちらからは告れないとか。

 そこで生まれたのが「鈍感系主人公」「難聴系主人公」という概念です。
 ヒロインから「好き好き」アピールをされていることは明らかだろうに、「この2人をくっつけてしまえば話が終わってしまうから」という作者の思惑で、そのアピールに気付くことが出来ない主人公のことで。自分達でそう名乗っているのではなく、読者から揶揄される言葉ですね。


 この漫画のオージくんも、究極の「鈍感系主人公」だと思うのですが……「こどもなんだから気付かなくてしょうがない」と「鈍感系主人公」であることにエクスキューズを持ってきて、逆に「鈍感系主人公に猛烈アピールを繰り返す女のコ」の可愛さと面白さをブキにしているのです。これは見事な逆転の発想だし、ある種の発明だと思いますわ。


↓2↓

◇ 出てくるキャラがみんないいこ(いいひと)の「やさしい世界」

 しかし、この作品の魅力って「ラブコメ」部分だけじゃなくて、「小学生の日常」を描いているところにもあると思うし、リアルな小学生のコミュニティを描くんじゃなくて、理想的な小学生のコミュニティを描いていると思うんですね。
 例えば「いじめ」とかはないし、小学生にだってないわけじゃない「ドロドロとした人間関係」とかもないし、基本的に出てくるキャラはみんないいこなんですね。


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』1巻9話より引用>

 男子グループの中に初めて姫乃ちゃんが混じって遊ぶ回、「女子となんか遊べねーよ」と言っていたよっちゃん・タケちゃんだけど、その後もフツーに一緒に遊んでいるのなごむ。


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』3巻20話より引用>

 その男子グループの中に混じっていつも一緒に遊んでいる女子が高岸翼ちゃん。
 女子だけど、ゲームや特撮が大好きなので男子との方が気が合うというコです。とは言え女子だし、可愛いし、「いつもオージくんの一番そばにいる女のコ」だから姫乃ちゃんからはライバルキャラとして認識されているのだけど、翼ちゃん本人は中身が男子なので全く気にしていないという。

 恋愛作品だったら定番の「恋のライバル」「三角関係」になるポジションだと思うのだけど、小学4年生なので特に争うことなく一緒に遊んでいて、姫乃ちゃんの妄想の中でしかライバル扱いになっていないのが面白いところです。。



 さっきの「いじめ」も「ドロドロした人間関係」もない小学生のコミュニティという話に絡んでくるんですけど、あくまでこの作品は「姫乃ちゃん一人だけが恋愛脳で暴走する」ところを面白がる作品なので、そのジャマになりそうなリアリティみたいなものは極力排しているんですね。「いじめ」とか「深刻な三角関係」を描き始めたら、ゲラゲラ笑えなくなっちゃいますから。

 なので、翼ちゃんだけでなく他の女子達も、姫乃ちゃん以外の女子は恋愛には疎くて鈍いという設定になっているんです。実際の小学4年生の女子だったら「クラスの男子で誰が好き」とかで盛り上がりそうだと思うんだけど、姫乃ちゃん一人だけが恋愛脳の方が面白くなるし、そのためにそれ以外は「優しい世界」にしているのかなぁと思います。


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』2巻13話より引用>
 
 私がこの作品を「すげえ面白い!」と思うようになったのは、姫乃ちゃんのお姉ちゃんが出てくるようになってからです。大学生のお姉ちゃんで、美人で、「姫乃ちゃんがオージくんのことを好きなこと」も「オージくんは鈍感だからまだそれに気付かないこと」も把握しているキャラです。

 要は、読者と同じ目線=神の目線で姫乃ちゃんやオージくんを見守っているキャラで、姫乃ちゃんの暴走に対して読者の代わりにツッコミを入れてくれるんですね。まさかの読者目線のキャラが「一番の美女」という!


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』2巻17話より引用>

 私が好きなキャラは、オージくんのお兄ちゃんです。高校生。

 ある程度の大人なので「美少女と一緒に遊んでいる弟」の境遇に驚いて戸惑うも、弟をねたむことなく応援できるちゃんとしたお兄ちゃんです。弟と一緒にゲームで遊んだりしてあげてるからか、オージくんの友達たちからも慕われている……でも、同年代の女子からはまったくモテないという!

 この人も読者目線のキャラのようで、「読者以上に“恋愛”に対して過剰反応してしまう」キャラで、ぶっちゃけ姫乃ちゃんと気が合うのではと思わなくもない(笑)。


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』2巻15話より引用>

 さっき「三角関係はない」と書いちゃいましたが、登場回数の多くないイレギュラーキャラ:いとこのりんちゃんはしっかりとオージくんのことが大好きなライバルキャラです。8歳。このコの存在は「他のキャラでは起こせない展開」に持っていける反面、「この作品を壊しかねない」結構な劇薬だと分かっているからか、たまにしか出てきません。

 この作品「姫乃ちゃん一人が恋愛脳で暴走する」のが面白いところなので、恋愛脳のキャラが多くなっちゃうと成り立たなくなっちゃうんですけど……姫乃ちゃんと同レベルで暴走するキャラが2人になると、これはこれで新しい展開を見せられるんですよね。このキャラをレギュラーではなく、たまにしか出てこない親戚のコにしているのは上手い。


↓3↓

◇ 大人が思い描くノスタルジックな「小学生ライフ」を堪能しよう!

 ということで、「小学生の日常をリアルに描く」というよりかは、理想の友達・理想の兄弟・理想のクラスメイトの女のコを配置して、大人目線で「理想的な小学生ライフを描く」作品って考えると―――『よつばと!』とかに近いのかなと思います。

 今の小学生もこんなことをしているのか・言うのかは分からないけど、あー確かに自分が小学生のころはこんなことをしていた・言っていたなぁと思わせられるのです。


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』1巻番外編「高岸翼」2より引用>

 虫取りをしたり(「2億点」って表現が小学生っぽい)。 


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』3巻22話より引用>

 神社で缶蹴りをしたり。


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』4巻29話より引用>

 下校中にブロックの上とか、白線の上だけを歩く遊びをしたり。


 「小学生のころにやっていたこと」あるあるに溢れているのが楽しいのです。
 もちろん「運動会」とか「宿泊学習」とかの学校イベントも満載です。


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』2巻11話より引用>

 男子を注意する姫乃ちゃんと、姫乃ちゃんに注意されてウザがる男子達―――この時の男子の「走っていない、これはギリ歩いているんだ」って言い張り方が、すげえ小学生男子っぽくて好き。


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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』4巻34話より引用>

 『リングフィットアドベンチャー』(に限りなく近いもの)を遊ぶ回もあるのだけど、この「コロコロのランキングには載っていないけど……」「大人が買ってんだと」ってやり取りから始まるのも面白い。
 私がこどものころにはもちろん『リングフィットアドベンチャー』なんてありませんでしたが、ゲーセンのゲームとかPCゲームとか、小学生のコミュニティから見た「別の世界」ってこんなカンジだったよなーと思い出されます。



◆ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像は『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』5巻43話より引用>

 「ラブ」と「コメディ」を合わせて「ラブコメ」ならば、その比率は3:7くらいで「コメディ」寄りの作品だと思います。噛み合わない「男子」と「女子」のすれちがいを、時にゲラゲラ、時にニヤニヤ笑う作品なのだけど―――大人が読むと、そこにノスタルジーを感じて懐かしい気持ちになれる作品です。


 ずいぶん前に大人になっちゃったけど、小学生だった頃をふと懐かしがりたくなった時にオススメです!


 にしても、姫乃ちゃん……オージくんのことを好きな理由が、「足が速いから」とか「イケメンだから」とかじゃなくて、「優しいから」なのがイイよね。ここだけは小学生らしからぬ、姫乃ちゃんの大人っぽいところだと思う。


【キンドル本】

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『ワールドトリガー』1~19巻が面白い!/バトル漫画の緊張感とスポーツ漫画の人間ドラマを融合したハイブリッドエンターテイメント!

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<画像は『ワールドトリガー』3巻21話「三雲修3」より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
普段は「敵チーム」でも、侵略者と戦う時は「味方チーム」になる“日本代表”感
「超強い主人公」と「超弱い主人公」のW主人公
3Dゲーム世代による「地形を活かしたチーム戦」


【紙の本】


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:△(人が死ぬ展開は実はほとんどない。さらわれたりはするけど)
・恥をかく&嘲笑シーン:○(序盤の修には多少共感性羞恥を感じるかも)
・寝取られ:?(まだ分からない……)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:○(生身ではなく戦闘体なんだけどバシバシちょん切れる)
・人が食われるグロ描写:△(正確には食われているのではなく捕獲なんだけど)
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


↓1↓

◇ 普段は「敵チーム」でも、侵略者と戦う時は「味方チーム」になる“日本代表”感
 バレンタインに既刊全巻をプレゼントしてもらった『ワールドトリガー』、あまりに面白くてあっという間に最新刊まで読み終えて、すぐにまた1巻から読み始めて2周目もあっという間に読み終えたくらいハマりました!
 「こんな有名作品を今更紹介されても、オマエ以外は全員知っとるわ」と言いたくなる人もいるかも知れませんが、どんなことでも知らない人はいるのだから一から説明しようがウチのコンセプトなので、まだ読んだことがないという人のためになるべくネタバレしないように紹介しようと思います。


 この作品は2013年から週刊少年ジャンプで連載されたバトル漫画で、2014年~2016年にはテレビアニメ化もされました。その後、原作は作者の体調不良のために長期休載に入りますが、2018年の秋に連載再開→12月からはジャンプスクエアに移籍して月刊連載となりました。
 19巻まで読んだところ、まだまだ話は続きそうなので、葦原先生には体調にお気をつけてどんなに時間がかかっても構わないから焦らずに完結まで描き切って欲しいなと思いました。


 ストーリーは、異世界への「門」から侵略してくる「近界民(ネイバー)」と、ネイバーの技術を応用してそれに立ち向かう防衛機関「ボーダー」との戦いを描いています。主人公達が「私達の世界を守る」側のボーダーで、それを脅かす敵がネイバーと認識して読み始めてイイと思います。

 「侵略者」と「防衛者」の戦いを描いた作品と言えば、『ウルトラマン』とか『エヴァンゲリオン』とか最近では『進撃の巨人』とかたくさんあると思うのですが……それらの作品とちょっとちがう独特なところは、この『ワールドトリガー』は「防衛者」たるボーダーの隊員同士の戦いも頻繁に描くところにあります。
 それは「隊員同士がしょっちゅう揉めている」というワケではなく(そういうこともあるけど)、ボーダー内に「隊員同士でチームを組んで模擬戦を行うシステム」が出来ているからなんですね。

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<画像は『ワールドトリガー』3巻22話「玉狛支部2」より引用>


 しかし、もちろんネイバーが侵略してきた際には全ボーダー隊員が協力してネイバーと戦うことになります。ボーダー同士の戦いでは主人公達の「敵」として出てきたキャラが、ネイバーとの戦いでは「頼れる味方」になったり、逆にネイバーとの戦いで「頼れる味方」だったキャラと、ボーダー内でのランク戦でまた「敵」として戦ったりもするのです。

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<画像は『ワールドトリガー』2巻14話「三輪隊」より引用>

 例えば、主人公:遊真が最初に戦ったA級隊員である米屋先輩(よねやセンパイね、お米を売っているワケではない)――――


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<画像は『ワールドトリガー』4巻29話「嵐山隊3」より引用>

 嵐山隊と戦ったA級1位チームの出水先輩――――


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<画像は『ワールドトリガー』5巻40話「空閑遊真8」より引用>

 修にケンカを売って、遊真をブチギレさせた緑川――――


 それぞれ別のシーンに出てきた「敵」キャラと言えるのですが……

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<画像は『ワールドトリガー』7巻58話「大規模侵攻8」より引用>

 ネイバーとの防衛戦では、「頼れる味方」として3人で組んで戦ってくれるのです。


 「敵だったキャラが味方に」というのはバトル漫画の王道ですが、この作品はネイバーとの戦いが終わればまたそれぞれのチームに戻って「敵チーム」になるので―――サッカーとか野球とかで、普段はそれぞれ別のチームの選手として戦っている選手達が、W杯とかの国際大会で海外の強豪と戦う時だけ「日本代表」として集まって戦う感覚に近いと思います。

 「ジュビロのエース」と「アントラーズのエース」が日本代表ではツートップなんだから頼もしいぜ!みたいな感覚で、A級7位のアタッカー米屋先輩とA級1位のシューター出水先輩が組んでくれるんだから頼もしいぜ!みたいな。



 元々この『ワールドトリガー』という作品、「次の作品はスポーツ漫画でいくかー」と企画していたものが、編集さんから「もっと好きなことを描いた方がイイ」と言われて、考えていたスポーツ漫画の要素を取り入れたSFものとして再企画されたそうなので……スポーツ漫画っぽいテイストもかなり強いんですね。

 連載開始前に「100人くらいのキャラクターを考えた」とか、そのキャラクター1人1人に細かい設定があるとか、このキャラは普段はこの学校に通ってこっちのキャラと同じクラスだとか、このキャラとこのキャラはイトコなので呼び方がちがうとか―――作品の中には出てこない部分まで設定を作りこむことによって「世界」を作り上げている手法は、例えば『おおきく振りかぶって』とか『少女ファイト』みたいなスポーツ漫画で見られる手法で、それをバトル漫画に落とし込んでいるんですね。
 さっきの米屋先輩と出水先輩は、実は高校では同じクラスという設定のため(データブック参照、本編でも1コマだけ一緒に昼飯食べているっぽいコマがある)、お互い「弾バカ」「槍バカ」と軽口を言い合う関係だったりするという。一応言っておきますけど、この2人は別に主人公でもメインキャラでもない「100人くらいいるキャラの1人」ですからね。


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<画像は『ワールドトリガー』13巻オマケページより引用>

 コミックスのオマケページでは、各チームが作戦室をどう使っているのかという細かい設定も披露されていて面白いです(ページの一部しか撮影できず、太刀川さん見切れちゃってゴメンナサイ)主人公でもなければ、メインキャラでもないキャラであっても、そのキャラが生きているバックボーンをちゃんと感じさせるのがこの漫画の好きなところです。


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<画像は『ワールドトリガー』3巻24話「本部トップ部隊」より引用>

 好きなキャラはたくさんいるのだけど、敢えて1人だけ私の推しキャラを挙げるなら「小南(こなみ)先輩」です。美人で勉強もできてお嬢様学校に通っているというのに、すぐ人に騙される表情豊かなチョロかわ先輩。


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<画像は『ワールドトリガー』10巻81話「大規模侵攻24」より引用>

 でも、ひとたび戦闘体になると、髪型がロング→ ショートに変わって、無茶苦茶強くて頼れる先輩になるのが格好いいのです。ギャップのある女性ってイイよね。あと、この服と体型がエロすぎる。


 まぁ、エロイかどうかは置いといて……ボーダーという「ネイバーと戦う10代中心の若者が集まる組織」を舞台にしているため、先輩・後輩の関係性がちゃんと描かれるのがスポーツ漫画というか部活漫画っぽいなと思います。みんな年上にはちゃんと「先輩」って付けて呼ぶところとか、後輩を連れてご飯食べに行く場面とか、すごい好きです。


 ということで、スポーツ(観戦)が好きな人や、スポーツ漫画が好きな人は、この作品にハマる素養があるんじゃないかと思います。


↓2↓

◇ 「超強い主人公」と「超弱い主人公」のW主人公
 ということで、『ワールドトリガー』最大の特徴は「予め100人くらいキャラを考えていた」ことによって、主人公以外のキャラもスポーツ漫画のようにしっかりと生きていてしっかりと活躍するところにあると思います。しばらく主人公達が登場しない展開が続くこともありますが、それでも全然面白いですもんね。


 しかし、じゃあこの作品の主人公に魅力がないかと言われたらそんなことはないし、「100人全員が主人公」というワケでもありません。「100人もキャラを考えていた」とは言え、やっぱりこの作品は「空閑遊真」と「三雲修」の2人の主人公が中心にいるから面白いと思うんですね(作者としては、「雨取千佳」と「迅悠一」も加えた4人が主人公と考えているそうです)


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<画像は『ワールドトリガー』2巻8話「木虎藍2」より引用>

 主人公の1人は「空閑 遊真(くが ゆうま)」
 幼少期からの戦闘経験と、柔軟な発想もさることながら、超貴重な黒トリガーを持っていることで「超強いタイプの主人公」です。

 『ワールドトリガー』という作品は、「主人公だけが特別な力を持っている」のではなく「ネイバーの技術を使って作られた武器をみんなで使って戦う」ことが最初のコンセプトらしく―――ボーダー隊員が使う武器は基本的には「誰にでも使える武器の中から自分が選んだものを使っている」という設定です。
 『ゼルダの伝説』のマスターソードはリンクにしか使えないから「主人公だけが特別な力を持っている」だけど、『Splatoon』の武器は「誰にでも使える武器の中から自分が選んだものを使っている」みたいなことですね(ランクによって使ってイイ武器が違ったりもしていますが)

 ただし、それは量産できるノーマルトリガーの場合は、という話で……
 複製も量産もできない貴重な黒トリガーは使用者との相性が良くなければ起動できず、遊真の持つ黒トリガーは(恐らく)遊真にしか起動できない専用機なんですね。なので、作中でも最強クラスの強さのキャラという。


 「背は小さいけれど無茶苦茶TUEEEEEEE」という主人公は、『ドラゴンボール』の孫悟空に代表されるように少年漫画の王道と言えるのですが……
 遊真の黒トリガーは「普段は使ってはいけない」という事情があるため(詳しくは原作を読んでね!)、その能力を封印しているカンジは『ダイの大冒険』のダイの方が近いのかもと思います。そうすると、レプリカがゴメちゃんか。


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<画像は『ワールドトリガー』1巻4話「三雲修2」より引用>

 という流れで説明すると、遊真がダイだとしたら、もう1人の主人公:ポップのポジションとも言えるのが「三雲 修(みくも おさむ)」です。超強い遊真に対して、大して強くない「読者目線のキャラ」と言えるのですが……

 いや、ホントすごい。

 「大して強くない」レベルの話ではないです。

 ポップとか、その辺の「才能はなくても活躍するキャラ」と比較してはなりません。


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<画像は『ワールドトリガー』3巻23話「玉狛支部3」より引用>

 無茶苦茶弱い。ビックリするくらい弱い。
 ひょっとしてネームドキャラの中でも最弱なのでは……と思ったけど、いや、流石にボーダー隊員でない担任の先生とかよりは強いか。


 ハハーン?なるほど、実力はないけど頭を使って戦うタイプなのね。メガネだし!
 ……と思ったら、そうでもないのです。他のチームの人達だってしっかり考えて戦うため、修だけが「天才」とか「頭が切れる」みたいなこともありません。メガネをかけていなくても頭の良い人はいるのです!
 普通の漫画だったら誰か一人くらい修の才能を見抜いて「彼はきっと伸びるよ」みたいに言わせると思うのですが、それすらもありません。現時点で強くはない、今後伸びていきそうな才能もない、特別に頭が切れるワケでも、とりたてて人望が厚いワケでもありません。「超弱いタイプの主人公」の中でも、ここまで徹底して「凡人」として描かれる主人公は珍しいと思います。



 でも、ちゃんとカッコイイんですよ。
 ステータスを数値化したら全項目が最低値に近いようなキャラでも、「主人公だから」という理由で活躍させてもらえるようなご都合主義でなくても、ちゃんと読んでいる人に「こんな人間になりたい」と思わせるキャラクターになっているのが凄いです。実際、人気投票なんかでも1位になるんだから、ジャンプの読者にもそれが伝わっているという。

 それは、この『ワールドトリガー』が個人の強さだけがモノを言う「個人戦」ではなく、1人1人が役割を担うことが大事な「チーム戦」だからというのが大きいと思うのですが……それは次の項目で。


 「超強い遊真」と「超弱い修」の2人が主人公―――というのが、この作品の魅力であって、もしこれが片方しかいなかったらこんなに万人受けする作品にならなかったと思うんですね。
 「遊真」しかいなかったら「主人公だけが特別扱いされる俺TUEEEEEE漫画」みたいに言われたかも知れないし、「修」しかいなかったら「主人公があまりに弱くてカタルシスが感じられない」みたいに言われたかも知れません。作品の中でもこの2人は名コンビだと思いますが、作品を読む人達にとってもこの2人は互いの弱点を補い合う名コンビだなぁと思います。



↓3↓

◇ 3Dゲーム世代による「地形を活かしたチーム戦」
 ちょっと話が横道にそれますが、この記事をどうぞ。

 【新連載】「とある魔術の禁書目録」は”格ゲー”世代? 鎌池和馬が語るゲーム史がラノベ作家に与えた影響【ゲーム世代の作家たち】電ファミニコゲーマーより)

 『とある魔術の禁書目録』などで知られるライトノベル作家:鎌池和馬先生へのインタビュー記事なのですが、ゲームが「漫画や小説」に与えた影響についての鎌池先生の分析がすさまじいので一読あれ。

 例えば、TRPGや『ドラゴンクエスト』以後のRPGの世代は「世界」をきっちり作ろうとするのだけど。
 ポリゴンで3D空間を作るプレステ世代になると、『Dの食卓』や『バイオハザード』など「一つの洋館」や「一つの町」を舞台にした作品が多くなるため、そうした世代の作家が作る作品は「一つの町を舞台にした箱庭的な作品」が多いのではないか―――とか(実際、『とある』シリーズは学園都市という一つの町を舞台にした作品ですよね)

 そこから考えると、広大な世界の一部に降り立つMMORPGの世代が「異世界転生もの(異世界転移もの)」を作っているんじゃないかとか。ソーシャルゲームの世代からは、キャラクター周りの断片的な情報だけで楽しめるものが生まれるんじゃないか―――とか、色々考えられるのですが。


 『ワールドトリガー』に話を戻すと、この作品の作者である葦原先生は『スカイリム』などの洋ゲーが好きだとインタビューで答えているくらいかなりのゲーム好きだそうです。
 んで、このジャンルが好きかどうかはインタビューでは確認できなかったのですが、『ワールドトリガー』の「地形を活かしたチーム戦」というのは、FPSとかTPSのような「オンライン対戦3Dアクション(シューティング)」の世代の発想と思うんですね。今で言えば、『Splatoon』みたいなジャンルのゲームです(『ワールドトリガー』の連載開始は2013年なので、当然『Splatoon』より前ですけどね)

 ネイバーが攻めてきたときの防衛戦はもちろん「町」が戦場になるワケですが……ボーダー隊員同士の模擬戦になる「ランク戦」も、ネイバーが攻めてきた時のための準備を兼ねているめ、「町」の様々な場所を再現したステージの中から選ぶことになります。


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<画像は『ワールドトリガー』10巻87話「玉狛第2 2」より引用>

 「市街地」「河川敷」「工業地区」などのステージを選んで模擬戦を行うのは如何にもゲーム的ですし、そうして選んだステージの地形を活かして戦うのは「3D空間を活かしたゲーム」の世代の発想だなぁと思うのです。

 「3D空間を活かしたゲーム」というのがピンと来ない人もいると思うので超簡潔に説明すると、ゲームが3Dになって変わったのって「高さ」の概念が加わったところなんですね。FPSやTPSといった「オンライン対戦3Dアクション(シューティング)」は、ゲームが「高さ」を表現できるようになったことで発展していったジャンルなんです。


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<画像は『ワールドトリガー』2巻14話「三輪隊」より引用>

 例えば、「高台」からスナイパーが狙撃するとか、逆に「高い建物を壁にして」四方八方からの攻撃を防ぐとか。地形を活かした戦い方が重要になってくるのです。


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<画像は『ワールドトリガー』3巻22話「玉狛支部2」より引用>

 そのため、チーム編成も「近距離に強いアタッカー」「中距離に強いガンナー/シューター」「遠距離に強いスナイパー」、更に「彼らに情報を送るオペレーター」とポジションが分かれていて。それぞれに役割がちがっていて、必ずしも「1対1が強い方が勝つ」ワケじゃないんです。


 これが「ゲームの世代によって描かれる漫画・小説が変化する」説とつながっていて―――
 格闘ゲームの世代は、やっぱり「1対1」を重視する作品が多かったと思うんですね。なるべく平地で、地形の有利不利がないところで、向き合って「さぁ!勝負だ!」みたいな。『とある魔術の禁書目録』もそうですし、SNKの格闘ゲームが大好きだと公言していた和月先生の『るろうに剣心』とかもそうですよね。

 そうした作品に対して「もっと地形を活かしたバトルが観たい」といった批判も一時期はすごく多かったと思うのですが、今にして思うとそれは「漫画として劣っている」というより「格闘ゲームの文法を踏襲している」だけだったのかもと思いますね。『スマブラ』を「終点・アイテムなし・1on1」で戦って勝つ奴が強い、みたいな美学。


 それに対してFPS・TPS世代(と勝手に言っちゃっていますが)の『ワールドトリガー』は、地形も使うし、チームで連携して「2対1」「3対1」といった数的優位の状況を作ることが良しとされています。強い敵には何人かがかりで戦ったりもします。『モンスターハンター』とかだって複数プレイヤーで共闘して巨大なモンスターと戦うように、「1対1」でなければ卑怯だという格闘ゲーム世代とはバトルの捉え方がちがうんですね。

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<画像は『ワールドトリガー』7巻56話「風間隊」より引用>


 第1の項目で紹介したことも、第2の項目で紹介したことも、すべてはこの「チーム戦で戦うバトル漫画」というところにつながっていて―――「100人くらいキャラがいる」という話も、ボーダー隊員は「○○隊」といったチームごとに4~5人はいるため、どうしたって多人数が必要なんですよね。それが分かっているから、最初から100人くらいのキャラを考えておいたという。

 また、主人公の1人である三雲修が超弱くても活躍できるのも「チーム戦」だからであって、「1対1」では誰にも勝てない弱さであっても、味方を活かす活躍があるんですね。
 「こんなに超弱い主人公はそうはいない」と書きましたが、実はチーム戦のスポーツ漫画ならそれもありえる話で……例えば『スラムダンク』の桜木花道なんかはバスケットボール選手としては素人で、自分の得点数はものすごく少ないのですが、リバウンドという「外れたシュートのボールを拾う」ことでチームメイトの得点につなげていたんですね。性格は正反対だし、身体能力だけは高かった桜木花道とちがって身体能力も低いのですが、「主人公としての立ち位置」を考えると三雲修は桜木花道タイプの主人公だったのかもって思います。空閑遊真が流川楓ですね。とすると、迅さんがゴリ……?

 ということで、この『ワールドトリガー』は「バトル漫画でありながらスポーツ漫画の魅力を持っている作品」だと思うのです。


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<画像は『ワールドトリガー』2巻8話「木虎藍2」より引用>

 そんな「スポーツ漫画のようなバトル漫画」を実現させている発明として、この作品特有の「戦っている時の体は、生身ではない」という設定があります。
 戦闘体がどんなにダメージを喰らっても生身には影響がなく、戦闘体で首をちょん切られても生身に戻るだけだったり、戦闘体で腕や脚がもげてもそのまま戦い続けたりします。この戦闘体は数日あれば作り直せる“作りもの”なのですが、首が跳ね飛ばされる姿や、腕や脚が欠損した状態で戦っている姿は、人によってはショッキングに見えてしまうかも知れないのが注意です。

 ただ、このおかげで「スポーツ感覚で戦えるバトル漫画」が実現出来ているんですね。
 「銃の撃ち合いなのに血が出ないゲーム」な『Splatoon』とかにやっぱり通じるものがある気がします。



◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像は『ワールドトリガー』11巻94話「空閑遊真11」より引用>

 バトル漫画が好きな人にも、スポーツ漫画が好きな人にもオススメできる万人向け作品ですが……「たくさんのキャラクターが出てくる作品」の宿命として、キャラが出揃うまでのスタートダッシュがどうしても弱くなってしまうところがあって、例えばコミックス1巻だけ買って面白さが伝わる作品ではないと思うんですね。

 「最低でも10巻まで読んでくれ!」と言いたいけど、流石にそれは今から買って読むかを悩んでいる人にはハードルが高そうなので(笑)、とりあえず5~6巻までは読む気があるという人には是非オススメです。そこまで読めば、恐らく合うか合わないかが分かると思いますから!


【キンドル本】

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『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』1~4巻が面白い!/まだコドモ、だからこそ上を向いて突き進む物語

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
たくさんの「シンデレラガールズ」の中から「小学生」だけを集めた作品
同じ「小学生」が集められたからこそ、際立つ一人一人の個性
まだ何者にもなっていないコドモ達が、アイドルになっていく物語


【スペシャルCDが付いた紙の本】
THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149(1) SPECIAL EDITION (サイコミ) THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149(2) SPECIAL EDITION (サイコミ) THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149(3) SPECIAL EDITION (サイコミ) THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS U149(4) SPECIAL EDITION (サイコミ)

【キンドル本】
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【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


↓1↓

◇ たくさんの「シンデレラガールズ」の中から「小学生」だけを集めた作品
 『アイマス』シリーズは、私のような「せいぜい上澄みくらいしか知らない人」なんかよりもよっぽど熱心でよっぽど詳しいファン(ここではプロデューサーと書いておくべきか)がたくさんいらっしゃいますから、私みたいな虫けらが紹介記事を書くのはあんまり良くないかなーと迷ったのですが……

 『アイマス』や『シンデレラガールズ』にどっぷりハマっているワケでもない私が今、純粋に一番楽しみにしている漫画ですし、私みたいなゴミクズが紹介することで、まだ『アイマス』や『シンデレラガールズ』をあまり知らない人にも知ってもらえる機会になるかも知れないと思って書きます!


 ということで……説明はここからです。
 『アイドルマスター』(『THE IDOLM@STER』と記述することも多い)の始まりは2005年に稼働開始したナムコのアーケードゲームです。個性豊かな9人の女性アイドル(亜美・真美を分けて考えるなら10人)のプロデューサーとなって、彼女たちを育成していくゲームでした。
 このシリーズでは基本的に「プレイヤー=プロデューサー」という業務に就くのですが、実際にやっていることはプロデューサーというよりマネージャーに近いと思われます。それをこのシリーズでは一貫して「プロデューサー」と呼んでいるんですね。

 その後『アイドルマスター』はXbox360等の家庭用に移植されたり、スピンオフ作品が出たり、CDが出たり、様々な展開をしていくのですが……特に2011年にテレビアニメ化されて大ヒットしたことが、後のアイドルアニメ戦国時代につながっていくのかなと思います。『アイカツ!』は2012年~、『ラブライブ!』のアニメは2013年~、『WUG』は2014年~ですからね。


 さて、そんな風に『アイドルマスター』が大ヒットしている2011年に始まったのが、こちらの『アイドルマスター シンデレラガールズ』です。元々はガラケー&スマホで遊べるソーシャルゲームですから非常にたくさんのアイドルが登場して、基本的には前作までのキャラとはちがう新キャラばかりが180人以上いて、前作同様にプレイヤーはプロデューサーとなって彼女達を育成していくことになります。
 2015年にはこちらもテレビアニメ化されて、スマートデバイス向けリズムゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』も配信となって、こちらも大ヒットしています。


 普通のシリーズで言えば、『アイドルマスター』が第1世代で、『アイドルマスター シンデレラガールズ』は世代交代した第2世代の新シリーズと言って構わないと思うのですが……『アイマス』の恐ろしいところは、第1世代の『アイドルマスター』が未だ現役の人気を維持したまま、第2世代『シンデレラガールズ』も大人気で、ここに更に『ミリオンライブ!』『SideM』『シャイニーカラーズ』と新世代が次々と投入されても全部人気なところで。

 「ガンダム」シリーズで例えるなら、『機動戦士ガンダム』と『Zガンダム』と『ガンダムW』と『ガンダムSEED』と『Gのレコンギスタ』が同時に放送されている―――みたいなのが『アイマス』なのですよ!これ全部追えている人達ってどんだけ体力あるのよ!



 ということで、『アイドルマスター シンデレラガールズ(スターライトステージ)』という原作のゲームは、「オリジナルキャラが180人以上いて、プレイヤーはプロデューサーとなってそのアイドル達を育成していく」ってことなんですね。キャラがむっちゃ多い!でも、その1人1人のキャラに熱烈なファン(プロデューサー)が付いているってのが特徴なのです。
 だから、例えば……2015年にテレビアニメ化はしたのですが、集計してみたところアニメに登場したのは83人だけで、100人前後のキャラは登場すらしなかったみたいですし、登場したキャラでもモブのようにチョコっと映るだけというキャラも少なくありませんでした。

 そりゃ180人以上もいればそうなりますよね……って話なのですが、前述したように「出番のなかったキャラ」1人1人にも熱心なファン(プロデューサー)がいるのが『シンデレラガールズ』なのです。



 故に……というか、何というか。
 そうしたたくさんの魅力的なキャラクターをピックアップするため、『シンデレラガールズ』は公式の漫画が幾つもあるのです。例えば、月刊チャンピオンに連載されていた向井拓海が主役の『アイドルマスター シンデレラガールズ WILD WIND GIRL』や、20歳以上のアイドルがメインの『アイドルマスター シンデレラガールズ After20』など……

[まとめ買い] アイドルマスター シンデレラガールズ WILD WIND GIRL【電子特別版】 THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS After20(1) (サイコミ)


 ハイ、ようやく今日の記事で紹介する漫画の名前を出せるところまでたどり着きました。
 この『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』という漫画は、180人以上いるという『シンデレラガールズ』のアイドル達の中から「年齢的に小学生のアイドル」をメインにした作品なのです。小学生アイドルだけを集めた「第3芸能課」があるという設定なので、ゲームやアニメとはまたちがうストーリーですし、ゲームやアニメをまったく知らない人がここを入口にするというのもアリだと思います。正直なところ、私も「初めて見た」って子もいましたし……

 メインキャラとして登場するアイドル達は、こんなメンバーです。

・橘 ありす(12歳) 身長:141cm
・櫻井 桃華(12歳) 身長:145cm
・古賀 小春(12歳) 身長:140cm
・結城 晴(12歳) 身長:140cm
・的場 梨沙(12歳) 身長:143cm
・赤城 みりあ(11歳) 身長:140cm
・佐々木 千枝(11歳) 身長:139cm
・市原 仁奈(9歳) 身長:128cm
・龍崎 薫(9歳) 身長:132cm

-3巻から登場-
・横山 千佳(9歳) 身長:127cm

-4巻から登場-
・福山 舞(10歳) 身長:132cm

 『U149』というタイトルですけど、例えば身長は146cmだけどもはや小学生ではない安部菜々さんのようなキャラは所属していませんね。城ヶ崎莉嘉も身長149cmの12歳ですけど、中学1年生という設定なのでこちらも所属していません。あくまで「小学生のキャラが集まった課」なのです。
 また、「課には所属しているけれど今はまだ来られていない」とだけ言われているキャラもいるので、小学生なのにまだ出ていないキャラは今後に登場するのかなと思います。

 この11人の中で、2015年のテレビアニメ版でガッツリ出番があったのは「シンデレラプロジェクト14人」の中の1人:赤城みりあちゃんと、ライバルチームである「プロジェクトクローネ」の橘さんくらいで、あとは基本的にはチョイ役というか……結城晴と的場梨沙に至っては登場もしていません(結城晴は後に『しんげき』の方でアニメに出ますけど)。



 そういうキャラにスポットを当てている漫画なんですね。
 繰り返しになりますが、『シンデレラガールズ』は1人1人のキャラに熱心なファン(プロデューサー)が付いている作品です。「小学生だけを集めた漫画」とだけ聞くと、ニッチだったりマニアックだったりな印象を受けるかも知れませんが、お色気シーンみたいなのは一切ありません。この子たちのファン(プロデューサー)はそういうのを望んでいないと、ちゃんと分かっているんですよね。

 元々のキャラクターデザインが「1人1人のキャラが特徴を持っている」ようにデザインされていることもあるのでしょうが、漫画のデフォルメ表現に上手く落とし込んでいますし、表情だったり仕草だったり私服だったり、細かいところまで「このキャラらしい」と思わせるものに仕上がっているのがすごいところです。

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<画像は『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』1巻1話「第3芸能課」より引用>

 例えば、ここですよ!
 的場梨沙が持ち込んだファッション雑誌を結城晴が注意した際、古賀小春がニコニコしながらそれを読んでいるというシーンなのですが……それを自分で開いて読むワケではないけど、控えめに横目で見ている佐々木千枝のこの距離感!

 コマの端っこに描かれているキャラまでしっかりと「あー、この子はそうするよねー」「この子はこういう時にこういう表情をするだろうねー」と納得できるように描かれているのです。だって、この作品の場合「コマの端っこに描かれているキャラ」にも熱烈なファン(プロデューサー)がいるのですからね!


 Q.やまなしさんは佐々木千枝ちゃんが好きなんですか?

 A.………はい (´・ω・`)


 私は『シンデレラガールズ』はアニメ版から入って、橘ありすさんが好きで、その後にゲーム(『スターライトステージ』の方)で佐々木千枝ちゃん可愛いなーとなったのですが。

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<『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』1巻3話「第3芸能課3」より引用>

 そんな自分からすると、佐々木千枝ちゃんが橘ありすさんのことを思わず「ありすちゃん」と呼んでしまって口を押える―――なんてシーンは、何気ないシーンなんですがすっごい嬉しいんですよ!(橘さんは「ありす」という名前がコンプレックスなのでそちらで呼ばれたがらない。それを気にせずに「ありす」と呼ぶ人もいるけど、千枝ちゃんは多分そういうとこ気にしちゃうよね、という)


 今のは「自分の元々好きなキャラ」がちゃんと漫画内にそのまま登場してくれて嬉しいという話でしたが、私の場合は他のキャラはさほど詳しくなかったため逆にこの漫画から「この子ってこういうキャラなんだ!」と魅力を知っていくケースも多かったです。

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<画像は『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』2巻8話「赤城みりあ」より引用>

 結城晴と的場梨沙はアニメにも出ていなかったキャラなのでほとんど知らなかったのですが、知らなかった分だけ「ゲームのキャラ」というより「等身大のキャラ」として一気に好きなキャラになりました。この「実は一番周りを見れてバランスを取っている」結城晴と、「ズバズバと思ったことを言ってくれる」的場梨沙はいいコンビですよね。


 なので、『アイマス』や『シンデレラガールズ』を知らないという人も、この漫画から入るというのも手だと思いますよ!



↓2↓

◇ 同じ「小学生」が集められたからこそ、際立つ一人一人の個性
 「180人以上いるアイドルの中から、小学生のキャラだけを集めた漫画」と書くとロリコン漫画のように思ってしまう人もいるかも知れませんし、正直なところ私も読む前はそういう色眼鏡で見ていたところがありました。しかし、実際に読んでみると、そうか「小学生だけを集めた方がしっかりと個性が出るんだな」と、その狙いの鋭さに驚きました。


 『シンデレラガールズ』という作品は、下は小学3年生から上は31歳まで幅広い年齢のアイドルが登場する作品なんですが、それ故に様々な年齢のキャラが一同に介すことが多くなるんですね。例えば2015年のアニメで言えば、メインとなった「シンデレラプロジェクトの14人」の多くは高校生で、小学生ではみりあちゃん1人だけそこに混じっているというカンジでした。ライバルチームである「プロジェクトクローネ」も小学生は橘ありすさん1人だけでしたね。
 そうすると、キャラの個性の立ち方はどうしても「コドモ」になってしまうと思うんです。「大人の集団の中にコドモが1人混じっている」という。


 でも、「コドモ」にも色んな子がいて、それぞれ得意なこと・苦手なこと・性格は人それぞれちがうし、180人以上いるアイドルの中からその子を選んで育成しているファン(プロデューサー)の皆さんは、その「人それぞれちがう」部分にこそ注目しているワケで――――ならば、「コドモ」だけを集めた方が、1人1人の個性がハッキリと見えるよねというのが、この『U149』なのです。


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<『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』3巻18話「佐々木千絵3」より引用>

 みりあちゃんは年少組(9歳)の薫や仁奈と一緒になって喜ぶ。
 橘さんや梨沙は「コドモ扱いするな」とちょっとイラっとする。
 晴や桃華さんはもうちょっと大人なのでそこまで引いたりはしない。
 千枝ちゃんはプロデューサーが今何を考えているのかを察する。

 1人1人のキャラが、ちゃんとキャラを守った上で、しっかりと考えて行動していることが分かる1ページです。「大人とコドモが混じったメンバー」では分からないことが、「コドモ達だけが集められたメンバー」ではハッキリと分かるんですね。プロデューサーと1対1の関係になるゲームとはまたちがって、「同い年くらいの子の中に混じるとこうなるよね」ってifに納得させられるというか。


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<『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』1巻2話「第3芸能課2」より引用>

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<画像は『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』2巻15話「特別編」より引用>

 学生アイドルものの定番とも言える「事務所で勉強を教えてあげる」シチュエーションですが、「それでは宿題の意味がありません」とバッサリ切り捨てる橘さんと、年下の子に上手く教えてあげている千枝ちゃんと、両極端な対応をしているところが見られるのも面白いです。


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<画像は『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』1巻6話「橘ありす3」より引用>

 同い年だから―――
 仲間だけど、友達だけど、ライバルにもなり得る!

 と……橘ありすが櫻井桃華を見るこの表情とか、「プロデューサーと1対1」とか「大人の中にコドモが1人混じって」とかでは絶対に見られない光景でとても熱いのです!



↓3↓

◇ まだ何者にもなっていないコドモ達が、アイドルになっていく物語
 さて、「180人以上いるアイドルの中から、小学生のキャラだけを集めた」効果としてはもう一つ。

 よく「日本の漫画・アニメ・ゲームはどうして10代の少年少女を主人公にするのか?」という話が出てきます。これには様々な回答をすることが出来るのですが、大きな理由の一つに「日本人は成長物語が好きだから」があると私は思っています。それこそ「桃から生まれた赤ん坊が成長して鬼退治に行く」話が語り継がれる国ですからね。そして、「成長していく主人公」を描くには「10代の少年少女」が主人公になるのは不思議なことではないでしょう。

 しかし、アイドルものに関しては若干ビミョーなところがあって……
 アイドルの世界では、例えば中学生・高校生がトップアイドルでもおかしくないので、それこそ2015年のアニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』では主人公である新人アイドル島村卯月(17歳)の先輩アイドルが城ヶ崎美嘉(17歳)という構図になっちゃったりもしていたんですね。「10代の少年少女が主人公だからこれから先に無限の成長が待っている」とも言い切れないのがアイドルものの恐ろしいところというか。


 だから、「小学生のキャラだけを集めた」この作品なのです。

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<『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』1巻0話「PROLOGUE」より引用>

 この作品の主人公達は、アイドルとして事務所に所属はしているものの、仕事もなければプロデューサーもいない、物置のような部屋でただ時間を無為に過ごしている子達です。ゲームともアニメともちがう世界線の話なので、みりあちゃんや橘さんもド新人からスタートです。


 そんな「まだアイドルとすら呼べない小学生達」が、トップアイドル目指して進み始めるストーリーなのです。この漫画においては「小学生組」=「まだ未成長の存在」から始まるんですね。

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<『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』1巻3話「第3芸能課3」より引用>

 始まる先輩アイドル達のライブを、会場の外から見上げることしかできない―――
 でも、ここから彼女達は上に向かって突き進むのです!


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<『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』1巻3話「第3芸能課3」より引用>

 この梨沙、むっちゃカッコイイ!!




 また、ここまで敢えて「180人以上いるアイドルの中から、小学生のキャラだけを集めた漫画」と書いてきましたが、それはあくまでメインキャラクターと言える「第3芸能課」がそうなだけで……先輩アイドルとして、『シンデレラガールズ』に登場するもっと年上のアイドル達も登場して、「第3芸能課」の目標となっていきます。

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<『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』2巻14話「結城晴3」より引用>

 一ノ瀬志希。


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<『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』3巻21話「第3芸能課5」より引用>

 三船美優に、佐藤心。


 こういう年上キャラ達も魅力的に描きつつ、小学生達の「目標」となるという。先輩アイドル達、みんな無茶苦茶カッコイイんですよ!4巻であのキャラが登場したときは流石に「うぉーーー!」と叫んでしまいましたよ。その後に1巻を読み直して、なるほどそういうことかと合点が行ったり。




◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』3巻16話「佐々木千絵」より引用>

 今現在その層にどれくらい認知されているかは分からないのですが、ポテンシャル的には主人公達と同年代の「小学生の女の子」とかにも共感できる漫画だと思うんですね。
 ボーイッシュな子、ギャルっぽい子、大人しい子、大人びた子、元気な子……色んな子がいるけど、みんな仲間で、みんなライバルで、上に向かって突き進むぞ!という作風は、『アイマス』の看板を背負ってはいるんだけど『ラブライブ!』的な魅力も持った作品だとも思いますし。

 もちろん夢に向かって成長していく子供達を見ることで勇気をもらえるという大人達にもオススメです!

 そして……この作品、なんと(この記事を書いている2018年11月5日現在)サイコミで全話無料で読めてしまうのです!
 コミックス化にあたって修正している箇所もあるみたいですし、私はなるべくコミックスが出るのを待ってコミックスを買って読むことにしているのですが……「『アイマス』とか『シンデレラガールズ』とかよく分かんないし」という人にとっても、ここが入口になるとも思うので是非どうぞ!

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『兄の嫁と暮らしています。』1~3巻が面白い!/この感情は「百合」なのか、何なのか

 「漫画紹介」や「この漫画が面白い!」のカテゴリーで紹介する漫画は、「私がハマったもの」でなければ紹介しないのはもちろんなのですが、ブログに「オススメだよ!」という記事を書く以上は「その作品がどういう作品なのか」をある程度は見極めないと書けません。

 この作品はちょっと前からハマっていたんですけど、2巻のラストで「え?え?このシーンってそういうことなの?」と確信が持てなかったので、3巻の発売を待って、3巻を読んで「やっぱりそういうことか」と確認してから書くことにしました。
 このブログで「現在3巻が出たばかり」くらいの漫画を紹介することが多いのは、そういう理由なんですね。


【三つのオススメポイント】
・「他人」だけど「家族」になって生きていく
・ヘビーな境遇を周りから支えてくれるサブキャラクター達
・本人にもまだ分からない「百合」なのか「家族愛」なのか微妙な感情


【紙の本】
兄の嫁と暮らしています。(1) (ヤングガンガンコミックス) 兄の嫁と暮らしています。(2) (ヤングガンガンコミックス) 兄の嫁と暮らしています。(3) (ヤングガンガンコミックス)

【キンドル本】
兄の嫁と暮らしています。 1巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス) 兄の嫁と暮らしています。 2巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス) 兄の嫁と暮らしています。 3巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:◎(そもそもが「兄が死んだ」から始まる設定なので)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×(今のところは…)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:△(グロくはないけど虫と戦う回はあるw)
・百合要素:○(百合かどうかは確定していないけど、耐性ない人にはオススメしません)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:△(風呂に入ろうとしたら既に入ってたというシーンがある)
・セックスシーン:×


◇ 「他人」だけど「家族」になって生きていく
 この作品は、くずしろ先生が2015年からヤングガンガンにて連載している日常センシティブストーリー漫画です。公式サイトにそう書いてあったから載せたのだけど「センシティブストーリー」って何だ?
 その公式サイトから読める読み切り版(設定がちょっとちがうのでプロトタイプみたいな作品だと思います)は「日常ハートフルホームコメディー」と書かれていたので、連載版は読み切り版よりもセンシティブ=繊細な感情を意識して描かれているのかなと思います。


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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』1巻Diary.4より引用>

 主人公は、岸部志乃ちゃん。
 17歳(※1)で高校2年生。サバサバしていて、クールに感情を表に出さないタイプ……のように見えて、内心では色々考えているし、時折それが表情に出るところが可愛いです。

 小さいころに両親を亡くしているので、ずっと「兄」と二人暮らしをしていました。


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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』2巻Diary.11より引用>

 もう一人の主人公は、岸部希さん。
 24歳(※1)で小学校教師。おっとりしていて、優しくて、清楚で、料理が上手で、おっぱいが大きくて、女子力というか嫁力の塊のような女性です。

 志乃の「兄」と高校生の頃から付き合っていて、社会人になって晴れて結婚しました。



 ということで、「妹」と「兄」と「兄の嫁」という関係性の三人暮らしだったのですが……その家族を繋ぎとめていた「兄」が突如亡くなってしまい、元々は他人だった「妹」と「兄の嫁」だけが残されて二人暮らしを続けているという設定です。

 これ、片方が男だったら「エロゲーかよ!」と言われる設定のヤツですよ!




 でも、志乃ちゃんの方は「たった一人の肉親」を失ってひとりぼっちになってしまい、希さんの方は高校生の頃からの「たった一人愛した人」を失ってしまい―――二人とも行き場のないその気持ちを、「妹」と「兄の嫁」というよく分からない関係性の二人暮らしで埋めているのです。そこにはちゃんと「この二人が一緒に暮らす」という設定の必然性があるのです。


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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』1巻Diary.2より引用>

 この「いなくなった兄の存在」というのはシリアスな話だけでなく、ところどころで「ついつい希さんが過去のノロケ話を暴露しちゃって自爆する」というギャグにもなっているのがすごくイイのです。当たり前なんですけど、「兄」が死んだからといって「兄」の話が全てシリアスになるワケじゃなくて、笑い話にもなるんですよね。



 「妹」と「兄の嫁」、「17歳」と「24歳」の女のコ、「ずっと両親がいなくて兄と暮らしてきた妹」と「一人っ子で両親に反発もしてきた嫁」と――――「恋人」でも「姉妹」でもない、歩んできた道がまるでちがう「他人」の二人が、もう今はいない「兄」への想いによって繋ぎとめられて、「家族」になっていくという。その微妙な距離感が溜まらないのです。

(※1:志乃ちゃんの17歳、希さんの24歳という設定は公式サイトやコミックスの説明文にそう書いてあるからそのまま載せたんですけど……志乃ちゃんの誕生日は3月で、高2なのは確定しているので、恐らくは作中の年齢は16歳ですよね。後輩がどうのって話があったので留年という可能性もなさそうですし。
 希さんの方も「教員2年目」という話があって、誕生日が10月なのでこちらも多分23歳じゃないかなと思われます。こちらは浪人や留年の可能性もゼロじゃないですけど、)




◇ ヘビーな境遇を周りから支えてくれるサブキャラクター達
 しかし、よくよく考えなくてもこの主人公達の境遇は相当ヘビーです。
 志乃ちゃんからすると、小さいころに両親が死んで、親戚達からはほぼ絶縁されてて、それでも兄が必死に高校に通いながらバイトなりして育ててくれて、その兄も就職して結婚してようやく幸せな時間が送れるかと思ったら過労で死んでしまって、もう誰も残っていないと思ったところ「兄の嫁」だけが残ってくれて――――


 全面的に暗い話ばかりになってもおかしくないと思うのですが、明るい話として読めるのは「この主人公達の周りにいるキャラクター達」が善い人ばかりだからなんですね。



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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』2巻Diary.15より引用>

 このキャラを一番最初に挙げるのもどうかと思うんですが……(笑)。
 私がとても好きなのが、目時先生です。志乃ちゃんの通う高校の先生なんですが、その高校は「兄」や希さんがかつて通っていた高校でもあって、目時先生は当時の二人を知っているんですね。


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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』2巻Diary.15より引用>

 だから、志乃ちゃんの前では「しっかりしたおねえさん」な希さんも、目時先生の前では「生意気な生徒」に戻って軽口を叩いたりするのがすごく好きです。目時先生の方もすっごく強面で、志乃ちゃんも希さんも「生意気な生徒」だと思うのだけど、さりげなく気にかけているところが立派な先生だなーと思いますし。



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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』1巻Diary.6より引用>

 志乃ちゃんの幼なじみで同級生の、みなとと翔太郎のコンビもイイキャラしています。
 みなとはバレー部のエースでさっぱりした性格で、翔太郎はイケメンなのにゲームヲタク(特に美少女ゲームが中心)で美少女ゲームをソースにした教訓めいたことを言ってくるのが残念なコです。

 というか、翔太郎がゲーム好きだからか何なのか、このゲーム油断するとやたら『パワプロ』ネタがぶち込まれているのは何故なんでしょう!
 キャラクター達も別に「64で『パワプロ』」な世代ではないと思うんですけど!64って20年前のゲーム機ですよ、17歳の志乃ちゃんや翔太郎がどうして64を「思い出のゲーム機」として遊んでいたのか!……でも、そうか。古いゲーム機の古いゲームソフトを中古か何かで買って遊んでたと考えると、志乃ちゃんの野球知識が「野茂」とか「川相」とか90年代に偏っているのも分からなくはないか(笑)。



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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』1巻Diary.4より引用>

 希さんは小学校の教師でもあるので、同僚の先生とか、生徒も登場します。
 それの何が重要かというと……同じ家で暮らしている志乃ちゃんと希さんですけど、志乃ちゃんが友達に見せる顔とか、希さんが同僚の先生に見せる顔はまた別にあって。そこに二人がそれぞれ相手に言えない本音と、更に本人にもよく分かっていない迷いのようなものが見えるからなんです。

 どんな立体物も一つの面からではその形がよく分からず、色んな方向から見ることでその立体的な形が分かるように……志乃ちゃんと希さんの関係も、お互いはお互いの一面しか知らないのだけど、実は色んな形をしていることに気づいていく話だと思うんですね。




◇ 本人にもまだ分からない「百合」なのか「家族愛」なのか微妙な感情
 私がこの作品を知ったのは、どこかのサイトで「百合漫画」と紹介されていたからです。
 しかし、この作品を実際に読んだ私の感想は「この作品を百合漫画ってカテゴリーで紹介しちゃダメじゃね?」でした。


 それは別に「百合」というカテゴリーを下に見ているとかそういうことではなくて、この作品の一番の肝は主人公である志乃ちゃんにすら「希さんに対する気持ち」の正体が何なのかがよく分かっていないことだと思うんですよ。

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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』1巻Diary.8より引用>

 志乃ちゃんは、気付いているのです。
 「死んでしまった旦那の妹」なんか放っておけば、希さんは幾らでも新しい恋を見つけられるし、幾らでも新しい幸せを手に入れられるということを。


 その「捨てられたくない」負い目というのは、「家族愛」なのか「恋愛」なのか―――
 志乃ちゃんにもまだ答えが出せていない以上、「この漫画は百合漫画だ」とカテゴライズしてしまうのは野暮だと思うんですね。例えば、「百合漫画だ」とカテゴライズされた時点で、男女でくっついて「めでたしめでたし」というラストは許されなくなってしまいますが、現時点ではまだまだ「志乃ちゃんが翔太郎とくっつくラスト」も「希さんが藤先生とくっつくラスト」も全然あると思いますからね。



 一緒に暮らしている人を大切に想うこの気持ちは、「家族愛」なのか「恋愛」なのか―――もう一人の主人公である希さんの方は「姉妹」になりたいことを繰り返し強調していて、時折それが志乃ちゃんにはグサリと来るんですね。

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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』2巻Diary.19より引用>



 ということで、今この流れを書いていて思ったんですけど……


 この作品、女同士版『エロマンガ先生』なんですね。

 「他人」が「家族」になる話で、それが「恋愛」なのか「家族愛」なのかの気持ちがすれちがって、主人公が素直になれないのが読者としてはもどかしくて、ヘビーな境遇なのに登場人物みんな善い人なので明るくて楽しい話で、そして何より主人公の職業が「先生」と呼ばれる職業だ!!(無理矢理感)




 ということで、「センシティブストーリー」というのは、この微妙な関係性と距離感の間に揺れる繊細な感情を描いている作品だってことだと思います。どういう結末になるかは分からないのですが、そのドキドキ感も含めて今私がイチオシしたい作品です。

 公式サイトにはバックナンバーとして1~3話と、プロトタイプとも言える読み切り版が掲載されているみたいなんで、気になった人はまずこちらをどうぞ。2017年8月1日現在、キンドル版は1巻が半額みたいなんで「とりあえず1巻だけ」手に取ってみるのもイイと思いますよ!

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『三ツ星カラーズ』1~3巻が面白い!/クソガキ女子小学生ってやっぱりかわいくて面白い!

 2017年一発目の漫画レビューはこちらです!
 「買ったままずっと読んでいなかった」のだけど、このタイミングでこの作品を読めて本当に良かった!


【三つのオススメポイント】
・上野の街を舞台に、女子小学生3人が走り回る!
・クソガキだけど、女子小学生ってやっぱりかわいい!
・大人たちも楽しそうでワクワクする!


【紙の本】
三ツ星カラーズ (1) (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ (2) (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ3 (電撃コミックスNEXT)

【キンドル本】
三ツ星カラーズ1<三ツ星カラーズ> (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ2<三ツ星カラーズ> (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ3<三ツ星カラーズ> (電撃コミックスNEXT)


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


◇ 上野の街を舞台に、女子小学生3人が走り回る!
 この作品は、月刊コミック電撃大王にて2014年からカツヲ先生が連載しているショートギャグ漫画です。

 『ひとりぼっちの○○生活』1~2巻が面白い!/作れ!友達ハーレム!

 カツヲ先生の作品と言えば、このブログでも猛プッシュしている『ひとりぼっちの○○生活』が有名ですが、作品としての方向性は対照的です。

・『ひとりぼっちの○○生活』は4コマ漫画、『三ツ星カラーズ』は普通のコマ割りの漫画
・『ひとりぼっちの○○生活』は笑いあり涙ありな総合力が魅力、『三ツ星カラーズ』はギャグ一点突破
・『ひとりぼっちの○○生活』は友情賛歌であり“良い子”たちの話、『三ツ星カラーズ』は“クソガキ”たちのいたずら話
・『ひとりぼっちの○○生活』はどんどん友達を増やしていく話なのでキャラが増えていくけど、『三ツ星カラーズ』はずっと同じメンバーでの日常が描かれる


 「女のコの可愛さ」とか「ちょっとブラックなギャグ」とか「オチに対するフリの構成が何気にしっかりしている」とかの共通点ももちろんあるので、そこが作者ならではの“個性”となっているのですが……その“個性”以外の部分は見事なまでに対照的なのが面白いですし、その作風の“幅”はすごいなと思います。普通なら「4コマ漫画」と「普通のコマ割りの漫画」の両方を描くのですら難しいのに。

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<画像は『三ツ星カラーズ』3巻25話「クリーンアッププロジェクト」より引用>

 この作品をスーパー分かりやすく説明するのなら、『苺ましまろ』のキャラで描く『よつばと!』です。憎たらしいクソガキ感あふれる女子小学生3人が、街中を走り回って「面白いもの」に出会っていく作品です。

 一つの作品を紹介するために他の作品を引き合いに出すのは私はあまり好きではないですし、レビューなどを見るとやはりその2作品からの影響とかパクリだとかと指摘する人が多くてイヤんなるのですが……この作品は、『苺ましまろ』や『よつばと!』と同じ雑誌で連載されている作品なので、恐らく編集部レベルでポスト『苺ましまろ』・ポスト『よつばと!』を意識して企画していると思うんですね。

 「雑誌の色」として意図的に企画された作品をパクリだって言っちゃうと芳文社の日常4コマとかも全部パクリになっちゃいますし、ここは「電撃大王の伝統的な系譜」と言っておくべきじゃないかなぁと私は思います。



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<画像は『三ツ星カラーズ』1巻6話「どうぶつえん」より引用>

 しかし、もちろんこの作品には“この作品ならではの魅力”もあって、その一つが「上野」という街を舞台にしているところだと思います。

 アメ横、上野動物園、不忍池、そしてごくごく稀に秋葉原……などなど。
 東京になじみのない人でも名前くらいは聞いたことがあるであろう場所が舞台になっていて、“どこかは分からない県”が舞台になっている『よつばと!』や“静岡県”が舞台になっている『苺ましまろ』とちがって“都会”が舞台だし、この子たちは“都会っこ”で、放課後の遊び場所がアメ横とか上野公園とかなんです。


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<画像は『三ツ星カラーズ』2巻17話「大佐撮ってるカー」より引用>

 “都会”が舞台でも子どもたちは元気に走り回り、商店街には活気があって、大人もいっぱい笑顔で――――読んでいると、どんどんこの街が好きになっていくんですね。あくまで「家」を中心に描かれる『よつばと!』や『苺ましまろ』とちがうのは、こんな風に「街」を中心に描いているところかなぁと私は思います。

 あと、上野が舞台ということもあって「パンダ」がモチーフになっているものも多々出てくるので、パンダが好きな人にもオススメ!



◇ クソガキだけど、女子小学生ってやっぱりかわいい!
 同じ作者の『ひとりぼっちの○○生活』が「登場人物みんな良い子」なのとは対照的に、こちらの作品の主人公となる女子小学生3人組“カラーズ”は基本的にやかましくていたずらばかりするクソガキ集団です。

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<画像は『三ツ星カラーズ』3巻25話「クリーンアッププロジェクト」より引用>

 結衣は3人の中では比較的マジメだけど、こんな風に「しょうがないなぁ」と言って一緒になって色々やってしまうコです。“カラーズ”の中では赤担当で、リーダー。


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<画像は『三ツ星カラーズ』2巻12話「花よりベビーカステラ」より引用>

 さっちゃんは3人の中で一番「クソガキ」感が強くて、やかましくて行動力のあるコです。どことなく『苺ましまろ』の美羽っぽい。果物屋の娘で、“カラーズ”の中では黄色担当です。


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<画像は『三ツ星カラーズ』1巻4話「かくれんぼ」より引用>

 私の推しキャラは琴葉です。黒髪ロングで、いつもオシャレな帽子とポーチとワンピースで「お嬢様」っぽいルックスなのに、3人の中で一番「ブラック」で「残虐的なものが大好き」で「携帯ゲーム機で遊んでいる」というコです。でも、「ゲームのせいで性格が歪んだ」のではなく「元からこう」という本人談(笑)。この子がたまに子どもらしい表情を見せる時がかわいい。“カラーズ”の中では青担当です。




 とまぁ、ここまでいつも以上に引用する画像を多めにさせてもらったのですが、ここまでの画像を見てもらえば分かるように女子小学生達の服が毎回ちがっていて、どれもかわいいのです。それでいて服装がキャラごとに個性があって(結衣は優等生っぽい服、琴葉はお嬢様っぽいワンピースが多いなど)、琴葉に至っては毎回帽子とかポーチとかも凝っていて、見てて飽きません。

 中身はどーしようもないクソガキどもなのに、すんごいかわいい服をオシャレに着こなしているために「あー、やっぱり女子小学生ってかわいいなぁ」と思わされてしまうあたりは、確かに『苺ましまろ』っぽくはあります。



 それじゃー「ロリコン御用達マンガ」なのかっていうと、パンチラなどの性的な描写は一切ないし、『苺ましまろ』の伸ねえのような「かわいい女のコを愛でるロリコン風のキャラ」もいないし、徹底して性のにおいが排除されている漫画だと思います。そもそもこの子らが何年生なのかもよく分かりませんしね。

 この辺は『よつばと!』のよつばや恵那が「性の連想をさせないデフォルメされた子ども体型」として描かれているのに近いですね。そこが逆に興奮するという人もいるかもですが(笑)、『三ツ星カラーズ』は「エロくてかわいい」ではなく「子どもらしくてかわいい」を追及した作品じゃないかなと思います。


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<画像は『三ツ星カラーズ』2巻12話「花よりベビーカステラ」より引用>

 それは、さっちゃのお母さんのこのシーンにも見て取れます。
 この作品の「かわいい」はあくまで母親が娘に対して思う「かわいい」なんだ……というか、さっちゃんあんなクソガキなのに、母親からすればやっぱり「かわいーねぇ」という存在なんですね(笑)。



◇ 大人たちも楽しそうでワクワクする!
 この作品の主人公たちは“カラーズ”という女子小学生3人組ですが、上野という「街」を舞台にしていることもあって大人たちもサブキャラクターとして登場します。


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<画像は『三ツ星カラーズ』1巻9話「まんなかのめさがし」より引用>

 まずはアメ横でなんかよく分からないものを売っている「おやじ」。
 上野の街を守りたい“カラーズ”に事件を提供してくれたり、おもちゃをくれたりする、“カラーズ”の一番の遊び相手です。毎回変なサングラスを付けているのが特徴。


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<画像は『三ツ星カラーズ』2巻14話「ミジン子」より引用>

 次に“カラーズ”の宿敵である「斎藤」。
 交番勤務のおまわりさんなので、上野の街を守りたい“カラーズ”の目の上のたんこぶです。“カラーズ”のいたずらは主にこの斎藤に向けられたもので、斎藤も斎藤で子ども相手に本気で応戦するのでいつもバトルをしています。


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<画像は『三ツ星カラーズ』3巻27話「バイトっす」より引用>

 そして、パン屋の娘「ののか」。
 かわいい。友達がバイトしているというので多分高校生、セーラー服にエプロン姿がかわいいです。“カラーズ”をかわいがっているのだけど、ちょっと抜けているところがあるので“カラーズ”からはなめられています。そこもかわいい。



 とまぁ……
 言ってしまえば、「ジャンボ」「ヤンダ」「風香」なんですが(この他に「あさぎ」っぽいキャラもいる)、先ほども書いたように同じ雑誌のポスト『よつばと!』を意識している作品だと思いますし、子どもを主人公にキャラ配置していくと似たような配置になってしまうのはある程度は仕方ないのかなとは思います。ののかがかわいいので、イイじゃないですか!

 これは『よつばと!』もそうなんですが、大人のキャラがいて、大人の中で子どもである主人公たちが日常を過ごしている姿が描かれると、読者は大人の目線で子どもたちを見られるんですね。『よつばと!』でよつばが悪いことをしたら読者はとーちゃんの目線で叱りたくなるし、よつばがジャンボと一緒に遊んでいる時はジャンボの目線で甘やかしたくなるし。

 『三ツ星カラーズ』も、“カラーズ”がひどいイタズラをしている時は「斎藤」の目線で「このクソガキどもめ!」と思うし、“カラーズ”が誰にも迷惑かけずに楽しそうに走り回っていると「おやじ」の目線で「よーし、次はこのおもちゃをやろう」と思うし、大人キャラがいるからこそ子どもたちの行動にワクワク出来るんですね。




 私は2017年に入ってからどーも落ち込むようなことばかりで、何も上手くいかないなーと心が病みつつあったのですが、買ったまま読んでいなかったこの作品を一挙に読んだおかげで「そうだそうだ!世界ってこんな楽しいんだった!」とすっかり元気になりました。

 こういう作品は貴重なので、雑誌としても大切に育ててほしいし、一人でも多くの人に手に取って欲しいと思います。


 2017年2月1日現在、作者さんのPixivで「1巻の最初の3話」と「2巻の3話」が無料公開されています。この記事を読んで興味を持たれた人は是非どうぞ。

第1話「カラーズ」
第2話「チュカブる」
第3話「お宝さがし」

第10話「特務!隠密行動」
第11話「公園の真ん中で昼寝した子供」
第14話「ミジン子」

 今見ると、最初の頃は頭身が低いですね。サザエさん時空の作品か思いきや、実はこの子たちって成長している……?
 この6話の中では私のオススメは第14話「ミジン子」です。続きを知らないと楽しめない作品でもないと思うので、どの回からでもどうぞ。

| この漫画が面白い! | 17:59 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

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『かぐや様は告らせたい』1~3巻が面白い!/告白一歩手前というラブコメの一番美味しいところ!

 週刊ヤングジャンプという週刊誌に連載されている漫画なため、刊行ペースが3か月に1冊というハイペースな上、集英社のキンドル本は「紙の本より1か月遅れ」なのでキンドルで読んでいる私が新刊を読む頃には「2か月待てば(紙の本の)次の巻が出る」という状況で……一体どのタイミングで紹介すればイイんだ!と思って紹介できなかったのですが。

 これを紹介しないまま2016年が終わるのもアレなんで、紹介します!
 1月にはもう(紙の本の)4巻が出ちゃいますけどね!



【三つのオススメポイント】
・“恋愛”を描くからこそ、面白いネタが尽きない!
・「主人公がヒロインを好きすぎる」のも「ヒロインが主人公を好きすぎる」のも好きだ!
・天才、ボンボン、お嬢様だらけなのに、どうしてこんなにキャラが愛おしいのか


【紙の本】
かぐや様は告らせたい 1 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス) かぐや様は告らせたい 2 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス) かぐや様は告らせたい 3 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス)

【キンドル本】
かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 2 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 3 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:△(恥をかかないように必死になる作品ではあります)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:△(固定観念をネタにしているところはあります)
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:○(グロくはないけど虫と戦う回はあるw)
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:△(本人は自覚していないけど……)
・セックスシーン:×


◇ “恋愛”を描くからこそ、面白いネタが尽きない!
 この漫画は、集英社のミラクルジャンプ→ 週刊ヤングジャンプへと掲載誌を移して連載されているラブコメ漫画で、現在のところコミックスが3巻まで発売されていて来月にはコミックス4巻の発売が予定されています。

 舞台は富豪名家に生まれた者達が集まる超エリート校:秀知院学園という高校で、主人公はその超エリート校の中でもトップ2の超天才の生徒会長と副会長という男女です。絵に描いたような「お金持ち学校」なため、出てくるキャラはちょっとしたモブみたいなキャラでも「社長の子ども」と徹底しています(例外はあるんですが、それはまた後で)。

 そんな超エリートの中のエリートな2人ですから、非常にプライドが高く。
 お互いにお互いを「そっちがどうしても付き合いたいと告白して来たら付き合ってやってもイイかな!」と思っていたのだけど、どちらもそう思っているから2人とも全然告白しなくて、いつからか「どうにかして相手から告白させてやる」という心理戦をずーーっとずーーーっと生徒会室で繰り広げるようになったという作品なのです。


 なので、この作品。
 文字が多くて、登場人物も少なく(生徒会長の白銀くん、副会長の四宮さん、書記の藤原さんの3人が基本)、半分以上の話は「生徒会室」という狭い空間の中だけで行われていて―――なのに、面白いんです。ネタが尽きないんです。


 具体名は挙げませんが……こういう「シチュエーションを限定したコメディ漫画」って最初の頃はものすごく斬新で面白いのだけど、ずっと同じことをやろうとしてもネタギレするし、全然ちがうことをやろうとすると「好きだったのとちがう」とコレジャナイ感が出てしまいますし、新キャラを投入して新しい風を起こそうとすると最初に頃に持っていた面白さの密度がどんどん薄まってしまって。

 1巻はとてつもなく面白かったのに、2巻・3巻と続いていく内にどんどん面白くなくなっていくなーという作品も世の中には多いんですけど……



 『かぐや様は告らせたい』は「恋愛」という何からでもつなげられる普遍的な題材を描いているため、全然ネタが尽きずに巻数が進んでもパワーが落ちないのです。
 極端な話、人間が2人いれば「恋愛」話は描けるワケですからね。お昼にお弁当を食べるとか、Gが出てきたので退治するとか、携帯電話を買ったのでLINEのIDを聞きたいとか、そんな些細な日常の出来事からでも恋愛にはつなげられるので、「見栄の張り合い」「相手に見下されないように」「相手に自分を好きになってもらうように」「でも、自分の好意はバレないように」という攻防戦が始まるのです。

 また、『ババ抜き』『20の質問』『NGワードゲーム』みたいなアナログゲームで対戦する回もお気に入りです。シンプルなゲームだからこその読み合いの面白さがしっかり描かれているし、真剣に見栄を張る2人の本気が面白いのです。

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<画像は『かぐや様は告らせたい』2巻18話「生徒会は言わせたい」より引用>


◇ 「主人公がヒロインを好きすぎる」のも「ヒロインが主人公を好きすぎる」のも好きだ!
 この作品の正式タイトルは『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』と、頭の良い人達の心理戦がクローズアップされていますし、実際に心理戦の面白さもあるんですけど……この作品の本質は、「お互いに好き同士なのに2人とも素直になれないからなかなかくっつけない」というラブコメど真ん中なところにあると思うんですね。


 この2人――――「そっちがどうしても付き合いたいと告白して来たら付き合ってやってもイイかな!」みたいなスタンスだった割に、他の女や男には一切興味がなく、相手が他の女や男と仲良くなりそうだと(勘違いすると)全力で阻止しようとしていて、キミたちお互いがお互いを大好きだよね?と言いたくなります。

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<画像は『かぐや様は告らせたい』2巻12話「かぐや様は止められたい」より引用>

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<画像は『かぐや様は告らせたい』2巻17話「かぐや様は愛でたい」より引用>


 主人公がヒロインを好きすぎる作品、が好きです

 昔こんな記事を書いたことがあるのですが、「“誰か”を好きなことがハッキリしているキャラクターはそれだけで魅力的」なのかなぁと思うんですね。「食べ物を美味しそうに食べるキャラは善人に見える」みたいな話で、「誰かを好き」とか「熱中するものがある」とか「大切な人がいる」とかの情報を読者・視聴者に見せるということはそれだけで“裏表のないキャラ”と親近感を抱かせる―――上の記事にはそう書いてありました。


 『かぐや様は告らせたい』の2人は、超天才だったり超お嬢様だったりするし、喋っていることのほとんどがブラフだったり、相手を罠にハメようとしたり(自分に告白させようとする罠)するのですが―――「だって、相手のことが本当に大好きだもんな」ということが読者にも分かるからこそ、応援したくなっちゃうんですね。

 「白銀くんは四宮さんのことが大好き」「四宮さんは白銀くんのことが大好き」、その両方を知っているのは読者だけだからこそニヤニヤ出来る―――って考えれば、これも一種の「読者だけがすべてを知っている」からこその面白さなのかも。

(関連記事:「視聴者だけが全てを知っている」というシチュエーションに私は弱い



◇ 天才、ボンボン、お嬢様だらけなのに、どうしてこんなにキャラが愛おしいのか
 この作品の説明で、冒頭の私は“舞台は富豪名家に生まれた者達が集まる超エリート校:秀知院学園という高校で、主人公はその超エリート校の中でもトップ2の超天才の生徒会長と副会長という男女”と書きました。登場人物のほとんどが親が社長みたいな世界観ですし、主人公2人は超天才ですから、この説明だけだと鼻につきそうだなって思う人も多いかなって思います。私も読み始める前は、その辺が不安でした。


 でも、実際には主人公の一人:白銀御行(しろがねみゆき)くんだけは一般階層の生まれで、「ひたすら努力をする」ことで超エリート校のトップ1まで上り詰めた努力の人なのです。1日10時間の勉強と、バイトの日々と、それでいてお人よしだから困っている人を助けることに労を惜しまなくて、だから生徒会長なんかをやっている人なのです。
 
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<画像は『かぐや様は告らせたい』3巻30話「白銀御行は負けられない」より引用>

 しかし、本質的には普通の人なので、「泳げない」「虫が苦手」「運動音痴」だし、「詰め込んだ勉強以外は得意ではない」と思えるところもあるし―――実は無茶苦茶弱点が多くて、でもそれを人には見せないように人一倍の努力をしている主人公なのです!



 もう一人の主人公、というかヒロインというか。
 四宮かぐやさんは超巨大財閥グループの令嬢で、勉学・芸事・音楽・武芸すべてにおいて生まれながらの超天才と白銀くんとは対照的なのですが。「お嬢様キャラ」の鉄板で世間知らずなところもあって、「何でも知っているかぐや様だけど我々が知っている当然のことを知らなかったりする」その隙が彼女をこんなにも愛おしくしているのかなぁと思います。

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<画像は『かぐや様は告らせたい』1巻5話「かぐや様はいただきたい」より引用>



 白銀くんも四宮さんも、全校生徒が憧れて尊敬する「超天才」の側面と、その裏にある「普通の高校生」の側面とのギャップがしっかりあって―――この漫画のキャラは(数は多くないけど)、みんなそうしたギャップを持っているからこそ魅力的なのかなーと思うのです。

 書記の藤原さんはゆるふわ天然キャラで、実際に白銀くんと四宮さんの心理戦の間で「超天才が計算できない不確定要素」としてかき乱してくれるんだけど、実は生徒会の中では一番しっかりしている常識人とも言えるし。そもそも、四宮さんからはかなりひどい仕打ちを受けていると思うのに全く気付かずに仲良くしているのがすごいし。

 会計の石上くんもコミックス3巻にてようやく本格的に登場し始めて、「男キャラが増えても全然嬉しくねーな」と登場する前は思っていたのだけど登場4ページ目で「がんばって生きてくれー(涙)」と応援したくなっていたくらいです。
 他の作品に出ていてたら、クール系のイケメンライバルキャラみたいなポジションに収まりそうなルックスしているくせに!

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<画像は『かぐや様は告らせたい』3巻28話「かぐや様は入れたい」より引用>


 たまにしか登場しないけれど、四宮さんの護衛と召使と雑用を一人でこなす早坂さんも良いキャラ。このコの前だけでは四宮さんは素を見せるというのもあるけど、早坂さん自身も冷静沈着なようでいてただの仕事じゃなくて四宮さんのためになることをしようとしていて、キャラ紹介のページにも書かれているけどどっちかというと「姉妹ポジション」のキャラなんですよね。



 3巻までの時点ではメインキャラと呼べるのはこの5人で、この作品の主題である「白銀くんと四宮さんが互いに自分に告白させようとするラブコメ」からズレさせずに、色んなことを起こす良いバランスの5人になっているのです。
 連載が長期化していくとその内に新キャラ投入とかもしていくのかも知れないけど、キャラが増えると主題がブレてしまいそうで、やっぱり今のこのバランスが最高だと思います!


 「くっつきそうでくっつかないラブコメ」って、くっついたら終わりですから(※1)「如何にしてくっつけないか」という引き延ばしが必要なのだけど、離れすぎちゃうと告白一歩手前のドキドキ感は薄れてしまうので面白さを保つのが難しいと思うんですけど。
 「互いが互いを告白させようとする」この作品は、くっつきそうでくっつかないのに常に告白一歩手前が続くので、ラブコメの一番面白いところがずっと続いているような作品だと思います。

(※1:この2人が主人公ならくっついた後を描いても面白くなりそうですけどね)


 12月11日現在、「となりのヤングジャンプ」で5話まで試し読みできるみたいなので……興味のある方は是非!(スクロールした真ん中あたりにあります)
 キンドルだと現在全巻が20%ポイント還元対象ですし、今の内に買って年末年始のお供にでもどうぞ!キンドル版は紙の本から1か月遅れでの発売ですけどね!


【紙の本】
かぐや様は告らせたい 1 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス) かぐや様は告らせたい 2 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス) かぐや様は告らせたい 3 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス)
かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~(4): ヤングジャンプコミックスかぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~(4): ヤングジャンプコミックス
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【キンドル本】
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| この漫画が面白い! | 18:01 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

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『ダンジョン飯』1~3巻が面白い!/“ザコ戦”を楽しく描く逆転の発想

 こんな超有名作・超人気作をわざわざブログで紹介しなくても……と思われるかも知れませんが、どんな有名作であっても知らない人はいると思って書くのがウチのブログのスタンスなので堂々と紹介します!
 「ゲームは大好きだけどマンガはあまり知らない……」という人もウチのブログの読者さんには多そうですし、この作品はそういう人にこそまだまだ知ってもらえる余地があると思いますしね!


【三つのオススメポイント】
・このファンタジー世界は「リアル」でなくても「リアリティ」がある!
・ファンタジー作品の有名モンスター達との“ザコ戦”にスポットライトをあてた作品!
・RPGの定番“4人パーティ”、一人一人のキャラがしっかり魅力的に描かれる!


【キンドル本】
ダンジョン飯 1巻<ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ)) ダンジョン飯 2巻<ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ)) ダンジョン飯 3巻<ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ))

【紙の本】
ダンジョン飯 1巻 (ビームコミックス) ダンジョン飯 2巻 (ビームコミックス) ダンジョン飯 3巻 (ビームコミックス)


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、実験的にリスト化しました。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:◎(動物というか……モンスターを殺して食う作品なので)
・人体欠損などのグロ描写:△(人間の欠損はないけど血はドバドバ出ます)
・人が食われるグロ描写:○(グロくはないけど丸呑みにはされる)
・グロ表現としての虫:○(グロくはないけど虫のモンスターは出てくる)
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


◇ このファンタジー世界は「リアル」でなくても「リアリティ」がある!
 この漫画は、エンターブレインが年10回刊行している漫画誌『ハルタ』にて2014年から連載されているファンタジー漫画です。作者の九井諒子先生は短編集はいくつも発売されていますが、長期連載はこの『ダンジョン飯』が初めてとなります。
 そうして始まったこの作品、現役のマンガ編集者が選ぶ「コミックナタリー大賞」の2015年度の1位、宝島社の「このマンガがすごい!」でも2016年のオトコ編1位になる(参照サイト)など……数々の賞を受賞しているすごい作品なのです。

 九井諒子先生の短編集も(全部ではありませんが)読んだことがあるのですが、「ファンタジーな世界観の中で暮らす人々を“ちゃんとそこで生活しているように”描く作品」が多いという印象で―――なるほど、この作風をキャッチーかつ長期的にネタ供給ができる連載向けの作品にしていくと『ダンジョン飯』になるのかと思いました。



 主人公は、ライオス達・冒険者の一味です。
 ダンジョンの最深部でレッドドラゴンと戦うも、空腹によって敗北。ライオスの妹ファリンによる脱出魔法で一行は地上に戻ることが出来ましたが、ドラゴンに呑み込まれたファリンだけは戻りませんでした。ファリンが完全に消化される前にダンジョンの最深部まで戻りたいけれど、脱出魔法によって荷物は最深部に置いてきたので一文無しです。これでは食料を買い込むことが出来ない―――よし!じゃあ、ダンジョン内のモンスターを倒して料理して食いつなぎながら最深部に向かおう!というのがこの作品の基本設定です。

 「やまなしの下手くそな説明だとよく分かんねーや」という人は、ComicWalkerで第1話は無料で読めるのでそちらをどうぞ。


 ということで、この作品……ドラゴンとかゴブリンとかスライムとかが出てくるファンタジー世界だけれども、敵が出てきた!やっつける!というだけでなく、「食事」とか「睡眠」とか「トイレ」のような“生きるために必要なもの”をしっかり描いていて。作中ではダンジョン内で「歯を磨いている」とか「洗濯物を干している」なんてシーンも見られます。ファンタジー世界だけど、彼らはそこでしっかり生きていることを描いているんですね。


 んで、ここからが九井諒子先生の本領だと思うのですが……
 ファンタジー世界でも彼らが私達と同じような生活をしているかと言うとそうでもなく、「魔法が現実にある」「エルフやドワーフが生きている」「モンスターがうようよ歩いている」というファンタジー作品の“お約束”を独自の解釈で描き直すことによって、ファンタジー世界なのに「リアリティのある世界」のように見せることが出来ているんだと思うのです。

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<『ダンジョン飯』3巻15話「雑炊」より引用>

 例えば、このシーン。
 このダンジョン内では「死んでも蘇生魔法でよみがえることが出来る」ため、死んだ冒険者を蘇生魔法でよみがえらせて金銭をもらう「死体回収屋」が存在しているんですね。

 また、「蘇生魔法がある」という世界観なので、私達が「初めて交通違反で切符を切られた時は~~」と話すみたいな感覚で、「初めて死んだ時はこうだった」と思い出話として話をしたりするのです。なんか、この辺の死生観がすごく「リアリティ」があるなぁというか、「本当に蘇生魔法があったらこんなカンジなんだろうな」と思わせるのです。



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<『ダンジョン飯』2巻9話「オーク」より引用>

 例えば、このシーン。
 私達の感覚では「美しい」という形容詞の代表のようなエルフの美女を、オークは「見た見た?噂には聞いてたけどエルフってブサイクだなー」ってなカンジに見ているのです。そりゃオークはオークの女性を美しいと思うんだから、その対極にあるエルフはブサイクに見えますよね。ものすごく細かい描写かも知れませんが、こういうものが私は「リアリティ」だと思うし、世界観を深くしてくれると思うんですね。



◇ ファンタジー作品の有名モンスター達との“ザコ戦”にスポットライトをあてた作品!
 とは言え……ここまでの話は、ファンタジー世界を描いた作品の中では珍しくない描写かも知れません。『ダンジョン飯』が『ダンジョン飯』として不動の地位を築いているのは、やはり「モンスターを倒して食べる」という要素に特化したことだと思います。


 実際にこの漫画を読む前は「モンスターを倒して食べる…?グロをギャグにした一発ネタの漫画なのかな?すぐに飽きちゃうんじゃないの?」と思ったのですが、読んでみると「なるほどこれは逆転の発想だ!」と思いました。グロくはないし、ギャグだけではないし、一発ネタでも飽きやすくもありませんでした。むしろ「次はどんな話が来るんだろう」とワクワク出来る作品でした。


 というのも……この作品に出てくるモンスターは、スライムとかゴーレムとかミミックといったファンタジー作品によく登場する“お馴染みのモンスター”達です。『ドラゴンクエスト』とか『ファイナルファンタジー』のようなRPGを遊んできた人にとっては、現実の動物以上に「よく知った顔」に思えることでしょう。
 しかし、ライオス達は本来ならレッドドラゴンと戦えるくらいのレベルの冒険者です(空腹によって負けたけど)。スライムなんてAボタン連打でやっつけられちゃうのですが、この作品は「敵を倒す」のが目的ではありません、「敵を倒して料理して食べる」のが目的の作品です。どんなに彼らが強くても食事を疎かにすれば負けるというところから始まっているのですからね。

 だからこそこの作品は……レベルの低い“ザコ敵”相手であっても、Aボタン連打の消化試合にはならないんです。
 九井諒子先生独特の独自解釈された“お馴染みのモンスター”達が、実はこういう構造でこういう生態系を持っていると描かれ、それをどう調理したら食えるのかと考え、実際に調理して、食べる、美味い!!


 1ページ丸々引用するのはちょっと心苦しいのですが、少しでもこの作品の魅力が伝わればと思うので私が特に好きな回を引用させていただきます。

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<『ダンジョン飯』1巻5話「かき揚げ」より引用>

 ダンジョンの中に仕掛けられた数々の“罠”は、なるべくなら発動させずに通りすぎたいし、発動してもさっさと抜ければイイのだけど……この回は、火の“罠”には油が使われているはずだから、この油で「かき揚げ」を作ろう!というのです。
 本来ならササッと通りすぎられてしまうような要素に注目して、それを独自解釈して1話使って描く―――「モンスターを倒して食べる」というのは決して一発ネタではなくて、“お馴染みのモンスター”1匹1匹との戦いにちゃんと注目して1話使ってまるまる描くという、“ザコモンスターとの戦い”を丁寧に描くための逆転のアイディアだと思うのです。


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<『ダンジョン飯』1巻5話「かき揚げ」より引用>

 作られた料理はレシピも載っています!材料が入手困難!




 “ザコ戦”にスポットを当てたファンタジー作品と言えば『灰と幻想のグリムガル』も延々とゴブリンやコボルトと戦っていましたが、あちらにはボスっぽいキャラもいるし、どっちかというと「Aボタン連打で延々とレベル上げをしている」感覚だったのですが(だからこそ……という話は置いときます)。

 『ダンジョン飯』は「栄養バランスも大事」と色んなモンスターを倒して食べなくてはならないため、1話ごとに新しいモンスターが登場して、それを倒して食べるので……「次はどのモンスターが出てくるんだろう」とワクワクさせられるのです。
 一発ネタどころか、毎回毎回「このモンスターはこう解釈したか!」というのが面白いし、ダンジョンの地形や魔法を活かして戦うバトルは凝っていて「実はバトル漫画としても面白い」ですし、本当に力のある漫画だなーと思います。




◇ RPGの定番“4人パーティ”、一人一人のキャラがしっかり魅力的に描かれる!
 主人公パーティは4人です。
 『ドラゴンクエストIII』など、RPGの定番人数とも言えますね。


<ライオス>
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<『ダンジョン飯』1巻1話「水炊き」より引用>

 パーティのリーダーで剣と鎧を装備した戦士。種族は人間(トールマン)。
 温厚でマジメ、戦闘でも頼りになるパーティの大黒柱だが、実は重度の魔物ヲタクで「魔物が好きすぎて食べてみたくなった」とモンスター食を提案した張本人となる。


<マルシル>
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<『ダンジョン飯』1巻2話「タルト」より引用>

 魔法が得意なエルフ。
 かわいい。エルフのイメージ通りに美しく、髪の手入れなどオシャレも欠かさず、魔法の腕はかなりのもの。かわいい。だが、パーティの中でも一番の常識人なので、モンスター食には常に反抗するし、ライオスの魔物ヲタクっぷりにはドン引きしていることも多い。
 ある意味では「読者の視点」に一番近いキャラで、モンスター食を最も嫌がる彼女が「食べてみたら意外に美味しい」という反応をすることで読者もカタルシスを体感できる。かわいい。


<チルチャック>
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<『ダンジョン飯』1巻5話「かき揚げ」より引用>

 小柄だが感覚が鋭敏なハーフフットという種族で、鍵開けや罠発見が得意。
 童顔だけどパーティの中では精神年齢的には一番の大人で、マルシルほどじゃないけど常識人でモンスター食にも消極的だった。軽口を叩いたり、ツッコミを入れたり、パーティの中でもムードメーカーなところがある。


<センシ>
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<『ダンジョン飯』1巻3話「ローストバジリスク」より引用>

 10年以上モンスター食の研究を続けていたというドワーフ。
 ライオス達と出会うまではダンジョン内に一人で生活していたこともあって、戦闘力・生活力ともに高いのだが、ドワーフのくせに鍛冶や鉱石に疎いためにドワーフの中では浮いた存在だったそうな。料理については人一倍うるさいし、調理の腕は確かだが、それ以外の常識はあまりなく、マルシルやチルチャックからはよくツッコまれている。



 という4人がこの作品の主人公です。
 ハーフフットはよく分からなかったのですが、雑誌掲載時には「ハーフリング」と記述されていたこともあったそうで(単行本では修正されている)……詳しい経緯は説明を省きますが、『指輪物語』などに出てくる「ホビット」のような種族と考えて間違いはないと思います。

 ということで、人間、エルフ、ホビット、ドワーフの4人パーティで。
 職業(クラス、ジョブ)は、戦士、魔法使い、シーフ、戦士といったところか。

 戦力的にはちょっとマルシルの負担が大きい気もしますね……攻撃魔法・回復魔法・補助魔法と全部マルシルがやらなくちゃいけないので、マルシルのMPが尽きたら一気に総崩れしそうなパーティのような。


 ただ、漫画としてはこの4人のバランスがとてもよく出来ているんですね。
 常識人と非常識人、ツッコミとボケ、話を動かす役と振り回される役……4人のキャラが立っていて、キャラ同士が互いを活かしあっていて、それぞれがそれぞれを魅力的に見せていると思います。

 あと、人間=マジメだがヲタクっぽいところもある、エルフ=美人で賢くて魔法が得意、ホビット=小さくて器用、ドワーフ=職人気質と……割と私達が思うファンタジー作品での種族ごとのイメージに沿いつつ、少し外している辺りがキャラクターとして魅力なのかもとも思います。
 マルシルはエルフで美人だけど感情の起伏が激しくて見てて飽きないしかわいいし、ドワーフは職人だけど鍛冶ではなく料理に特化しているとか。イメージに沿いつつ、独特のキャラになっているというか。




 ということで、少なくとも「スライム」とか「ゴーレム」とか「ミミック」といった言葉に反応するような人には是非是非オススメな作品です。私にとっては、ファンタジー世界を描いたどんな作品よりも「そうだ!オレが子どもの頃に読みたかったファンタジー漫画はこういうものだったんだ!」と思わせてくれる作品でした。

 ずっと長く続いてくれて、このキャラ達の冒険を長く読みたい気もしますが……元ネタとなる“お馴染みのモンスター”にだって限度があるだろうし、階層が進むにつれて戦いも激しくなっているので、そんなに長く続く作品でもないのかなぁと思っています。ひょっとしたら4~5巻、続いても7~8巻くらいで完結ですかねぇ。今から完結したときのことを考えて寂しくなるほどです(笑)。

 あと、マルシルがかわいいということは繰り返し言っておきたいです。

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